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青天40

未来の――――詰まる所、将来の為にその座をあっさり捨てたということだ。

幹部ナンバーはみすみす捨てていいものではない。


それこそ実力があって選ばれる功績である。

彼はそれをあっさり預けたと言ったのだ。


「まぁ、哲人は簡単には承諾してくれなかったけどね」


はにかみながら言う彼にそれはそうだろうと紫咲は思った。


「だけど最後には折れてくれたからね」


彼の熱意に負けた御手洗指揮官が潤という戦力を手放した。

それは相当な決意だったのだろう。


彼の判断は間違っていなかったと言えるのだろうか。

紫咲には到底理解出来なかった。


思慮深く考えていると、尋常じゃないほどの雄叫びが聞こえてきた。

その場にいた三人は一斉に同じ方角を見た。


そこには赤き雲が姿を変えていた。


「なんだ……?まだ何かあるのか?」


その光景を目にしていた潤が訝しげに睨んだ。

二人もつられて見るがーーー


怒号のように飛んできた雄叫びに風が吹き荒れる。

何か良くない兆候だ。


潤は素早く装填した銃弾を撃ち放つ。

軌道上にいた雷雲を貫いて直線的軌道で飛んでいった弾丸が赤い雲に突き刺さることはーーーなかった。


「ーーーッ」


潤は息を飲んだ。

自らが撃った弾丸は、赤い雲が放った攻撃によって防がれた。


しかし、それはただの攻撃ではなかった。

今までのように雷雲で撃つというのではなく、それは赤い雲自体から穿たれたものだ。


それも先ほどの威力の非ではない。

恐らく人間が喰らえばひとたまりもない。


「厄介ね……伊達に七色の雲一番の攻撃力を名乗るだけのことはあるわね」

「そうですね。これ以上の攻撃は少々厳しいですね……」

「弱気になる前にやることがあるんじゃないか?」


赤い雲に向けていた視線を話しかけてきた蓮へと向けた。

蓮は薫と凛華に顔を向けた。


彼にはここで引くという選択肢はない。

ここで引いたら駄目だ。


次は次こそはここで討ち払わなければいけない。

青天の霹靂の一対はーーーもうここで倒さなければ。


人々の雪辱は自分が晴らさなければ。

蓮は鋭い目つきで赤い雲を見据えて、薫と凛華に合図を出す。


二人は応じて赤い雲に挑んで。

彼らを信じて潤も呼応する。


「二人とも」


潤は同じく銃を携えている紫咲と西園寺の名前を呼んだ。


「何?」

「何ですの?」


紫咲は少し不満そうな顔をで潤を睨みつけた。

やはりまだ潤に対して心を許していないようだ。


「この弾を使ってくれ」


潤はそっと手に弾を差し出した。


「これは……?」


潤の手を見つめ、紫咲が問う。


「僕オリジナルの弾さ。これを使えば赤い雲の硬い装甲を壊すことが出来る」

「貴方オリジナル?」

「そう。君達にも扱える弾だから安心して使ってくれ」

「……」

「どうしたんだい?」


紫咲の無言に潤が疑問に思うが、


「いいえ、何でもない」


と、彼女は潤の手にある弾を取って装填させた。


その姿に感化された西園寺も彼の手にある弾を取って同じく装填させた。


「……」


紫咲は無言で銃を構える。

こうして自分が素直に応じることなどいつぶりだろうかと振り返る。


だが、その記憶などやはりすぐに思い出すことは出来ず。


それでも、彼に従うしか無い現状に不信感を抱きながらも、彼女はスコープを覗き込んだ。


西園寺もゆっくりとだが、装填までの動作に入っていた。


眼鏡を外した状態の紫咲が、潤の言うことを素直に聞いていることに未だ夢を見ているかのようだ。


普段の彼女のなら有り得ない光景に戸惑いつつ西園寺は己を鼓舞する。


幹部ナンバーなんて大層な肩書きを背負ってはいるが、本当の西園寺はーーー力なんてない。


彼女が幹部ナンバーにいるのは、ほとんど財力のおかげである。


そんな彼女が今こうして七色の雲の一対を倒そうと奮闘している。


そのことが自分にとってはとても誇らしく、強さの源にもなり得た。


だから彼女は引き金に手をかける。

これは自分の強さの証で有り、自分が自分であるための証明になる。


三人が同じように銃に弾を装填させていた頃ーーー


「馬鹿蓮‼︎左‼︎」


薫の叫びが蓮に向けられる。

彼女の叫び後に、蓮に向かって飛んで行く紅炎の刺突が飛来する。


薫の忠告を聞いていた蓮が間一髪のところで避ける。

空中で体を回転させて避けた攻撃が蓮の後方へと飛んで行く。


その行方を見ていると、紅炎の刺突が蓮の背後に通り過ぎ地面に向かって突き刺さる。


その攻撃は地面を抉り取り遥か遠くまで続いた。


「うへぇ〜……あれ食らってたらひとたまりも無いな……」


飛んでいった攻撃に冷や汗をかいて赤い雲と対峙する。


赤い雲との接近戦でここまで持っていることが不思議なくらいに時間は流れていった。


薫と凛華の戦闘に食らいつくために蓮は必死の形相で二人を見る。


観察し、二人の動きを読み取ることで自分も戦闘に加わろうと考えていた。


しかし、二人はサポートに回ると言い出し、蓮を先頭に出した。


二人の強い押しもあって仕方なく受けた蓮だが、いざ対峙してみると赤い雲の強さが身に染みて分かった。


これを、相手に二人はあれほどの戦闘を見せていたのかと感嘆する。


蓮も必死に食らいついてはいるが、経験が浅い分後一歩のところが踏み込めない。


追随出来ないもどかしかに歯噛みする。

だが、蓮も一人で戦っていない。


彼の一歩埋められない実力差を、上野と藤崎が遠距離から弾丸を打ち込みカバーしていた。


二人のさらに後方には司が弓で赤い雲が活性化しないように抑制を掛けていた。


これにより蓮はスムーズに動け、未だ赤い雲と対峙することが出来ている。


これだけの強い仲間達がいれば赤い雲に勝てると思っていたが、いかんせん赤い雲の装甲が想像以上に硬く、撃墜には至らなかった。


「こいつ硬いなッ‼︎こんなに硬いと俺も攻撃に限界が来るんだけど……‼︎」

「グズグズ言わない‼︎男でしょ‼︎」

「そう言う差別は、今言うべきことじゃないだろッ⁉︎」

「僕達の攻撃にも限界が来てる。うまく武器を握ることが出来ない……腕力が低下している。そろそろ決めないと本格的にまずい……」


薫と蓮の間に入った藤宮が弱音を吐いた。


「浩ちゃんがそんな弱音吐くなんて……」

「すまない、鍛錬不足だ」

「何にせよ、早く倒さなきゃいけないが……。後一歩が足りないな……」

「私の力を持ってしても……とは。相性が悪いといえば言い訳に聞こえてしまうでしょうが……」

「力が足りないわね……。雷雲に本気を出し過ぎたみたいね」


それぞれが思っていることを口に出す。

言い訳ならばいくらでも出すことが出来るだろう。


だが、今必要なのは言い訳を吐くことではなく、赤い雲を倒すために力を出す必要がある。

しかし、個々の力だけではもはや雷雲を倒す事すら困難だろう。


額に各々が汗を搔き始めた。

通常より体力が削がれていることに気付く。


この乾燥した地帯では、動くだけで汗が出て蒸気化していく。

奪われていく水分がギリギリまで失っている状態。


彼らが体感している感覚だ。

共闘しかここを打破するしかないのだが……


全員はちらりと一斉に互いを見やった。

はっきり言ってしまえば今ここに入りメンバー全員をよく知っていない。


顔こそ知れど、実力戦い方など全く知らない。

故に即席で組んだところで諸刃の剣にしかならない。


完全なる積みだ。

逃げる体力は辛うじて残っているが、それでは昔と変わらない。


無機質に奪われていったあの日に—――――

全員が困惑して最悪の助教を考えていた。


その時————

全員の暗い顔を吹き飛ばすほどの耳を劈く音が聞こえてきた。


瞬時に皆が顔を上げる。

遅れてから飛んできた弾丸。


三発の銃弾が一斉に飛んだ来た。

飛んできた弾丸の軌道を読んで、凛華と薫は目をやった。


その方向を見れば、遠く遥か彼方に。

その人たちはいた。


凛華と薫は同時に笑った。

あの狙撃は射撃隊の潤、西園寺、紫咲の三人による射撃だ。


その攻撃により、あっという間に赤い雲の硬かった赤い雲の装甲を破壊した。

それは豆腐を討ち抜くが如くいとも簡単に砕く。


装甲が壊れたことによって散漫になった赤い雲。

その好機を全員が見逃さなかった。


動き出した全員が一気に畳み掛ける。


「今のうちだ‼︎」


蓮の合図で薫と凛華の二人が飛翔し攻撃に取り掛かった。

崩れていった装甲から見えた僅かな隙間を二人は見ていた。


それは狙撃犯の参院が一か所に撃ったからこそ出来た小さな穴。

その微細な穴を最強の二人が見逃すはずもなく。


壊れた装甲によって動きが鈍っている赤い雲の懐に容易く入った凛華と薫は、互いに双剣と真剣を以て攻撃を仕掛けた。


一点集中の勢いで二人が穴に向かって切っ先を向けていた。

鋭く伸びた切っ先が、赤い雲の小さな穴に向かっていく。


体力などとうに限界を超えて入り二人は。

逃げる体力さえ捨てて真っすぐに剣を伸ばした。


ゆっくりと流れていく時間。

二人の切っ先が赤い雲の穴を狙う。


修復に取り掛かっている赤い雲だが、それでも―――――

既に遅かった。


赤い雲の修復が終わるよりも先に、二人の切っ先が赤い雲の穴へと侵入した。

そして—――――


「はぁぁぁぁあああああああ‼」

「いやぁぁぁあああああああ‼」


凛華と薫。

二人の切っ先が赤い雲の小さな穴を切り落とした。


削ぎ取られた穴が一気に崩れていき、更に巨大な穴を開けた。

二人が攻撃の余韻を残して着地した。


「「まだよ(です)」」


同時に顔を上げた二人の意思をくみ取ったかのように。


「おらぁぁああーーー‼」

「ふん……」

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