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第4話

「一颯君、遅かったね」


 教室に戻ると、弁当を持った愛梨が待機していた。

 ダイエットは継続中なので、今日も俺は愛梨の食事制限に付き合うことになる。

 今年度いっぱいは続けるつもりのようだ。


 ……そう言えば、チョコレートは制限しなくていいのだろうか?


「ちょっと用事があって……」

「……それ、なに?」


 愛梨の声が、低くなった。

 視線の先には、俺が手に持っている箱があった。


 ――葉月から、義理チョコをもらったんだよ。


 そう答えようとしたが、少しだけ悪戯心が浮かんだ。


「何だと思う?」


 俺がそう尋ねると、愛梨はそっぽを向いた。


「チョコレートをもらったからって、調子に乗らないで。気持ち悪い」

「き、気持ち悪いって……」


 そこまで言わなくてもいいだろ。


 さっきは人のこと、散々馬鹿にしたくせに。

 俺が誰からチョコレートをもらおうと、関係ないって言ったくせに。


「チョコレートあるなら、お弁当、いらないわよね?」


 すっかり拗ねてしまったのか、愛梨は机に出していた弁当箱を鞄に仕舞おうとする。

 俺はお前の食事制限に付き合う立場なんだが……。

 

 別に愛梨から弁当ばもらえなくとも、購買で購入すれば済む話なので困らない。

 が、それを口にしたら本格的に大喧嘩になってしまう。


 愛梨との喧嘩はいつものことだが、ヴァレンタインにすることではない。


「葉月からの、義理チョコだよ」

「あ、そう。……最初から、そう言えばいいのに」


 愛梨の機嫌が良くなった。

 つい先ほどしまったばかりの弁当箱を、鞄から再び取り出す。


 調子のいいやつだ。


「俺が誰からチョコレートをもらおうと、関係ないんじゃなかったのか?」

「……別に? ただ、一颯君がこれからチョコレートを食べるつもりなら、お弁当は邪魔かなと思っただけだもん」

 

 いろいろと言いたいことはあったが、弁当をもらえないのは困るので、黙っておくことにした。

 弁当を食べ終えてから、葉月からもらった箱を取り出した。


「あ、今、食べるんだ」

「痛まないうちに食べた方がいいかなと」

「それもそうね」


 愛梨は身を乗り出し、俺の手元をじっと見てきた。


「……見るなよ」

「ちょっと気になって」

「お前ももらったんじゃないのか? 友チョコ」

「もらったし、食べたけど……あ、私が食べてあげようか?」

「ダイエット中だろ」


 愛梨の視線にやり辛さを感じながらも、リボンを解き、包みを開いた。

 そして箱を開ける。


 黒、白、ピンクの三色のチョコレートが入っていた。

 そのうちピンクをつまみ、口に入れる。

 チョコレートのほんのりとした苦みと、イチゴの酸味が口に広がる。


 中々、美味しい。

 例年通りの味だ。


「……ハート型」


 ぽつりと、愛梨が呟いた。

 ハート型? 

 確かに三つとも、ハート型だけど……。


「それがどうかしたか?」


 例年、そんな感じだぞ。


「う、ううん……なんでもない」


 その日、一日中、愛梨はそわそわしていた。


_____________


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ぜひご一読ください。

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書籍版第一巻、4/15GA文庫様より発売予定です
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