短編03 『不死鳥』悠鳥との出会い
※短編は本編を読んでから読むことをお勧めします。
ネタバレや、次の話へ関係ある内容のものもあります。
妾は何度でも生まれ変わる。死ぬ前に火山や炎に飛び込むことにより、新たな体を得る。炎が近場にない場合は香りのよい小枝を集めて巣を作り、巣の中で自らの熱で燃えつきることもある。しかし、火山などに飛び込んだ場合、飛び込んだはずの場所と新たに生まれた場所が毎回違う。火山に飛び込んだはずなのに、誰かの家の暖炉だったこともある。
始めは訳がわからなかった。しかし、何度も転生することによってあることに気がついた。それは、もしかしたら自分以外の『不死鳥』が存在しているのではないかということ。何度も生まれ代わりをしているが、妾は一度も他の『不死鳥』に会ったことはない。
けれど、『不死鳥』は文献に残っている。それは全て、妾が行ったことのない土地のものだった。だから、妾以外にも『不死鳥』はいるのだろう。他にも仲間がいると思うと嬉しかった。そう、嬉しかった。何年も、何十年も、何百年も生きていればそのうち会えるだろうと思っていた。しかし、一度も会うことはなかった。
森の動物に聞いたり、人間を脅して『不死鳥』を見なかったか尋ねたが見た者はいなかった。何度も繰り返し、漸く目撃したという人間に会えたのは数百年が経っており何度も転生をしてからだった。数日前に見たという話を聞いて、同じ方角へと向かうが会うことはなかった。
向かうと必ず相手は別の方角へと向かう。何度も何度も繰り返して気づく。『不死鳥』は出会うことができないのだと。何故かはわからないが、そう決められているのだろう。この世界を作った『神』という存在は何故、『不死鳥』同士を出会えなくしたのか。たしかに出会うことがなくとも不便はない。しかし、仲間の姿は直接見てみたいものだ。
もしかすると、他の『不死鳥』も妾と同じように追いかけているのかもしれない。そう思って追いかけるのはやめようと考えた。追いかけ続けるのではなく、同じ場所にいればそのうち他の『不死鳥』が立ち寄ることもあるかもしれない。それは数年単位ではなく、数百年後かもしれない。それでもいいと考えた。
数百年単位だと、妾も何度か転生するだろう。そうすれば、その近くに住んでいればいい。そう考えて今はどこに滞在しようかと考えて翼を大きく広げた。近くにあった『不死鳥』が描かれた旗がはためく国の上空を飛ぶ。妾がこうして人間の住むところを飛ぶことによって、文献に残っていくのかもしれない。そう思いながら街を見下ろす。
多くの人間が妾を見上げている。それもそうだろう。『不死鳥』は普段、人前に姿を現さない。だからこそ、文献に残るのだ。妾が知り合いのエルフなどに尋ねたところ、妾が人間を脅して尋ねたことも文献として残っているようだった。
人間が見上げる中、人間観察をしながらこの街を通りすぎようと思った。だが、その中に面白い者を見つけてしまった。人間しかいない街の中に異様な者が2人。その2人と共に歩いている1人の金髪女性。周りの人間は少し遠ざかっているのだが、女性は気にしていないようだ。
遠ざかっている理由は、どうやら女性と黒い服を着た男性と共にいる少女にあるようだ。そして、見ただけで2人が何者かがわかってしまった。
――面白い者達じゃの。人間の娘に、描かれた『黒麒麟』。神に近い白い『九尾の狐』の娘にして、青目の不吉な子。
そして、少し離れた場所に1人の男性。目を輝かせながら妾を見ている男性は、どことなく女性に似ている気がする。
――なるほど……。兄妹ということか。
何故隠れるようにしてつけているのかはわからない。きっと心配しているのだろうとは思うが、生き物の心を読む力は持っていないので本当のところどうなのかは不明。ただわかるのは、彼は魔物の類が嫌いということだろう。それくらいはわかる。わかるが、妾に対しては何か違う気がする。まあ、あの男は気にしないことにしよう。
妾が気になるのはあちらの3人組。周りの者が気にしているのに、3人とも妾を気にしていないことも面白い。空を見上げている周りの者達のことには気がついているようだが、自分達は気にしない。そんなところが面白い。
3人組の頭上で数度旋回すると、邪魔にならない程度の距離をとり3人の前にゆっくりと下りる。すると、二歩程の距離を保ち3人は立ち止まった。久しぶりに地面に足をつけたことにより数度足踏みをする。地面の感触が久しぶりだった。
いつもは木の上や屋根の上にしか止まらない。時々動物の上に止まったり、人間の肩や頭に止まることもあるけれど、地面は久しぶりだった。足踏みをして何も言わない妾を黙って見ていた3人だったが、金髪女性が妾を上から下まで眺めて口を開いた。
「どうしてみんな空を見上げているのかと思ったら、『不死鳥』の貴方がいたのね。思っていたより大きいのね。2メートルくらいかしら? 尾は体よりも長いのね。先も少し青みがかってるのね。赤色がメインで、触っても熱くはないけれど黄色っぽいところもある……」
妾を恐れることなく触れてくる女性に、本当に面白いと思う。周りの者は妾を遠ざけている。恐れてではなく、近寄りがたいのだろう。黙って女性を見つめてから、同じように触り始めた『黒麒麟』と『九尾の狐』の娘を見る。別に触れてくることは構わないのだが、はっきり言ってこんなに触れられることは初めてでもあり、人間には触れられるのは初めてだ。動物には数度触れられたことはあるが、人間には一度もない。
一体いつまで触れているのか、聞けばいいのだろうが真剣に触っているので話しかけることすら躊躇われた。今は触れていても問題はないが、炎を纏うこともできる。今そんなことをしたら大問題だろうと思いながら、漸く満足したのか女性は妾の前で顔を見上げて一度頷いた。
「それで、私達の前に下りてきたってことは何か用かしら?」
「面白いと思っての」
「え?」
「何が何が?」
面白いと言われ、首を傾げる『黒麒麟』と聞きたくて飛び跳ねる『九尾の狐』の娘。この街の様子から、よくこの娘は平気そうな顔をして暮らしているなと思う。この女性と『黒麒麟』のお陰かもしれないが、元気なことはいいことだろう。
「描かれた『黒麒麟』と、青目の不吉な『九尾の狐』の娘」
「見ただけでわかるのね。それは、『不死鳥』の持つ力」
「違う。何度も生まれ変わることによって自然に見抜けるようになっただけの妾の力じゃ」
「……それで、他に何か用でも?」
笑みを浮かべて「言いたいのはそれだけではないのでしょう?」と言いたげな顔をして言う女性に妾は微笑んだ。『不死鳥』の姿のままなため、微笑んだと言っても女性達にはわからなかったかもしれない。
「その者達は其方の使い魔のようじゃな」
「そうよ。いけないかしら」
「そんなことは言ってはおらんじゃろう。ただ、妾は長期滞在の場所を探しておるのじゃ」
「……それで?」
言いたいことがわかったのか、女性は微笑んだ。この女性は賢いと思いながら、口を開く。
「其方らのそばにいれば、面白いことが起きそうじゃ。妾がその2人のようにそばにいたいと言ったら……どうする?」
「どうするも何も……」
そう言って取り出したのは星型のピアス。2人もつけている様子から、妾たちのような存在はそれをつけ使い魔として契約しないといけないのだろう。しかし、今の妾にはいピアスをつけることのできる耳が無い。
ならばと、2人のように人型になることにした。何年も人型になっていなかったので、少々不安ではあったが妾は自分の翼で体を包み込んだ。そして、人型になったのだが……どうやら、変化は得意ではないようだ。
「中途半端じゃが、これならそのピアスもつけれるからよいじゃろう」
「……そうね」
どうやら女性は見惚れていたようで、反応が遅れていた。周りの人間も感嘆の息を吐いていた。
差し出されたピアスを受け取り、他の2人と同じように右耳につける。痛みもなく耳に刺さるそれをしっかりと留める。自分ではわからないため、女性に見えるように右耳にかかる髪を避けると頷いた。
「あのね、あのね。あたし、白美。黒くんに、エリスちゃん! 貴方は誰さん?」
「そうじゃのう……妾の名前は悠鳥」
いつ名乗っていた名前なのかは覚えていない。ただ言えるのは、今の姿の『不死鳥』になってからは一度もこの名前を名乗っていないということ。前回の名前なのか、それとも違うのか。そんなことは覚えてはいない。
けれど、名前が無いと不便であることからこの名前を名乗ることにした。別に嫌いな名前ではない。どちらかと言うと、気に入っている名前なのだから。
隠れて見守る男の目がさらに輝いて見えるのは気の所為だと思うことにして、妾は歩き出したエリスと言う女性について歩く。先ほどよりゆっくり歩いているのは、妾の足が鳥のそれのため歩きにくいと思ったからだろう。実際歩きにくかったのだが。
隣を歩く白美は妾を見上げながら、楽しそうに話をしている。返答は特に求めていないようで、相槌だけで満足している様だった。
後ろをついてくる男の気配を感じながら、この街を拠点にするのはやはりいい考えだったと思った。周りからの目は気になるが、2人のような存在は少なからずいるようだった。
久しぶりに歩く地面を踏みしめながら、この者達の周りで起こるかもしれない面白いことに胸を躍らせた。この者達のそばにいればもしかすると、他の『不死鳥』に出会うかもしれないとも思う。
そして、妾が一度も持ったことのない感情も芽生えるのではないかと思った。今まで人間に関わることをしなかったが、関わるようになったことで何かが変わるかもしれないとも思ったのだ。
短編03 『不死鳥』悠鳥との出会い 終
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一応悠鳥視点ではありますが、セリフ以外はほぼ通常。
本編に入れようとしていたのですが、入れるタイミングがわからなくなってしまっていたもの。
召喚されたわけでも、エリスから契約しようとしたわけでもない。
長期で滞在する場所を探しており、面白い2人を連れたエリスと一緒にいれば面白いことが起こるかもという理由で自分から契約した。
人型になるのは下手なため、半人半鳥。歩くことが下手なため、人がそばにいなければ羽ばたいて移動する。




