あの月の下で私と踊って(お義兄様と私の物語)40
所々雪が残っている道を馬車が進む 車中でも2人は隣同士に座り手をしっかり繋ぎあっていた
何も話さなくでも2人は喜びで胸が一杯だった
オランジェはこの大公国に来た時は脚を引きずっていたが今はダンスも踊れるようにまでになった この国の医療発展に感謝した
「お義兄様 次のお休みにアランデールの領地に連れて行って下さい お父様とマリお義母様に私が回復した姿を見ていただきたいのです お2人は私の脚の事で心砕いておいででしたので安心させたいのです」
「そのことだけど 回り道だがアランデール領地へ寄って王都に戻ろうと思ってるんだよ
相談しなくてごめんね」
「お義兄様 お仕事は大丈夫なのですか?」
「殿下には到着が遅れる旨の手紙を書いたから多分大丈夫 多分…」ジュリアーノの目が泳ぐ
「え?多分ですか?うふふ」
「アランデール領地にいる両親に僕達の事も報告をしないといけないだろう?
両親に今後の事も含め ちゃんと話を聞いてもらいたいから」
「今後の事ですか?」
「そうだよ 僕はね 両親から祝福されてランと幸せになりたいんだよ」
「そうですね 私もお父様とマリお義母様に正直な気持ちを聞いてもらいたいです 早い方がいいですね」
オランジェはジュリアーノの手を更にギュッと握りしめた
オランジェは馬車の心地よい揺れに身を任せていると安心したのか眠くなってきた 目を擦りとろんとした表情でジュリアーノを見た
「ラン 昨日は色々あったから眠いだろう? 僕の膝に頭を乗せて眠るといい 先は長いから」
「はいお義兄様」
オランジェは微笑むとジュリアーノの膝に頭を乗せた ジュリアーノは優しく背中をトン トン トン としてくれた
その心地よさを感じながらオランジェは目を瞑った
グランドル王国のアランデール領を目指した
予め手紙を出さず急な訪問だったのでブルワーノとマリエッタは驚いた
「脚は治ったんだねこの前もらった手紙で知らせてくれていたけど 実際にランが歩く姿を見るまで信じられなかったよ」
ランはクルッと1周りして見せた
「お父様 マリお義母様 ただいま戻りました 私ちゃんと歩ける様になりましたよ」
「ランちゃん」
マリエッタは名前を呼ぶなりぎゅっと小柄なオランジェの身体を抱きしめて頬ずりした 感極まって中々離してくれない
「マリお義母様 苦しいです」
「義父上 母上 ご無沙汰しております お変わりございませんか? 実はお話があってトラスト大公国から直接こちらに来ました 明日王都へ向かう予定です」
ドローイングルームへ入りお茶の支度が整った
「ラン よく頑張ったね 歩行訓練も大変だったと聞いた」
「スポルト先生や訓練士の先生 看護師さん達 お父様 マリお義母様 ジュノ義兄様 皆様のお陰です」
穏やかなティータイムとなった
「王都へ帰らず直接こちらに来たんだね急用でもできたのか?ジュリアーノ話しとは何だい?
考えが変わってアランデール家を継いでくれる決心がついたなら私は嬉しいのだが」
ジュリアーノは隣に座っていたオランジェとしっかり手を繋ぎあって顔を見合せ頷いた
「いきなり伺って申し訳ありません
義父上 お伝えしたい事があります
私達はお互いに唯一無二の存在だと確信しました
私はランを愛しています 私達の未来にはお互いが必要なのです
人生を共にするならラン以外に考えられません
以前お話した
決して結ばれる事のない人とはランの事なのです」
「えっ いきなり何を言い出すんだ どういうことだ?」
「お父様 驚かないで 私の幸せの先にはお義兄様がいないと駄目だと気がついたんです」
「ちょっと待ってくれジュノ ランとは義理だけど兄妹の関係ではないか」
「そうです その枠に囚われすぎて今までランへの気持ちに蓋をしていました 僕もランと同じでランが居ない未来に希望はありません」
「お父様 私もお義兄様を愛しています ずっと好きだったのです お願いです私達に幸せな未来を下さい」
2人は揃って両親に頭を下げた
「急に言われて混乱している 2人の気持ちはわかった だが暫く考える時間をくれないか 今すぐ答えは出せない」
「義父上 いきなりで本当に申し訳ありません でも私達2人の気持ちを知って欲しくて急いでアランデールへ来ました
きっと賛成してくださると信じています」
「もし私が反対したらどうするつもりだ」
「どうしても理解して頂けないのならアランデール家を出てランと2人で暮らします
今日はここでお世話になるつもりでしたが宿を取ります 明日ランと王都へ戻ります」
ジュリアーノは一礼してランを抱き上げて部屋を出た
ブルワーノは2人が出ていったドアを見つめて黙ったまま動けなかった
玄関まで見送ってくれたのはマリエッタだけだった
「私はジュノがランちゃんが好きなんじゃないかと前々から思っていたわ
いつもは冷静なジュノがランちゃんを見つめる目は違ってたから
あれは恋する人に向ける目よ
ジュノ あなたようやく決心したのね おめでとう 褒めてあげるわ
ランちゃん ジュノでいいの?」
「はい お義兄様でないと駄目なんです」
「そう 私にできるのはブルワーノ様を説得することかしらね
可愛いひとり娘に好きな人ができたなんて余程ショックだったのよ
いきなりだし それに相手が息子同然に思っていたジュノだもの
少し時間はかかると思うけど気長に待っていなさい
案外直ぐかもしれないわよ
私に任せて
取り敢えず今日はランちゃんと帰りなさい」
「マリお義母様 ありがとう お父様を宜しくお願いします」
マリエッタは迎えた時と同じくオランジェを抱きしめた
2人を乗せた馬車はアランデール領の宿で1泊して王都を目指した




