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『十二の式神使い』 〜殺された御三家陰陽師の俺は、過去へと戻り、破滅未来を回避するために、現代最凶の式神使いになる〜  作者: 星衛門
第四章 東京幼年霊法競技大会

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077円柱結界




 「ぼっちゃま、一位でしたね!凄いです」

 「おにぃ、一位!」


 九十九神楽家族組がいる観客席に戻ると、早速婆やと茉昼が笑顔で迎えてくれる。


 「やるじゃないか!」


 パチパチ。


 澪姉は元気よく背中を叩き、利久は、静かに拍手をしてくれた。


 「「………」」


 鈴姉はお行儀よく観客席に座り、籠目義母さんのそばにいる縁姉は読書に夢中。

 どっちも、俺の事なんて関心なさそうである。


 「「………」」


 一方で、無言で俺に視線を送る2人。


 少し目を細めて俺を見る幸子義母さん。

 俺と、俺の母に対抗意識を持つ幸子義母さんは、俺が活躍するのは、あまり嬉しくないのだろう。


 そして、眼鏡越しに俺を観察するように見る籠目義母さん。

 まるで、研究者。


 いや、まるでもなにも、"籠目義母さんは研究者"か。


 籠目義母さんの考えてることは、よく分からない。

 この人は、一回目の人生でも、殆ど俺も関わらなかったから。




 「宵明ちゃん、おめでとう!」

 「早速一位ですね!」

 「ほっほっほ、練習の成果がでとるのぅ」

 『凄いわ』

 『しっかり見てたポン!』


 今度は、鈴木事務所組の観客席に行ってみると、千景さん、理人さん、関助さん、ヨルルさん、歌子さんが祝福してくれる。


 皆んなが喜ぶ中、潤一平先生は腕を組んで、口をへの字にする。


 「ま、俺の教え子なら、当然か」

 「これ、潤坊!しっかり褒めんか!」

 「いて?!」


 関助さんが、潤一平先生に軽く拳骨をする。


 「全く、潤ちゃんは…本当は宵明が一位になれて嬉しいはずなのに」

 「変なところで意地を貼りますね」


 千景さんと理人さんが苦笑いしながら、潤一平先生を見ていた。


 「ぐぅ…」


 ところで、大会が始まる前から観客席で眠っていた典子先生だが、まだ寝てる。


 『コラ、典子!起きなさい!』

 『そうポン!自分の教え子がいるのに、寝てるとは、先生失格!』

 「ふぎゃ?!何だ?」


 ヨルルさんが銀色の尻尾で、歌子さんがフワフワの尻尾で、典子先生の頭を叩く。

 慌てて起きる典子先生。


 口から涎を垂らしながら、寝ぼけ眼で辺りを見渡し、もう大会が始まっている状況を理解する。


 「んあ、もう始まってんのか。まぁ、宵明が優勝掻っ攫うだろ」

 「いいえ、そう言うわけにも行かなそうです」


 典子先生の言葉を否定した理人さんは、手元の紙を見る。

 それは、この大会の参加者名簿。


 「さっきの宵明君と同じA組には、賀茂家の子がいました。ほら、さっきの競技では、宵明君に次いで二位だった」

 「賀茂家…御三家。そりゃあ、大物じゃの」


 関助さんは、しんみりとした表情をする。


 「ええ…しかし、賀茂家だけではありません。予想はしていましたが、他のにも、著名な陰陽師の名家が参加しています。例えば、B組では、鷹司(たかつかさ)家や西園寺(さいおんじ)家、天城(あましろ)家。C組では、土御門(つちみかど)家に、月代(つきしろ)家。D組なら、九条(くじょう)家。そして…九十九神楽家」

 「ひゃあ、賀茂家に九十九神楽家。御三家じゃん!そんな凄い家の子と、宵明ちゃんは競うんだ。大変だね…」

 「っ?!」


 九十九神楽と聞いて、つい俺は反応してしまう。

 D組の九十九神楽家とは、匠兄のことだ。


 鈴木事務所のみんなは、俺が同じ九十九神楽だと、梅雨知らず。

 俺のことは、ただの一般家庭の子だと思っている。









 それから、B、C、D組の霊導玉による霊力操作の競技が終わり、次の競技に入る。


 ちなみに、D組で、一位を取ったのは、匠兄。

 やっぱり匠兄は手強い。


 さぁ、霊力操作の次は、結界術だ。

 会場に運ばれてきたのは、一枚の霊符と、小さいプラス機なような機械。


 これで何をするのかと言うと、今から用意された霊符を使って、プレス機の中に、結界を構築するのだ。

 そして、構築した結界を、プレス機が荷重をかけて、強度を計測する。


 そうして主に、結界を展開する速度、精度、結界自体の強度などを測定し、最も優れた者が一位となるのだ。


 プレス機自体は一つしかないので、1人ずつ結界構築を行う。

 俺はA組4番。つまり、4番目だ。


 「始め!」


 職員の掛け声で、A組1番の男子が、霊符で結界を構築し始める。


 「我らを囲む霊の力よ、そして天地に満ちる清き流れよ。我が声に応じ、我が意に従い、ここに集いて形を成せ。四方を巡り、境を定め、内と外とを隔てよ。

その境を堅く閉ざし、何者をも無断で越えさせるな。

内なる者を守り、外なる災いを退ける、堅牢なる守護の壁となれ【結界】」


 【簡易結界】の省略された詠唱とは全く違う、フル詠唱。

 普通なら、覚えて噛まずに言うのも、幼い子には大変だろう。


 詠唱によって、プレス機の下に生成される結界。


 生成された結界の形状は、立方体。

 バランスの良い綺麗な形状の結界である。


 流石、あの子も陰陽師の名家なのだろう。

 構築速度も、精度も高い。


 でも、勿体無いのが、やはり立方体という形状。


 上から広く平らな壁がプレスするために降りてくる。

 プレス機が構築された結界を押し潰そうとする。


 最初はまだ耐えられた。

 でも、時間が経つごとに、プレス機の荷重は増していき、次第には。


 パリン…。


 「ああ?!僕の結界!」


 結界を構築した男の子が、声を上げる。

 結界は見事に破られる。


 そこから、複数人の職員による結界術の点数が採点される。


 「点数は…32点!」


 その後、結界構築に掛かった時間、精度、強度に応じて、総合的な点数が言い渡される。

 この競技での、結界構築は一回だけの一発勝負。




 それから、A組2番、A組4番の子が結界を構築する。

 それぞれ、28点と30点。


 そして、次は俺の番。


 俺は霊符を握りしめる。

 職員の人の合図を聞いて、俺は即座に詠唱を開始する。


 「我らを囲む霊の力よ、そして天地に満ちる清き流れよ。我が声に応じ、我が意に従い、ここに集いて形を成せ。四方を巡り、境を定め、内と外とを隔てよ。

その境を堅く閉ざし、何者をも無断で越えさせるな。

内なる者を守り、外なる災いを退ける、堅牢なる守護の壁となれ【結界】」


 前の3人のこと同じ、フル詠唱だ。

 構築速度や精度は、悪くないはずだ。


 俺には、一回目の人生の知識と経験がある。


 さらに、典子先生と同じ三級陰陽師であり、結界使いである関助さんから、稽古の休憩時、結界術をちょくちょく教わっていた。


 俺はプレス機の下に、結界を構築する。


 その形状は、円柱である。

 上と下の面の円部分を広くして、側面の部分の高さを出来るだけ、短くした。


 円柱結界だ。


 過去の大会の映像で、プレス機で結界の強度を測るのは、事前に周知済み。

 ならば、そのプレス機に中々潰されない結界を作るのが、効果的。


 それが、円柱。


 ガリ…。

 プレス機が俺の円柱結界を押し潰そうとするが、そう簡単に潰れない。


 「耐えろ…」


 思わず呟く。


 最初の子が、立方体の結界を作ったが、あれは負荷が角に集中してしまう分、最も上からの荷重に耐えられない形状だ。


 そこで円柱は、上から加わる力を円形の断面全体で受け止め、周囲へ均等に分散させる。

 だから、力が一か所に集中しにくく、押し潰されにくい。

 さらに、柱を太く低くすれば、横へ曲がったり折れたりもしにくくなる。


 これぞ、物理学。


 パリン!

 荷重を徐々に増すプレス機には、耐えられなかった。


 でも、かなり耐えたぞ。


 「点数は……おお!58点!」


 職員が、つい驚きの声を出す。

 俺で、まだ4人目だが、職人の反応から、相当高い点数なのだろう。


 「よし!」


 俺も、ついガッツポーズをしてしまう。


 ジ…。

 でも、その時、周囲から数人の視線を感じる。


 それは、俺と同じ参加者の子供たち。

 数人が俺を睨んでいた。

 敵意を込めて。




 俺が終わり、A組5番、6番、7番、8番、9番…10番の賀茂若葉の番へ回ってくる。


 緑色のおさげの女の子が、前に出る。


 「始め!」


 職員の掛け声で、賀茂若葉が、霊符で結界を構築し始める。


 「天地に満ちる霊よ、内なる者を守り、外なる災いを退ける壁となれ【結界】」


 短い詠唱で、真球の結界を構築する賀茂若葉。


 「な?!詠唱省略!」


 俺は目を見張る。


 それは、本来なら長い詠唱をしなければいけないものを、短く省略する技術。

 単純だが、高等テクニック。


 俺よりも、ずっと結界術が秀でている。


 前に、典子先生が式札に霊体を降ろす際に、やっていた式神術の詠唱省略。

 あれの結界術バージョンだ。


 俺と同年代で高度な結界術。

 やはり、賀茂家か。

 賀茂家は、結界術を司る陰陽師家。


 きっと、俺が剣術や式神術の稽古に費やしてきた時間を、賀茂若葉は結界術の鍛錬に全て降ってきたのだろう。


 賀茂若葉の真球の結界は、俺の円柱結界のように、かなりプレス機の荷重に耐えたのち、割れる。


 結界の構築速度は、詠唱省略した分、間違いなくA組で1番早い。

 精度も高かった。


 果たして、賀茂若葉の総合点数は?


 「点数は…なんと!61点!」


 俺を超えている。

 結果的に、それがA組での結界術最高得点だった。


 そして、後のD組の最高得点は、匠兄の55点である。




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