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1話 〚データ確認 完了しました〛

 吹雪く山裾の町に、夜中、チャイムがなった。



 家主は驚いたが、インターホンの画面には誰も居ない。訝しがり、ドアを開けると見知らぬ男がいた。死角にいたのだろうか。


 肩に雪が積もっているので、なにかしらあってフラフラとやってきたのだろう。虚ろな目をした男は口を開いた。



「腹が減って凍え死にそうだ。家に上げてくれないか」



 幽霊か、妖怪?

 あまりにも現実離れしたシチュエーションに家主は驚いた。


「どうぞ、と、とりあえず、暖を取ったら警察に」

「好きにしてくれ」


 フラリと勝手に上がられ、困惑するが――不思議と拒絶できなかった。いや、させぬ雰囲気があって、仕方なく跡をついていった。


 リビングは先程までの食卓のまま、家主はどうぞテーブルへ誘導し、台所で温かい飲み物を作る。


 先程まで牛乳を注いでいた形跡と、それ拍子でこぼしてしまって吹こうかと迷っていたのだった。しかし家主はそれよりも正体不明の男へ温かい飲み物を振る舞わなければならないと、ココアを作る。


「どうぞ」

「ああ、すまないね。見ず知らずの俺を真夜中にあげてもらえるなんて、奇跡みたいだ。家族も怖がるだろうに」

「いえいえ、越してきたのは最近ですし、ウチ以外に訪ねてきた人や宅急便さえ家にあげる者はいないみたいで。排他的な土地ですよ」


「へえ、大変だな。近所付き合いも大変だろうに」

 虚ろな双眸にわずかに感情がよぎった。それを見て、彼はどうやら人間だと安心する。


「はい。もう……ほぼ村八分みたいで、挨拶も交わしても無視されていて、本当」

「引っ越さないのか?」

「いやぁ、なかなかそれが。難しいんですよ。郷に入れば郷に従えというでしょう」

「ふーん、変な」



「あの、ココア、飲まないんですか」

 湯気を立てているココアを、彼は見下ろした。



「ああ、なぜ?」

「せっかく出してもらったのに、貴方は飲まないんですか?」


「それがあんたら(・・・・)の郷に入れば郷に従え、なの?」

「は?」


 ココアをいきなり、彼は手に取ると家主にぶっかけた。表情筋を一つも動かさずに。


「な、何するんですか?! 口に毒が――」

 言いかけてハッと押し黙った、少量ならば致死率には至らない毒だ。だが今ので。



「隣の部屋で死んでる家族は村八分にされていたって訳か。それで引っ越すから焦って殺した。殺し手があんただった、それだけ、か?」

「なんで」



 警察か?

 男は席を立とうとする。家主(・・)は越してきたのは一家を殺めた凶器でこのならず者も消してしまおう、と。


 立ち上がる素振りをしたが、男は振り替えった。半開きになった血なまぐさい風をよこしてくる部屋を見て。


「なるほど」

「さっきから理由のわからない……! え??」

 男の背中になにかしらの人影が見えた。少女? のような……。


「は、あんた、なにもんだ」


「俺は何者でもなくなって、引きずり回されてるんだよ」

 塗りつぶされた残像のようだった少女と目があった――気がして。





「あーあ、堪え性がなさすぎ。0点」

 少女は言う。それを男はため息を付いて、冷蔵庫に残っていたジュースをがぶ飲みしだした。


「食い意地もはりすぎ!」

「お前が言うな、人喰い化け物」

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