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追放された2メートル令嬢 ~魔法少年と新天地で最強領主目指します~  作者: 川合 佑樹


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第1話

「お前を追放する!」



 そう告げられてから半年後。

 プリメイシアはその自慢の長い赤髪を汗で張り付かせ、草だらけの領地を一人で耕していた。


 身長二メートルを超える体躯を折り曲げ、筋骨隆々の体で鍬を大地に深く叩き込むように振るう。

 元令嬢だとは到底思えないその姿は、どこか楽しげでもあった。


 時折、布の作業着の袖で額を拭った。

 ドレスは置いてきた。

 もう必要ないと思ったからだった。


 広大な大地。

 どこまでも続く緑の海。

 風が吹くたびに波打ち、土と草の匂いが鼻を突く。


 ここが新天地……というより流刑地?

 まずは人が住めるようにしようと思い立ったが、それもいつになることやら。

 ここには時間だけはある。


 天を見上げて考えてみた。

 この状況は果たして良いのか悪いのかと。

 そして至った答えは、


「結構、理不尽じゃねぇか?」


 鍬を支えにして遠くの山を見た。

「それにしても……どうやって生きていくかねぇ」



 時は少し戻る。

 天井が高く荘厳な王宮の大広間、大理石の床が足裏に冷気を伝える。


 国王陛下の不在により摂政代行を務める王子殿下は、玉座からプリメイシアを睨みつけた。

「こいつは暗殺を企てた! よって追放だ! 婚約も破棄する!」


 ……は?

 プリメイシアは一瞬、頭が真っ白になった。


 入学式の日に出会って以来、王子に遭遇したことはなかった。

 暗殺を企てる?

 追放とは?


 知っているのは名前と、いつの間にか婚約していたことくらいだった。

 俺が何か……したか?

 思考をめぐらせる。


 何も思い浮かばなかった。

 周囲の貴族たちが一斉にプリメイシアに注目した。


「王子殿下がそう仰るのなら……」

「しかし証拠もなく……」

「証拠など必要ない。今は王子殿下の御言葉が全てだ」


 ほどなくして勝手に裁判が開かれ、プリメイシアは大人しく、

 やってない。

 やってない。

 やってない。


 問いに対してただそれだけを繰り返した。

 何もやっていないし、覚えていないのだから仕方がなかった。

 だが結果は決まっていた。


 気がつけばプリメイシアは鍬を振るっていた。

 寝て起きて、飯を食い、働く。


 軍事貴族の家系である父の血をその体に一身に受け、野外での活動を難なくさせていたため苦ではなかった。

 父はここに娘を送る前に言った。


「ほとぼりが冷めるまで領地の端で一人、開拓でもしていろ。馬車と最低限の物資、定期の行商便だけは用意してやる。……お前がやってないことは信じている。こんなことしかできない私を恨んでくれていい」


 父の声は、悲しみと怒りに満ちていた。

 当のプリメイシアは何も気にしてはいなかった。


 幼い頃から続く厳しい訓練、

 やりたくもなかった婚約者の勉強、

 そして耳をふさぎたくなるような政治的な水面下での争い、


 その全てから解放されたことをむしろ前向きに受け止めていた。

 少しだけ領地運営の勉強はした。

 させられたのが正解ではある……。


 領民を守り、金を稼ぎ、それを納める。

 単純な話だ。

 それに、やる気は自然と出てきた。


 このただただ広がる草原と山の向こう当たりまでの領地を全て自分の目で見てみたいと思った。

 前は令嬢、軍人の娘だった自分。

 今はドレスを脱ぎ捨て、布の作業服と鉄板が入ったブーツ、その上から着るための皮の装備しか持っていないただの女性。


 一応金属の鎧と武器の類も馬車にあるが、それは……今は置いておこう。

「まずは、冒険だ」


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