結局友達にはなれなかったなあと彼は思った
「んー……ピクニックねえ」
「やっぱ、無理か?」
「無茶言ってる自覚があるだけ進歩したよね君は」
5月8日月曜日。
エルードに出勤?した御影は早速リューイにピクニック大作戦について提案した。
邪神の分体ゴンとサシで話をさせてくれと。
「まあ、確率の高そうなところ言わせてもらえば――君多分死ぬよ?」
「そこは折り込み済み」
おやとリューイは首を傾げた。
「君はリスクをおかさないタイプの人間だと思っていたけど?」
「いや、さすがにこの状況でそうも言ってられねえよ……」
「……いや、まあ、確かにね」
うーんとリューイは考え込む。
まあ、奴も分かっているのだろう。
今の御影は棺桶のふたに手をかけてるようなものだ。
どうしたって死に天秤が傾いている。
生き残る為には――リスクを犯すしかない。
「俺だって流石にやれることやんないで死ぬのはごめんなんだよ」
「とはいえ、こちらとしても君の要望の優先順位はかなり低いんだよねえ……。これが終わったら処分されるだろう勇者なんていっぱいいるし」
「……マジで?」
え、マジすか。
マジなんすか……。
勇者業界そんな殺伐としてんすか……。
うわあ……、勇者じゃなくて良かった……。
「……いーんじゃねえの?」
助け船は、意外なところからやってきた。
狼の獣人、ジャイニーブ。
彼は若干めんどくさそうに腕を組んでそう言うのだった。
「向こうがそれに乗っかってくるってことは位置が御影のそばで確定するってことだろ? よからぬことをしてくるようならそんときは流石に始末すればいい」
「……してこなかったら?」
「そりゃ逆にそこまで無害化が進んでるってことだ。それならもう無視して良い」
「なるほどね……」
リューイはふーむと考え込んでいるようだった。
御影はそれを黙って見つめる。
結局友達にはなれなかったなあと思いつつ――見つめる。
ジャイニーブさんの話はつまるるところ「ゴンを消す」という話だ。
勝手に消えるか、こっちで殺すかというだけ。
だったらもっと――感慨とかありそうなものに。
御影の心は凍り付いたように動かないのだった。
つまりはそれが「やれるだけのことはする」といっておきながらこの程度のことしかできない門上御影の限界だった。
「……俺も同意だな」
そして意外にもイヨルさんは乗り気であった。
「今のところデフォル人にしか分かってないだろうが……アレの迷彩はがれかかってるぞ。時折意識を集中させないでも認識出来るときがある」
「「「マジ!?」」」
「多分、存在が壊れかかってるな。放置したところで近々何か仕掛けてくる可能性は高いぞ」
いや、存在が壊れかかるってどういう状況だよ!? と御影は思ったがリューイやジャイニーブさんの真剣さ加減から考えるに対邪神業界では常識なんだろう。
アイデンティティ・クライシスみたいなものだろうか……?
「放置して崩壊させたところで周りに被害が出ないとは限らんし、一回監視しつつ刺激を与えてみるのはありだろう」
「……なるほどねー。確かにそう言う状況ならありっちゃありかあ……」
ぶっちゃけ、あれ生かしとく意味もう特にないんだよねえ……。
リューイはしみじみと呟く。
「あれ」とはゴンのことで流石にその物言いには思うところはあったけど。その程度には情は移っていたけれど。
でも、「生かしとく意味」がないのは自分も同じだと知っている御影は口をつぐむのだった。
その庇い合いには――きっと絶望しかない。
「うーん、じゃあまあ、やってみますか。ピクニック大作戦」
結局リューイがそう言って。
ピクニック大作戦、始まりである。




