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発見

私はあと、どれくらい生きられるのだろう。

高校3年生になった4月、体に異変が現れ始めた寺田姫奈は、医師に“難病”であると告げられた。

同じクラスで姫奈の3年間の片想い相手の竜蓮宗一郎との恋が進む中、病気も進行していく。

果たして姫奈は桜咲く卒業まで耐えることができるのか…?

 朝、目が覚めるとなんだか頭がぼやーっとしていた。


「ねぇ、お母さん。風邪ひいちゃったかも」


「あら!納戸の中に風邪薬があったと思うから後で持っていくわね!それまで部屋で寝てなさい」


「うん、ありがとう」


風邪を引くのなんて何年振りだろうか。


久しぶりだからか結構きつい。


頭も痛いしなんだか寒気もする。


でも、今日が土曜でよかった。学校を休むわけにはいかないから。


部屋に戻って布団に横になっていると、スマホの通知が鳴った。


『なー、国語の宿題見せて欲しいんだけど』


高校になって好きになった同じクラスの蓮王子宗一郎だ。


『いいよ』


宿題の写真を撮って『どーぞ』のメッセージと共に送信する。


すぐに既読がつき、『ありがと』と返信が来る。


「あら、宗一郎くん?」


「お、お母さん!?いつのまに、、、」


「寝てるかと思って静かに入ってきたのよ。薬、持ってきたから飲んじゃいなさい」


お母さんは私が薬を飲み終わるのを見届けると部屋から出ていった。


彼、宗一郎とは高校2年生の6月にある文化祭で少し話すようになった。


というのも、高校に入学した時から一目惚れをし、その性格のよさにさらに惚れ込んでいった姫奈が勇気を出してク


ラス企画を準備している時に話しかけにいったのである。


宗一郎は見た目もカッコよく、性格もいいことから女子にも男子にも人気だ。


なんなら下級生にはファンクラブまであるらしい。


それに比べて姫奈は容姿はいい方ではあるものの、日陰にいる美人、という感じである。


とりあえず早く治すために寝ようと横になり、明日は元気になっていることを願いながら丸一日眠った。



 翌日


すっきりした感覚で目覚めた姫奈はリビングに向かう。


「おはよう、お母さん、お父さん」


「あら、もう大丈夫なの?」


「姫奈が風邪とは珍しいなぁ。もう大丈夫なのかい?」


そう声をかけてくれる両親に、もう大丈夫、と返事をしながら食卓に座る。


「風邪が治ったばかりだから体にいい雑炊にしてみたの」


その後あたたかい雑炊を食べて日曜日は安静にしていた。


先週新学期が始まり高校3年生になった。


そのこともあり珍しく体調を崩したのだろう。


次の日登校すると、クラスの子達と次々と挨拶を交わす。


「姫、おっはよー!」


「千佳(ちか)ちゃん!おはよう」


「姫奈、おはよ」


「瑠花(るか)ちゃんも、おはよう!」


この2人とは入学した時から同じクラスのいわゆるいつメンというやつである。


「今日も我らが姫はクラスの人気者ですなぁ」


「そんなことないよ〜だって千佳ちゃんも瑠花ちゃんも朝来たら言われるよね?」


そう聞くと2人は頭を横に振り否定した。


「なわけないじゃん。姫と一緒のクラスになりたがってる子達だっていっぱいいるし」


「そうよ。隠れオタクしてる子達だっているし、実際このクラスにも2年の時姫と同じクラスになりたがってた


子、いるのよ?」


なんと、この自称壁の花、染島姫奈には隠れファンというものがいるらしい。


「おはよー!」


すると、出入り口の方から声がした。


「お、宗一郎じゃん。今日もイケメンですなぁ」


「ちょ、千佳ちゃん!」


クラス全体によく通る声で挨拶をしたのは姫奈の想い人、宗一郎だった。その後に続き宗一郎と仲のいい蘇芳


(すおう)と春樹(はるき)も挨拶をする。


この3人はこのクラスのイケメン三銃士と呼ばれており、少しヤンチャな感じの宗一郎とは反対の王子様系イ


ケメンで頭のいい春樹。


そして無口イケメンだと言われている蘇芳の3人で構成されている。


「うわっやば。このクラス顔面偏差値高すぎだろ」


「わかる。イケメン三銃士と凛ちゃん率いるザ・一軍女子そして一軍じゃないけど姫奈ちゃんたち3人組」


「金髪ギャルの凛ちゃんもいいけどおっとりふわふわ系の姫奈ちゃん、可愛いよなぁ」


そう、このクラスは顔面偏差値が高すぎて拝まれるほどだ。


実際、他クラスの子達が休み時間になるとこのクラスを見に来たりすることが多々ある。


各々ファンクラブがあったりするので、クラスの出入り口が塞がれることも…


「はーい、みんな席ついてーホームルーム始めるわよー」


手を叩き場の空気を正したのはこのクラスの担任である立花先生だ。


艶のある黒髪を綺麗にお団子に纏めメガネをかけているキリッとした美人だ。


「じゃー、今日の連絡をします」


そんなこんなで数日が過ぎた。


「けほっ」


風邪を引いた日から数日後の朝、朝から咳とお腹を壊していた。


「あら、大丈夫?何かいけないもの食べちゃったのかしら。病院に行ってみましょう?」


「そうだな、行ってこい。もしかしたら風邪を拗らせているのかもしれないからね。風邪をこじらせると厄介だ


から」


その日は平日だったが学校を休み病院に行った。


「そうですね、咳については風邪をぶり返しているのだと思います。お腹については周りの環境が変わって少し


ストレスを感じているのだと思います。特に問題ありませんので、それぞれに効くお薬処方しておきますね」


「ありがとうございます」


この時はこんな形で体調を崩すのは初めてだったのでそんなものか、と納得していた。


さらに数日後


「けほっ」


最近、よく咳が出る。


それに、痰も出るようになってきた。


健康体だった姫奈はあまり病気になったことがないので体調を崩すということはこういうものなのだろうか?と思っ


ていた。


「あらあら、咳が長引いてるみたいねぇ。痰も出ているようだし。今日病院に行ってみましょうか」


「わかった」


ということで午前中に病院に行くことになった。


「先生、お久しぶりです。最近この子ずっと咳してて、痰も出ているのですが、」


「ふむ、特に問題はないようですが、念のため細かい検査をしてみましょうか」


ということで細かい検査をしていくとのことで、色々な科に連れていかれ検査された。


丸一日どころか丸二日使い、やっと終わっていつもの先生のところに戻ってくると、別の先生がもう1人いた。


確かあの先生は、神経内科にいた先生だ。


「今から検査の結果をお伝えしたいと思います。ですがその前に、お母様だけでお話いいでしょうか?」


その言葉に若干動揺しながらも母だけを残してその部屋から出た。


しばらくして部屋の中から声をかけられたので戻ると、部屋に残っていたお母さんは真っ青な顔で、震え俯いてい


た。


「落ち着いて聞いてくださいね。…姫奈さん、あなたは今“ギラン・バレー症候群”という難病にかかっています。」


すると、隣にいた神経内科の先生が口を開いた。


「ギラン・バレー症候群についての説明は私からさせていただきます。」


その先生が言うには、ギラン・バレー症候群とは日本で年間10万人あたり1〜2人という非常に珍しい病気なのだと


いう。


主な症状としては力が入りづらくなったり手足が痺れたり感覚がわからなくなり、重症であれば呼吸筋の麻痺、自律


神経の障害により生命に関わる場合もあるのだそうだ。


だが死亡率は1%であり、多くの場合発症前1ヶ月以内に風邪症状や下痢といった感染症の症状が見られるという。


つまりここ数日の不調はこの初期段階だったというわけだ。2人の先生もこの段階で見つけれたのは本当に良かった


と言っている。


神経症状の発症から4週間以内に症状はピークになり、その後回復に向かっていくのだそうだ。だがそれも絶対の保


証はなく、罹った人数が少ないためまだ十分な情報がなく、実際に姫奈がどうなるのかはわからないと先生は言っ


た。


母は先に聞いたのであろう、今姫奈が聞かされた内容に特に反応するわけでもなく、この部屋に入ってきた時と同じ


ように俯いて震えていた。


それからは何を会話したかさえ覚えておらず、気づいた時には家に帰りつき自分の部屋でぼーっとしていた。


それからさらに数週間後


姫奈は毎日明るく過ごしていた。


最初の2、3日こそ食べ物すら食べる気力がなかったが、絶対に治らないわけじゃない、明るく元気に過ごしていた


方が病気もどこかに行ってくれるかもしれないと思うようになり、それ以来は以前にもまして笑顔を絶やさないよう


にした。


そして今は学校にいる。


「姫ー、ちょっと数学のノート貸してくんない?」


ぼーっとここ数週間を考えていた姫奈はそんな宗一郎の声に我に返った。


「うん!いいよ!」


そう、最近は席替えもして横の席になったからかよく喋ったりするようになった。


「ねー、告んないの?」


「ちょ、何言ってるの!?」


「そうよ姫が告ったら絶対行けると思うよ。だって宗一郎絶対姫のこと好きだし」


「瑠花ちゃんまで!」


宗一郎がこんな私のことを好きになるなんて絶対有り得ない。


だって、ノートを受け取ったあとも宗一郎は他クラスの女子の呼び出しに答えてついていってるし。


宗一郎と付き合えるなんて夢のまた夢だ。


でも、と思う。


「告ってもいいかもなぁ、」


と心の声が漏れていた。


「「絶対告れ!!!」」


それを聞き逃さなかった2人の声がぴったりとハモった。


(最後くらい、勇気を出してもいいかも。待って待ってまだ死ぬって決まったわけじゃないけど!)


そしてその日の放課後にはまた宗一郎が女子を振ったという情報が流れた。


そんなことがあってから、宗一郎と付き合っているという乙女の妄想をするようになった。


「でも…こんな私が振り回しちゃいけない」


だって私はいつか死ぬかもしれないのだから。そう、近いうちに。


宗一郎の隣に居ることができなくてもいいから、せめて一緒に卒業したい。


それでもやっぱり、宗一郎と付き合う夢を見ずにはいられないほどに大好きになってしまっていた。


そして月日が経ち、気づけば6月になって文化祭の準備期間になった。

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