リッくんと月の森のトラ【山月記】息子へ
① ことん、ことん
リッくんは、ならべるのが すき。
ことん。
ことん。
ことん。
ひとつ。
ふたつ。
みっつ。
きれいに ならんだ。
リッくんは、じーっと みる。
おみずも すき。
じゃー。
じゃー。
おみずが ながれる。
リッくんは、じーっと みる。
じゃー。
じゃー。
おもしろい。
あるひ。
おともだちが、おにんぎょうで あそんでいました。
リッくんは、となりに すわりあそびました。
ことん。
ことん。
おともだちも、
ことん。
ことん。
いっしょ。
パチパチパチ!
リッくんも、
パチパチパチ!
にこにこ。たのしい。
② 月の森のトラ
そのよる。
リッくんは、ふしぎな ゆめを みました。
おおきな おつきさま。
きらきら。
そして――
おおきな トラが いました。
ガオー。
リッくんは、トラを みました。
トラも、リッくんを みました。
トラは、ことん。
石を ひとつ おきました。
リッくんも、ことん。
トラも、ことん。
リッくんも、ことん。
ことん。
ことん。
ことん。
石がたくさん ならびました。
きらきら。
トラが いいました。
「きれいだね」
リッくんは、にこにこ。
トラは、リッくんの となりに すわりました。
なにも しません。
ただ、となりに います。
リッくんは、また 石を ならべます。
ことん。
ことん。
ことん。
いっしょ。
③ つぎは なにかな
園にて。
リッくんは、いつもの おもちゃで あそびます。
ことん。
ことん。
先生は、すぐには 止めません。
じーっ。
リッくんは、あそびます。
ことん。
ことん。
先生も、じーっ。
そして――
ぴたっ。
リッくんの 手が とまりました。
先生が、そっと 近づきます。
「リッくん、リッくん」
リッくんが、先生を みます。
目が あいました。
「リッくん。こんどは きょうしつ いこうか」
リッくんは、こくん、と頷きました。
先生と手をつないできょうしつへ。
てくてく。
つぎは おてあらい。
そのつぎは、おうち。
いつもの じゅんばん。
だいじょうぶ。
④ ただいま
ママがおむかえにきました。
リッくんは、ママを ゆびさします。
となりにいる先生が言います。
「ママだね」
リッくんは、こくん。
うん。
ママにぎゅーっ。そして、手はふらずに目でばいばい。
きょうも、おうちに かえってきました。
あしたも、
ことん。
ことん。
そのつぎも、
ことん。
ことん。
もし、手が とまっても。
だいじょうぶ。
また、うごけば いい。
ひとりじゃなくても、だいじょうぶ。
となりに、だれかが いてくれる。
「おもしろいんだね、たのしいんだね」
そう言って、となりに いてくれる。
ことん。
ことん。
ことん。
今日も、月が きらきら。
リッくんの 世界は、ゆっくり うごいています。
おしまい。
自閉症の息子は、並べることが好きです。積み木も、小さい車も、スーパーボールも、石も、木の実も。横一列に並べます。言葉で話せない子です。並べ終わったら、仁王立ちで腰に手を当て『母上、ご覧ください。某はやり遂げましたぞ』と晴れやかな顔で報告してくれます。ママは手を叩いて、感想をいいます。息子は上役のように、うむと頷き、また別のおもちゃたちを並べにいきます。ビー〇ケ大冒険も大好きです。
水も大好きです。水遊び、泥んこ遊び、水たまり、田んぼの水路、バケツのたまり水。ママは気が気ではありません。でも楽しそう。最近、園の同級生と遊ぶようになったらしい。みんなとも楽しいを共有できて良かったなと思う。




