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ダンジョンマスターは如何にしてダンジョンマスターになったか

ダンジョンマスター、というものがあるのは聞いていたが自分がなるとは思っていなかった。



昨晩はダンジョン作成系のゲームにハマり込み、マウスをカチカチしながら自分流に最適化したダンジョンで冒険者やら勇者やらを撃退していたのだ。

意識がそこら辺でぶっ飛んでいるので、眠気に負けて寝てしまったのだろう。

徹夜明けの霞がかった頭のせいで何もかもがあやふやな中で、固い石の玉座から立ち上がる。

変な寝かたをしたせいか、体の節々が痛い。


……


「つーか、ここ何処よ」


真っ暗で湿っぽくて天井から水滴とか落ちて来る。

ピンポイントで俺の首が水浸しである。

状況を整理せねば、俺の名前は……思い出せない。

ここは何処……俺の部屋の間取りってどんなんだっけ。

結論、記憶も無くしていますわ。



さて、腹が減ってきた。

あれから七転八倒して喚き散らしたが、誰も来ないし途中で恥ずかしくなったので周りを散策してみている。

俺が目覚めた場所は真ん中に石の玉座があり、壁はデコボコの鍾乳石、地面はフンワリした苔が一面に生えた正に洞窟って感じだ。

ただ、切り取られた様に真四角な間取りは人工的な何かを感じさせる。


「さて、どうしたものか」


出入り口が無い。

窓も無いので真っ暗闇だが、数メートル先までは何とか見える。光り一筋射さないので、夜目が効くとか関係無しに見えないはずなんだが……待てよ、考えて見れば壁や苔の『色』は何色か俺には見えていない。何となく、そんな『形』と認識してるだけって事は『光』ではない何かで見てるって事にならないか?

まあ、それはともかくお腹は減った。

苔って食えるかな?



意外と美味だな、苔。

薄味だが腹は満ちた。

さて、後は玉座を調べるか。この空間で一番違和感あるのがこれだしな。

飾り気の無い背もたれに肘置き、座り心地など知らんとばかりに固い着席部分。マンガとかで王様が座る玉座そのまんまな抜き出して来たような見た目である。

結論、ただの石だこれ。

さて、これからどうするか。この密室から出なければここが何処か、今何時かも判らない。

『穴堀りしてくれる』人でも居てくれればな。

と、俺が考えた瞬間


ボコン


と大きい音がして壁の一部が崩れた。

顔位の大きさに開いた穴の向こうから、騒がしく甲高い声が聞こえてくる。


「あわわ、変な所に繋がっちゃったよ!」


「ヤバイ、これダンジョンコアだよ。昔、じいちゃんがダンジョンマスターに滅茶苦茶怒られたって聞いた事がある」


「逃げた方がいいかな。でも悪い事したら謝らないと」


「わふ~」


人にしては響くというか、妙にワンワンした声だが。取り合えず話を聞けそうな相手だ。


「おい、そこの奴等」


「ひゃい!」


「わふぅ!」


すげぇ、ビビってるな。まあ、変に強気に来られても困るし調度いいか。


「怒らないから、少し話をしないか。美味しい苔もあるよ」



外に出ようとしたが、繋がった所は俺の背丈の半分しかない坑道だったので部屋に招き入れる。

すげぇオドオドしながらおっかなびっくり入って来たのは柴犬みたいな顔をした子供だった。

いや、頭丸々柴犬そのものだな。


「すまんな、わざわざ。苔食うか?」


「すいません、僕達のせいで起こしてしまいまして、ごめんなさい。後、苔は食べれません!」


最初と最後に謝罪されて苔は断固拒否された。こんなに美味しいのに要らないと言われた。


「うん、まあ食文化には埋めがたい溝があるからな。俺もドッグフードはよう食えん」


何か感動された。


「ダンジョンマスター様はお優しいんですね!」


「ふふふ、世界平和を目指しているからね」


悪のりしてみたらキラキラした瞳で見上げられた。

ふふふ、恥ずかしながら萌えてしまいましてね。だ、抱っこしてもいいかな。


抱擁という名のモフモフタイムが過ぎて、お互いに向かい直す。うん、こいつら獣臭いわ。普通の犬よりデカい分、臭いもキツイし毛もゴワゴワしてた。次は仔犬を所望しよう。


「なるほど、住む場所を追われて穴堀り生活か」


「はい、住んでいた坑道が奪われてしまいまして新しく坑道を作るしかなくて……」


犬頭の彼等はコボルトと呼ばれる魔物の端くれで、人間からは鉱石を盗むと嫌われ、魔物からは戦闘力の無さから一方的に搾取されているらしい。

折角作った坑道兼住まいも往々にして奪われ、仕方無く新たな坑道を掘る生涯を送るとか。

何という強制労働人生。涙無しには語れないのだわ。


「ふぅぐ、泣ける。もうお前らここに住めよ。俺が許す」


「有り難いお言葉ですが、ここは湿っぽくて住みにくいです」


さよか。まあ、俺も首筋にピンポイントで水滴が落ちて来る家には住みたくないな。そろそろうなじ辺りに水溜まりが出来てるし。


「ダンジョンマスター様はダンジョンをお作りにならないのですか?」


そこんとこ詳しく。ダンジョンマスターとかよく判らないんで。

コボルトのコボ君から聞いた事をまとめると、


一、ダンジョンマスターは偉い


一、ダンジョンマスターはダンジョン作る


一、ダンジョンマスターはダンジョンコアに他人が入ると怒る。半端なく怒る。


一、ダンジョンマスターは恐い


結論、よく判らん。

取り合えず、ダンジョンを作ればいいらしいが目的も判らずに拡張とかしても後で手詰まりになりそうだしなぁ。


「他のダンジョンとか見学出来ないかな」


「せ、戦争する気ですか?」


ダンジョンマスターが他のダンジョンに行くのは、戦争レベルにヤバイ話らしい。

コボ君も生まれてからこの方、穴堀りだけしてたみたいな人生らしいから知識が極端に偏っている。固い岩盤を堀抜くコツとか、崩落しない坑道の堀り方とか言われても凄いのか基礎的な話なのか判らない。


強い魔物は弱い魔物や人間から略奪して、人間の中に時々居る強い奴が強い魔物を倒す事もあるらしい。

コボ君のじいちゃんがそう言った知識に詳しかったらしいが、つい先日に魔物に襲われた際に逃げ遅れたとか。

悲しいが、よくある事らしい。

慣れていかないと、と無理やり笑顔になるコボ君を獣臭さも毛のゴワゴワも気にせず抱き締めてしまいました。

畜生、この臭いも感触も人生を精一杯生きている証じゃねぇか。体洗う暇もなく穴を掘って生活して、仲間守る為に柔らかいはずの毛まで固くして、男前過ぎるだろコボ君。

ダンジョンマスターとかよく判らんが、こいつらが安心して暮らせる場所を作る為に頑張るのは悪くない、全然悪くないぞ。


「よし、俺はダンジョンマスターになるぞ!

そんでお前らが安心して飯を食べて、風呂に入って、ゆっくり寝れる様にしてやる!」


驚きから、喜びに表情を変えていき最後に万歳をしながらコボルト達は遠吠えそのものの歓声を上げるのだった。




「あ、ちなみに我々は水浴びも嫌いなので風呂には入りません」


「却下だ、これは義務である」


「横暴だー!」


「独裁許すまじー!」


「吠えるがいい獣ども、洞窟の(ダンジョンマスター)は俺だ!」


全ては柔らかい毛並みのコボルトでモフモフするために!!

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