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転生召喚『黒龍』記  作者: 緑楊 彰浩
第二章 アクアセルシス王国
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アクアセルシス王国5





 黒麒は、エリスとユキと白美の少し後ろを静かに歩いていた。観光客が多い為か、様々な種族が歩いている。それでも、珍しそうに黒麒を見ている者は多かった。

 それも仕方のないことだろう。角の生えている者は周りにいないのだから。観光客が多いと言っても、角の生えている存在は少ないのだろう。だから、黒麒は珍しそうに見られているのだ。

 けれど、それに慣れている黒麒は気にすることはなかった。

 そして、歩き続けること約10分。エリスは、ユキも入れる店を見つけたようで、ある店の前で立ち止まった。白美は落ち着きなく周りを見回している。黒麒はエリスの側へ行こうと、歩く速さを早めることなく向かって行く。

 その時、1人の男性と擦れ違った。金髪よりの茶髪男性。何故か、黒麒はその男性が気になり立ち止まってしまった。

 振り返ると、その男性は白髪の男性と話しをしていた。30秒ほど話をして歩き出す彼らを見て、黒麒もエリスの元へと向かった。

「どうしたの?」

「いいえ。擦れ違った男性に、少し不思議な感じがしただけです」

「不思議な感じ?」

「ええ。悪い感じではないので、心配しないでください」

「そう……。ユキと白美とこのお店に入ろうと思うのだけれど、黒麒はどうする?」

「もしかすると、誰かがくる可能性もありますから、ここで待っています」

「そう。それじゃあ、行ってくるわね」

 そう言うとエリスは、ユキと白美と一緒に店内へと入って行った。店内には、他にも動物と一緒に商品を見ている人がいる。中には人の言葉を話す動物もいれば、話す事のできない動物もいた。

 店内には、動物が使える食器やアクセサリーなど様々なものが揃っている。ユキを連れて入れるお店が少ないため、エリスは楽しそうにユキと一緒に商品を見ている。白美は少し離れたところで別の商品を見ている。

 エリス達が店の奥へ入って行き、姿が見えなくなると黒麒は周りを見渡した。

 様々な種族がいる中に、奴隷だと思われる鎖に繋がれた者もいる。周りの者達は、それを見て遠ざかっている。なるべく関わらないようにしているのだろう。

 どこにでも奴隷はいる。しかし、ヴェルリオ王国では見たことはない。それは、奴隷を連れて歩いているだけで、他国から来た者であろうとも処罰があるからだ。

 そのため、ヴェルリオ王国へ訪れた奴隷を連れた者は滞在することなく素早く通り抜けをするのだ。奴隷を連れて国内へ入ることはできる。だが、国内で見つかってしまったら処罰を受けるのだ。

 だから、この国のように奴隷を連れて歩いている姿を見ることはない。

 この国で処罰があるのかはわからないが、奴隷を連れていることによく思わない者は多いようだ。中には、どこかに連絡をしたほうがいいのではないかと話しをしている者もいるくらいだ。

 ――それでも、連絡をする人はいない。

 関わって、長く時間をとられたくはないのだろう。

 ――この国は、全体的に不思議な空気というか、気配に包まれている気がする。

 それが誰の気配なのかは黒麒にはわからない。けれど、嫌なものではないことに黒麒は小さく息を吐いた。

「で、どうだった?」

「やっぱり、彼ですね」

 そんな会話が聞こえてきたが、それが先ほど擦れ違った男性とは思っていない黒麒は気にすることはなかった。

「黒麒」

「白龍!?」

 突然白龍に名前を呼ばれて、黒麒は驚いた。何故なら、白龍はリシャーナとツェルンアイと一緒にいたのだ。だから、ここに1人でいるはずがないのだ。

 それなのに、ここに1人でいるのだ。周りを見てもリシャーナとツェルンアイの姿は確認できない。

「人、いっぱい。はぐれた」

「そうですか。でも、無事でよかった」

 はぐれたという白龍だったが、何事もなく無事に黒麒の元へ来れたことに黒麒は安堵の息を吐いた。

「男の人、ここに黒麒、いるって」

「男の人?」

 この国に知り合いはいない。それなのに黒麒を知っている人がいたのだという。しかも、それだけではなく居場所まで知っていた。疑問に思わないはずがない。

 周りを見回しても、黒麒達を見ている者は現在誰もいない。白龍に黒麒がここにいることを告げた男性が誰かも黒麒にはわからない。だから、黒麒は白龍に注意をする。

「知らない人について行ったりしては駄目ですよ」

「うん。あの人にも、言われた。それに……」

「それに?」

 黒麒がここにいることを告げた人物にも同じことを言われたようで、白龍は笑った。見知らぬ人物に心配されたことが可笑しいと思ったようだ。

「不思議。龍、似てた」

「似てた?」

 そして、白龍はそう呟いた。それは、白龍にここに黒麒がいると告げた男性のことだろう。

「うん。龍、似た感じ」

 それは、龍と同じ『ドラゴン』ということなのか。

 黒麒にはわかるはずもなかった。白龍ではないと、その感じたものはわからない。

「今ははぐれないように、ここで待ってましょうか」

「うん」

 ここにいればリシャーナとツェルンアイとも合流できるかもしれないのだ。だから、黒麒は白龍と手を繋ぎ、はぐれないように注意をしてエリスとユキと白美を待った。

 そして、白龍と合流して5分ほどしてエリスとユキと白美が店から出てきた頃、リシャーナとツェルンアイが姿を現した。

 2人は慌てた様子で、黒麒と手を繋いでいる白龍を見て安心したようだった。子供がいなくなれば、慌てるのは当たり前だろう。それに、白龍は誘拐されたことがあるのだ。心配するのは当たり前だろう。

 もしかすると、また誘拐されたのかもしれないと考えていたかもしれない。それでも、エリス達の元に来たということは、白龍の気配を辿っていたのかもしれない。

 リシャーナとツェルンアイが白龍に近づくと、はぐれてしまったことを謝り、すぐに見つけられなかったことに対しても謝っていた。

 それを横目で見ていた黒麒は、姿を見せない龍がいないかを周りを見て確認した。

 龍と白龍は、お互いの意思でどこにいるかを伝えることができる。しかし現れないということは、白龍は龍に伝えなかったのだろう。たとえ伝えていたとしても、龍は白龍が危険な目に遭っているわけではないとわかったのかもしれない。

 だから姿を現さなかったのかもしれないのだ。それに、集合場所は今いるお店の前ではない。

「さて、どうする? このまま集合場所に戻る? それとも、まだお店を見ていく?」

「白龍はどうする?」

「僕、戻る」

「なら、戻りながら他のお店をみましょう。何か欲しいものがあったり、気になったものがあれば立ち寄りましょう」

 リシャーナとツェルンアイもそれでいいようで頷くと、エリス達がまだ見ていないお店が並んでいる側を通りながら集合場所へと向かって行った。













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