貧乏冒険者のコソコソクッキングスープ
かつて伝説と呼ばれたドラゴン、“アグナ・ドレイヴ”がエリアボスとして君臨していた《焦熱の荒野》。昨日、その名を轟かす最強ギルド《アルカ・セラフィム》によって討伐された。
「よし。拾いに行くぞ、骨を」
勝利に喜び去って行く最強ギルド一行をこっそり眺めながら、テンカはクロエに小声で言った。
この骨、実は本体から少し離れた場所にランダムで落ちるため、討伐者が見逃すことがある。特にレイド後のどさくさで処理しきれないものが、まれに残るのだ。
「ーーあった。これが、“アグナの尾骨”だ!」
テンカたちは骨は回収すると、そそくさとその場を後にした。
翌日、岩の上に置かれた《アグナの尾骨》は、赤熱したまま湯気を立てていた。討伐されて一晩経ったというのに、まだ温かい。
「クロエ、これをスープにするぞ」
「はーい」
本当はアグナの肉の方が食べたかったクロエは弱々しく頷いた。
クロエは調理鍋に聖水を注ぎ、尾骨を沈めた瞬間、空間が熱で揺らめいた。鍋の縁が赤く染まり、香ばしい炎の香りが立ち上る。
「なんか、うまそうな匂いしてきたな」
「でもこれ魔力が濃すぎて、ちょっと酔いそう」
5分後。
テンカは骨から染み出した紅色のスープを木椀に注ぎ、一口すすった。
「ーーッ! 火が、舌の上で踊ってる! しかもこれ、一時的に火属性耐性を上げる効果がある!」
テンカは自分のステータス画面わクロエに興奮気味に見せた。
試しにクロエも飲んでみると、「炎耐性+20%」「体力自然回復(微)」のバフが数分間付与された。
「これ戦闘前に飲めば、炎エリアの探索が超楽になるぞ!」
こうして、テンカは宝石料理に匹敵する創作料理《アグナの尾骨スープ》を手に入れたのだった。




