表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
God Buddy  作者: 燎 空綺羅
第六話 黎明の騎士
33/70

6-〈3〉

 アシャは八時にはアパートを出た。

 銀色の鎧を着て、ベルトで剣を背中に背負い、鞘に納めている。

 アシャにはアムシャ・スプンタの最も神聖な天使として、悪の心を持つ人間の位置がわかる。正義感の強いザシャを見つけた時のように。


「死ねぇーーーッ!!」

「きゃあああ!!!」

 アシャは駆けつけた現場で聖なる火の火柱を立てた。

 その火柱は、オーエンの聖なる火など小さく見える、圧倒的な力だ。

「断罪ッ!!」

 暗示にかかった人は倒れて、辺りを見渡した。

「あれ……確か、夢に悪魔が……うわっ!?俺、ナイフ持ってる!?」

 彼は正気に戻り、慌ててナイフを捨てた。

「ま、周りの人、大丈夫ですか?」

 アシャは彼に優しく微笑んだ。

「大丈夫だ。未然に防いだから。さぁ、貴方は逃げなさい。悪魔に操られただけなのだから。」

「ありがとう……騎士の人!!」

 彼は頭を深く下げてから、逃げて行った。

 被害者もアシャに駆け寄った。

「助けてくれてありがとう。恩人だわ、貴方……」

「いいんだ。俺は自身の正義を行使しただけに過ぎないから。とにかく君は怪我をした。ここから逃げたら、緊急外来へ行くんだ。いいね?」

「……わかったわ。まるで貴方はジャスティス・ナイトね。さようなら、ナイト様。皆を守ってね!」

 アシャは少しはにかみ、ため息をついた。

「ジャスティス・ナイトか……本当に、名に負けず、そうあらねばな。」

 一人、二人、と助けるうちに、アシャは追われる少女を見かけて、跳躍して駆けつけた。

「おい!そこの狼藉者!!何をしている!?」

 アシャが対峙した巨漢こそ、逆三角形のマッチョマン、Mr.ダイヤモンドこと、キングだ。

 白い全身タイツの胸に銀のダイヤのマーク、タイツの上から自らの自主規制である銀のビキニパンツ、ダサい前結びの白いマント、脚には銀色のブーツを装備している。勿論センスが皆無なのはオーエンがデザイン・開発した特殊素材装備だからであり、オーエンの設計図を元にマイヤーズ財閥の科学者達が造り出した装備である。ひたすら頑丈だ。ただ、キングはタイツやデザインに抵抗があり、上からビキニパンツを履いたが。

「貴様、何だ、その姿は?変質者か……?」

 アシャの困惑に、キングは困り眉になった。

「アンタも、そう思うか?俺も困ってんだ。」

 アシャは敵が例え変質者でも怯まない。勇敢に、少女とキングの狭間に立ちはだかる。

「立ち退け!少女には手出しを許さない!!」

「どきな、鎧の兄ちゃん……!」

 少女はアシャを頼った。

「助けて!誰もわたしを、信じてくれない……殺されるわ、わたし……!」

 苦悩し、泣きながら逃げていたのは、ドナ=ジョーだ。

 衣服を血塗れにし、それでも自分の状況がわからず、泣いている。

 キングは何度も何度も、自身の頬を叩いた。

「クソッ……ドナ=ジョーは死んだ。死んだんだ。ボヤボヤしてんじゃあねぇ、俺よ!!」

 アシャが少女を見て確信し、尚更庇い出た。

「!彼女は、善神様の……!!……なるほど。彼女が悪神群により復活し、追われたのか……疑われるのは無理もないな。だが、彼女に人間の魂がある限り!俺が、この子を守るぞ!!」

 キングの中からアールマティが告げた。

「危険です、アシャ・ワヒシュタよ!彼女はドナ=ジョーでは無く、アジ・ダハーカそのものなのですよ!!わたくしを疑うならば、貴方の聖なる火で彼女を焼いてご覧なさい!!本当にドナ=ジョーであれば、ドナ=ジョーの魂は焼ける事無く、アジ・ダハーカだけが塵になるでしょう!」

「……君は、スプンタ・アールマティか?」

 ドナ=ジョーが涙し、恐怖を堪えながら、告げた。

「わたしは、確かに悪魔と同化してるわ。もう、支配が行き届いて、人間では無いのかもしれない……でも、誰でもいいから信じて……!わたしは、ここにいるの……!!」

 アシャは聖なる火を手に出したが、怯える彼女を見て、己の正道に反するこの光景に首を振り、火を払い消した。

「……アールマティよ。彼女の言う通りであれば、悪神群とない交じりになった彼女までもが焼かれてしまうだろう。俺は善なる人間の守護者……そして彼女は、かつて善神アフラ=マズダ様が愛していたお方だ。……故に!」

 アシャは背中の鞘から剣を抜き放ち、攻撃姿勢で構えた。

「俺は俺の正義に則り、君たちと戦ってでも、彼女を守る盾とならん!!」

「アシャよ……」

 アールマティは失意したが、キングはアシャのその強い正義感を認めた。

「ならば、問うぜ。アシャさんよ。……あんたは彼女に情けがうつっても、ドナ=ジョーの本性がいざ悪神群でしか無かった時。あんたは冷酷にも、悲劇でしかないドナ=ジョーの残骸を、その剣でぶった斬る覚悟は、あんのか?アンタはその時、身を守る覚悟が、ついてんのか?」

「ワイアット!任せてはなりません!!」

 アールマティはキングを諌めたが、アシャはキングの内面の優しさを見て取り、剣をかざして誓った。

「正義を司る者には、冷酷な勝負も使命のうちだ。断罪はこの剣にて正しく行なわれるだろう。その時は、俺が責務を果たし、彼女を斬る。我が命を持って誓おう。俺の身までも案じる優しき男、アールマティの依代よ。君の名をなんと?」

「……キングでいいぜ。ならば、俺の権限でアンタ達を見逃す。早く逃げて、ドナ=ジョーを匿いな。アンタ達が見えなくなるまで、俺は一歩も、ここから動かねぇぜ。」

「……君に敬意を。行こう、ドナ=ジョー!」

 アシャは剣を胸にかざし、キングに敬意を払うと、ドナ=ジョーを連れて逃走した。

 躊躇いながらも、ついて走るドナ=ジョー。

 入り組んだ道のかなりの距離を進み、路地裏を抜けていくと、アシャはドナ=ジョーに振り向いた。

「息は大丈夫かい?走りっぱなしだ。じきにつく。君は、良い友を持っていたんだな。」

 ドナ=ジョーは躊躇いながら、答えた。

「……わたし、息をしてないわ。死んでるから……癖で、呼吸みたいなことはしてるけど、大丈夫だから。あの……実は、わたしの知っているキングは、キレ症の暴力魔だったから……どうして、あんなに優しくなったのかは、わからないの。」

「そうか。君は、死の眠りについていたんだ。無理も無い。気にしないでくれ。」


 アパートの部屋に着くと、アシャはドナ=ジョーを椅子に座らせ、尋ねた。

「君は、夕飯は食べたのか?お腹が空いているかい?」

 ドナ=ジョーは、優しいアシャの質問に、ポロポロと涙を流した。

「ドナ=ジョー」

「人を、何人か、殺した気がするわ……その時、わたしについてる悪魔が……人肉を、食べた気がする。夕飯は、いいわ。ごめんなさい……貴方の親切な申し出に、わたしは相応しくないわ……。」

 アシャは躊躇いながらも、正義感から、幼子をあやすように、抱きしめて、ヨシヨシと背中を撫でて励ました。

「怖い思いを、したんだな。大丈夫だドナ=ジョー。さぁ、君がベッドを使いなさい。心身共に疲れているだろう。眠って、もし悪夢を見たら、俺を起こしても構わないから。」

 ドナ=ジョーは、ベッドに入り、シングルベッドが狭いと気づいて、アシャに尋ねた。

「貴方は……?わたしがベッドを使ったら、貴方が眠れないわ。」

 アシャは椅子に座って見せた。

「俺はあくまで君の護衛中だ。椅子でも眠れるし、こっちの方がすぐに起きられる。」

 ドナ=ジョーは、ベッドの中に潜り込んだ。

「ありがとう。貴方、アシャって呼べば、いいのかしら……オーエンの側の、人?」

「俺は善神群の天使、アシャ・ワヒシュタだ。ザシャという勇敢な青年と融合したから……アシャ=ザシャであり、善神様……いや、オーエン・テイラーの側だよ。」

 ドナ=ジョーはようやく、頬を綻ばせた。

「オーエンに、会ったのね?わたしの憧れの人よ。賢くて、優しくて……頭脳明晰なのに他人を尊重する心を持った人だわ。」

 アシャは彼女の笑顔を見て、告げた。

「君が落ち着くならば、眠るまで、オーエンの話をしようか。俺も知りたい。転生した彼の在り方を。」

 ドナ=ジョーは頷いた。

「ありがとう。アシャは優しい人だわ。わたしはドナ=ジョー・オリンズ。オーエンに恋をしてきた、ごく普通の、女学生よ。」

Copyright(C)2026 燎 空綺羅

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ