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God Buddy  作者: 燎 空綺羅
第六話 黎明の騎士
35/70

6-〈5〉

 翌日、放課後だ。

「よぉーし!!ダイヤモンド・クルセイダースは夜の聖戦に向けて、解散だァ!!」

「俺はキングとゲーセン寄るけどな。カマンガー兄貴も行かないか?」

「うーん。俺がシューティングしたら、違反にならないか?コリン。」

「ははっ。無双無双!行こうぜカマンガー兄貴!」

 キングは頭をかきながらコリンに告げた。

「コリンよ。お前はいつも俺ん家で飯食うし、お袋も喜ぶがな……きちんと家族が帰る日は、自宅で食えよ?」

「へへ。俺は今は寂しくないよ、皆と飯食えるからさ。でも、自宅に家族がもしいたら、気をつけるな。」

 ハリソンが和気あいあいと立ち去る。

「俺は特注してた秘密兵器を取りに行くからよ!じゃーな皆!テイラーも、あばよ!!」

 オーエンが微笑みながら手を振った。

「じゃあ、夜にね、ハリソン。」

 キングがオーエンの肩を掴む。

「どうしたの、キング?」

 キングはドナ=ジョーの現状を話すべきか迷う。

 だが、アジ・ダハーカによってオーエンとイライジャは殺しあったはずだ。

 アジ・ダハーカには、私怨だってあるかもしれないのだ。

 キングは、黙ってドナ=ジョーの責任を負う覚悟を決めた。

「……いや。何でもねぇ!」

「キング。僕、ゲーセン行かないよ。申し訳ないけど、勉強がしたいからさ。」

「そうじゃねぇよ!!馬鹿野郎……さっさと帰って勉強しやがれ。」

「うん、ありがとう。じゃあ、夜にまた。」

 オーエンは学校が終わると、帰宅しようと歩いて行く。すると、門の前で、ドナ=ジョーの兄貴のセオドア・オリンズが、愛車に乗って待っていた。スキンヘッドで大柄で、黒いタンクトップだったから、すぐにわかった。セオドアの愛車は名車であり、シボレーエルカミーノ。荷台がついたレトロなロマンカーで、カラーはトワイライトイエロー。欠点は燃費の悪さ、つまりガソリン代だが、トップスピードは改造済。2ドアの二人乗りだ。

「……セオドアさん?」

「ドナの葬式の食事会ぶりだな?乗れよ、オーエン。俺の家族が全員、殺された。ちょっとドライブしながら、話そうぜ。」

「!!ドナ=ジョーの、家族が……!?聞かせてください!」

 オーエンはセオドアの愛車に乗り、セオドアはいきなり忠告。

「ストップ!靴を脱いでこの箱へ。車内は土禁だ。」

 オーエンは靴を脱いで箱に入れた。

 裸足だとわかる、フワフワのラグだ。シートも改造済で座る負担が無い。ずっと乗っていたいくらい、居心地がいい。

 セオドアは、車を流しながら告げた。

「正直、妹達の逆ハーしてる下僕野郎共は呼びたくねぇし、親の知人にも興味無かったんでね。葬儀は明日、俺だけで済ます。」

「僕も行きます。お世話になったから。」

「そうか?なら来い。夕方四時くらいにドナの時と同じ聖ジョージ教会墓地だ。」

「はい。お手伝いもします。」

 セオドアとオーエンは、しばし沈黙した。

 沈黙を破ったのは、セオドアだ。

「家族は昨日、俺が不在の時殺られたらしい。お袋は泣きながら死んだようだが、抵抗した形跡はないんだとよ。遺体に食らいついた形跡もある、変人野郎さ。だが、警官の野郎は妙な事言いやがる。凶器の指紋はドナ。唾液のDNA鑑定も、ドナ。死んだ妹だ。俺は走り屋だし、仲間と愛車を流してて、現場にいなかった。墓荒らしにあったドナが、ゾンビにでもなったのか……どうなんだ?マーズマン。何か知ってんだろ?」

「!!……僕がマーズマンだと、いつ?」

「面識があった、性格と声で粗方わかる。ドナが殺された現場にもいたしな。なぁ、オーエンよ。何が起きている?俺は妹を人喰い悪魔に使われたかねぇんだ。妹を助ける。それが兄貴の役目なもんでね。」

 オーエンは悩んだ。

 話せば、セオドアさんはイライジャをどう思うのか。少なくとも、この人は肝の座った人だ。アジ・ダハーカに挑むのではないか。

 セオドアさんは、ドナ=ジョーの最後の家族だ。

 守らなくては。

 ドナ=ジョーの大切なお兄さんを、守ることは、最優先事項だ。

「……巻き込みたくないんです。貴方はドナ=ジョーの大事な、最後の肉親だ。生き残って欲しい。僕は、貴方を守らなければ……ドナ=ジョーに顔向けが、出来ませんから。」

 セオドアは、タバコを1本出し、窓を開けると、タバコに火をつけ、煙を吸って吐いた。

 そして、返した。

「……そいつは気が合うな。俺も同じ意見だぜ。俺はドナの兄貴だ、ドナの大事なオーエン、お前を守らねぇと、あの世でドナに叱られちまうからな。こいつは譲れねぇ案件だ。悪いが、仲間と粗方探ったぜ。悪魔に操られた市民が殺人を犯し、それを防いで回るパトロールをしているのが、Mr.ダイヤモンド率いるダイヤモンド・クルセイダース、カリオストロを名乗るオカルト野郎の秘密結社団体、オカルト業界騒然の魔術師ミカエル・サンダースと、ツナとかポテトとか言う名前の、強い六人組。そして、マーズマン、お前だ。犯人と被害者を両方とも、助けて回って夜が更ける。そして、繁華街の闘争事件が、敵の悪魔……悪神群と呼ぶらしいな。そいつらの仕業であの事件が起きて、悪神群は、人間の肉体に宿ることで、より強くなる……操ってきた奴らの殺人が悪の投票になってた、とやらで、パワーアップしてたんだろ?なぁ、オーエンよ、信じてくれ。俺は専門は車だし、喧嘩もやるが、身の程はわきまえてるつもりだ。悪神群に飛びかかるなんて、無茶はやらねぇよ。だが、知る資格はあるつもりだ。事件とドナは、無関係じゃねぇはずだぜ。」

 オーエンは辛く感じた。

 自分達の戦場から、一番遠ざけなければならない人が、自分から関わって知ってしまっている。

「手を引いては……くれませんか……」

「話せオーエン。俺は死にはしねぇよ。いま、ドナの遺体を使ってやがる奴は、誰だ?」

「……アジ・ダハーカ。悪神群最強の、悪神アンリ・マユの実子だ。でも、現代に生まれ変わった悪神アンリ・マユは、僕の親友で……悪の側だけど味方だ。ドナ=ジョーは、アジ・ダハーカに侵食されて、僕を殺す為に利用された。彼女は、最後に自我の力でアジ・ダハーカを止めて……僕の親友がドナを殺した。僕は、彼を憎み……全て、アジ・ダハーカの狙い通り……復讐心に駆られた僕は、親友と殺し合った。」

 セオドアは、ドナを想い、目を閉じて十字を切った。

「……ドナの死因はわかった。ドナは、最期は勇敢に……愛する人を守ったんだな。だが、待て。なら、オーエン。お前は何者なんだ?悪神群のアジ・ダハーカが、悪神アンリ・マユとお前を殺し合わせて、何の利益になる?」

 オーエンは俯いて、自信無さげに告げた。

「僕は善神アフラ=マズダだ。復讐に走ったり、善悪の判別がつかない、未熟で成長期の状態だけど……善神と悪神が決着をつけることは、運命(さだめ)だ。僕が勝てば天国が到来し、善の人々は甦るらしい。僕の親友が勝てば地獄が到来し、悪神群と罪人の理想郷になるって感じに、教わった。」

 セオドアは理解した。

「なら、アジ・ダハーカは賢い悪魔だ。自分の命を捧げて、親友同士を殺し合いに導いた。……だが、結果、天国も地獄も来ていない。てことはだ。お前と親友は、憎しみを乗り越えたのか。」

「……はい。だけど、アジ・ダハーカは復活した。悪神群の悪の投票で、パワーを取り戻したんだ。あいつは、ドナ=ジョーの遺体を手放していないはずだ。」

「……理解したぜ。オーエン。そら、降りな。お前んち、ここだろ?」

 気づけばオーエンの自宅前だ。

 オーエンは靴を履いて車を降りて、窓に顔を近づけた。

「ありがとうございました。では、明日午後四時に、聖ジョージ教会墓地で。」

「オーエン。ドライブの報酬がまだだぜ?」

 オーエンはギクリとした。

「えっ、有料?」

「光の……半物質、だったか?ひとつ寄越しな。」

「……わかりました。セオドアさんだって狙われる可能性がある。天使ラジエル!セオドアさんを守ってくれ!」

 天使ラジエルはすかさずセオドアさん周りをクルクルと回り、肩の辺りで浮遊した。

「天使、ラジエル……?まさか!カトリックの天使なのか?光の半物質が?」

「はい。確か、情報共有思念体AI群です。ピンチになったら他の天使達に救援要請してくれるし、長時間の止血も出来る。天使ラジエルは1ランク上で、責任感が強い天使です。暗示を解いてくれますから、セオドアさんの身の安全の為に、預けます。」

「宗教観がカルチャーショックだが、まぁ、よろしくなラジエル様よ。じゃあオーエン、明日な。」

Copyright(C)2026 燎 空綺羅

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