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転生召喚『黒龍』記  作者: 緑楊 彰浩
短編~黒龍編~
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短編05 渡せないアイテム




※短編は本編を読んでから読むことをお勧めします。

ネタバレや、次の話へ関係ある内容のものもあります。










「絵本、読んで」

 そう言って、ベッドの横に絵本を両手で抱えて持っていたのは白龍だった。リビングで悠鳥に文字の読み方と書き方を教えてもらいながら勉強をしていた白龍を見ながら、城に行って勉強していたのに頑張るなと思いながら少々早い就寝につこうと考えていた。翼と角が邪魔なため、部屋に戻るとベッドにダイブをして俯せのままうとうとしていた。そんな時に、いつの間に部屋に戻って来ていたのか白龍に声をかけられたのだ。

 ゆっくりと起き上がり、机の上の時計を確認する。この時計は、実は国を救ってくれたお礼にとアレースがくれた物だった。仕事も紹介してくれていたため、時計でも充分に嬉しかった。鐘の音で時間を判断しなくてもすむことはよかった。だが、この時計は定期的に本体に雷を送り充電をしなくてはいけないというのが少々問題だった。止まってしまえば、自分で時間を合わせなくてはいけないからだ。止まる前に充電をしなくてはいけない。1週間に一度の充電。時計を見ると、部屋に来てからすでに1時間が経っていたようで、うとうとしていた時間は長かったようだ。

 白龍が持つ絵本に見覚えはない。どこかで見たことのあるような絵だとは思ったが、特に気にすることはなかった。しかし、タイトルは見覚えがあるものだった。それは黄色い国ことヴェルリオ王国と、黒い国ことクロイズ王国の物語。きっとアレースから貰った本なのだろう。アレースはまるで自分の子供や、孫のように白龍を可愛がり物を与えている。そのため、龍が知らない本は多いし本棚には白龍の本ばかりが並んでいる。

 ベッドに座り、一度欠伸をすると自分の横を数回叩いた。読み終わる前に寝ることもあるので、ベッドに横になりながら読み聞かせる。横になるのは白龍だけで、龍は上体を僅かに起しながら俯せになり読む。そのため、腰が痛くなるのだ。

 絵が変わっているだけで、内容は変わらないだろうと思いながら本を読み聞かせる。

 5つの国が平和に暮らしていた世界。しかし、ある日魔物が現れた。大きな翼を持ち、禍々しい黒い瘴気を放つ生き物。『ドラゴン』のような、鳥のような二つが混ざった生き物が描かれているがどちらが正解なのかはわからない。

 そんな魔物が近くの村で暴れたため、その村が壊滅してしまったのだ。壊滅した村に、魔物はそのまま住みついてしまった。その村はどこの国にも属していない。だが多くの国の人達が利用するため、そこに住みついてしまった魔物を放っておくこともできない。しかし、そんな大きな魔物を倒そうと考える者がいなかった。

 魔物が暴れて3日ほどして、遠くへと出かけていた二つの国の国王がそれぞれの国に帰ってきた。そのときに、魔物が住みついているためどうにかしてほしいと国民に相談された2人はすぐに魔物を倒そうと考えた。だが1人では倒せないと考え、仲のいいその日一緒に行動していた国王に相談をした。

 お互いが同じことを考えていたと知ると、2人はすぐに行動した。国王軍を集め、魔物を倒しに行くことを話したのだ。だが、その日に行くことはなかった。国王軍の中には、国王と共に出かけていた者もいたからだ。せめて1日休み、少しでも体力を回復させてから討伐に行こうということになったのだ。

 魔物は壊滅させた村に住みつき、そこから移動してはいないという話だった。その日もそこにいるとは限らなかったが、体力が回復していないうちに魔物の元へ行くことによって、魔物に倒されてしまう可能性が高くなるため翌日にしたのだ。

 そして翌日。魔物に気づかれないように徒歩で魔物へとそれぞれ向かっていた二国の国王と国王軍。彼らは倒壊した家に蜷局を巻いて眠っている魔物を囲んで息を潜めていた。風が吹いても眠っている魔物に、全員が静かに近づき刃物を突き立てる。

 刺さる刃物もあれば、折れてしまうものもあった。予想以上に固い皮膚。刺されたことにより魔物が目を覚まし、首をもたげた。そして、自分に刃物が突き刺さっていると気づくと小さく唸った。翼を広げて、空を見上げると咆哮。

 そうして、自分に刃物を突き立てている男達を睨みつけると、大きく口を開き炎を吐きだした。逃げられなかった者達は高温になすすべもなく倒れ、間一髪で逃れた者達の多くは武器を手にしてはいない。魔物の体に刺したのはよかったのだが、抜けなかったのだ。

 それでも、彼らの攻撃方法は一つではない。武器が無くなった者達は魔法を使って魔物に攻撃をする。国王2人は、魔物の気を引きながら隙を窺う。なるべく仲間達に攻撃されないように近づいたり、離れたり。

 しかし、近づきすぎると魔物の翼や尻尾で吹き飛ばされてしまう。何度も何度も繰り返し、仲間達が攻撃をしていると隙ができるようになってきた。炎を吐き出す感覚が短くなり、次に吐き出すのにも時間がかかるのだ。

 頭を下げて国王に噛みつこうとした魔物。攻撃を避けると、2人は同時に手に持っていた武器で魔物の目を目掛けて突き刺した。武器から手を離さずにそれを抜いて、叫ぶ魔物の背中に乗ると翼の根元を切りつけた。すると、あっさりと翼は地面へと落ちた。

 尾や手で抵抗する魔物だったが、動きが鈍くなっていた。国王が魔物の首に刃を突き立てると、魔物は巨体を傾けるとそのまま地面に倒れて動かなくなった。

 どうやらこの魔物は、自分で破壊した建物の破片で翼を怪我してしまい飛ぶことができなかったようだ。そのため、戦っている最中は一度も飛ぶことはなかったのだ。

 この大きな魔物を連れて行くことはできない。だが、討伐したという証を持って行かなければいけない。それならばと、全員でその魔物の首を斬り落とすことにした。斯くして魔物は無事討伐することができた。

 討伐をしなかった近隣の国からは金銀財宝様々な報酬を貰った。自分達では巨大すぎて倒すことのできなかった魔物。それを倒してくれたお礼だ。

 その財宝を売り、お金に換えて二国は城を建て、国民の為に家を建てたり動植物を購入し、それぞれに役割を与えた。それらを育て、売ることによってお金を貰えるようにと。そうすることによって、国民も貧困にあえぐことはなくなった。

 そうして、黄色い国と黒い国は栄えていった。協力し合い、魔物を倒した二国はさらに絆を深め交流は途絶えることはない。これからもずっと。

 この物語では、黒い国と黄色い国が敵対することはないようだ。もしかすると、これが真実なのかもしれない。アレースは一体この本をどこで入手したのか、それに本屋で一度も見たことのない本だ。誰が描いた本なのか。

「……ルペンディ・ダブダフ」

 その名前に覚えがあった。クロイズ王国国王であるウェイバーの側近の名前。ソフィネットを捕らえ、似顔絵を描いた人物だ。見覚えがあるはずだ。

 いつの間にか眠っていた白龍に、風邪を引かないように布団をかける。何度か読み間違いを指摘されたが、気がつけば白龍は自分より文字が読めるようになったのだと思いながら間違えた場所を自分より幼い子供に教えてもらいながら読んでいた。

 自分で読めるのに読んでもらうのは、勉強ではなく純粋に子供として読み聞かせをしてほしいという思いなのだろう。白龍はもしかすると明日突然成長しているかもしれないという子供だ。いつまで絵本を読み聞かせられるのかはわからない。

 龍の方を向いて眠る白龍。そんな白龍に龍は疑問が生まれる。どうして自分には翼と角が生えているのに、白龍にはそれが無いのか。これが純粋な『ドラゴン』との違いなのだろうか。それは、最近思うようになったことだ。以前はそれを考えることすらできないほどに依頼をこなすことに一生懸命だった。

 依頼をこなすことにも慣れ、自分の生活も落ちついてくると疑問ができたのだ。一番の疑問は、自分と白龍の違い。何故違うのか。そう考えながら今日も眠りにつく。








******








「それは、前回が『ドラゴン』だったかそれ以外だったかの違いじゃないのか?」

 翌日、依頼があると連絡が来たためアレースの元を訪れた。依頼は重い荷物を至急クロイズ王国のウェイバーの元に届けてほしいという、アレース自らの依頼だった。荷物の中身がなんなのかは聞かない。だが、疑問だった白龍についてを話した。すると返ってきたのはその言葉だった。

 確かに前回も『ドラゴン』であれば、無意識に翼や角を消すことができるのかもしれない。そう納得する。それならば、自分も訓練さえすれば消すことは可能なのかもしれない。今は不便ではないが、いざという時消すことができれば行動しやすいこともあるかもしれない。

「もしも訓練したいなら、城の庭を貸すぞ。ただし、朝5時から6時までな」

 1時間だとしても訓練できるのは有難いと、アレースの提案を受け入れた。訓練することによって、時間はかかるかもしれないが翼と角を消すことができるかもしれないと思うと、今はもう相談事もないと荷物を持ち扉へと向かう。

「ああ、そうだ龍。お前にこれを……」

 そう言って机の上にあるものを出したのだが、アレースの声が聞こえなかったようで龍は部屋から出て行ってしまった。扉を開いて呼び止めることはできたのだが、それはしなかった。今渡さなくてもいいだろうと思ったからだ。すぐに必要なものではない。そのうち渡せればいい、そう考えてのことだったのだが、それを渡すのはいつになるのか。この時のアレースはわからなかった。

 机の上で太陽の光を反射する一つの指輪。それは、龍に渡すはずだった魔法(マジック)アイテム。その指輪にはクリスタルのような装飾が一つだけついている。それには一体どんな意味があるのか。それは、今はわからない。







短編05 渡せないアイテム 終









―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

アレースが渡せなかったアイテムは、私が渡し忘れているだけです。今後何度も渡せる機会はあるのですが、渡しません。私が忘れているからです。でも、渡さないといけない物なので必ず渡します。結婚指輪とかではないですよ。


アレースから貰った絵本は、ルペンディ・ダブダフが描いたものでこれから本屋などに出回るものです。まだ、一般では売られていない絵本です。

龍がウェイバーの元へ配達したのは、お米とか重いものです。特に物語に関係のない荷物なので、中身は考えておりません。ヴェルリオ王国のどこかの村で収穫されたお米あたりだと思ってくださればいいです。

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