↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
24/24

将来に悩む女子高生を救え 6

 公用車は、警察署へ向かって走っていた。

 俺は助手席に座り、窓の外を眺めていた。

 ふと、隣でハンドルを握る金田さんの胸元に目が留まる。


「……」


 シャツの隙間から、ほんのわずかに何かが見えた。

 金田さんが俺の視線に気づく。


「なに?なにかついてる?」


「いえ」


 俺は少し考えてから尋ねた。


「それ、入れ墨ですよね?」


 金田さんは一瞬黙った。


「うん、そうだけど」


 そして、前を向いたまま答える。


「これは前にヤクザの組に潜入捜査したときのものだよ」


「…そうだったんですか」


 俺はもう一度、金田さんを見る。


「なんで消さないんですか?」


 金田さんの表情が少しだけ曇った。


「……理由は色々あるから言えない」


「消す時、痛いからですか?」


「それもある」


 短い返事だった。

 俺はそれ以上聞かなかった。

 車内には再び静かな時間が戻る。


 公用車は、夕方の街を走り続けていた。

 しばらく沈黙が続いたあと、金田さんがぽつりと口を開く。


「斎藤くんってさ~」


「はい」


「何も考えてないようで、色々考えてるよね」


 俺は金田さんの横顔を見る。

 少し考えてから答えた。


「金田さんって……」


「ん?」


「色々考えてないようで、実は何も考えてないですよね」


「……」


 数秒の沈黙。

 そして、金田さんが吹き出した。


「ははは!相変わらずひどいなぁ、君!」


 俺も小さく笑う。


「今のは冗談です」


「分かってるよ」


 金田さんは笑いながら前を向く。

 俺は窓の外へ視線を移した。


「あなたは部下のことをちゃんと考えています」


「……」


「さっき、僕が車の中で寝ていたときも、起こさなかった」


 金田さんが少しだけこちらを見る。


「僕のことを思って、寝かせてくれていたんですよね」


「まあ……それくらいはね」


「あなたの、そういうところ」


 俺は金田さんを見る。


「すごく好きです」


「ありがとう…」


 金田さんが目を細め笑った。


 しばらく窓の外を眺めていた俺だったが、次第にまぶたが重くなってくる。


「……眠い」


「寝てていいよ」


 金田さんが前を向いたまま言う。


「着いたら起こすから」


「……ありがとうございます」


 俺はシートに身体を預け、目を閉じた。

 しばらくして、俺は小さくつぶやく。


「着いても、起こさないでください」


「それは無理だよ」


「今日はもう仕事したくないんですよ、俺」


「俺?」


 その一言で、車内が静かになった。


 俺は目を閉じたまま口をつぐむ。


 しまった。


 今の言葉は、普段の俺なら使わない。


 ゆっくりと目をあけると、

 金田さんがちらりとこちらを見ていた。


「……」


 そして、ふっと笑った。


「俺でも、別にかまわないよ」


「……」


 数秒、沈黙。


「言い間違えました」


 俺は窓の方へ顔を向ける。


「忘れてください……」


 金田さんは小さく笑った。


「はいはい」


 俺は再び目を閉じる。

 寝言でなにかマズいことを言っていないか、今になって不安になってきた。

 しかし、過ぎてしまったことはもうどうしようもない。

 そう俺は思うのだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。