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Chevalier『シュバリエ』〜約束の騎士達の物語〜  作者: JACK・OH・WANTAN
第八章:砂漠の医者(ドクター)編
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第57話:恋敵

「ダーリン!珈琲淹れたよ!」

「あ、ありがとう。」

「ダーリン!貴方の洗濯物干しておくね!」

「ぐぬぬぬ・・・!」


船内を走り回りながら僕の世話をするヴィーナにシルヴァの表情はどんどん険しくなっていく。


なんでこんなことになったのだろうか?そう思いつつカイとエルデに助けを求めるが二人共シルヴァの剣幕に怖気付いたのか見て見ぬふりをしていた。


「ダーリン!ご飯作るけど何が良い?」

「アンタねぇ!」


そして・・・エプロンを付けてキッチンに立ったヴィーナの姿を見て遂にシルヴァの怒りは頂点に達した。


「さっきから何なのよ!シエルの事をダーリンダーリンって馴れ馴れしく!いい加減にしなさいよ!」

「何よ?さっきも言ったけど貴方はダーリンの何なのよ?所詮仲間なのになんでそうイライラしてるのよ?」

「ア、アタシは・・・!」


喧嘩はやめてくれよ。そう思いながら二人を止めようとした時、シルヴァが次に放った言葉に耳を疑うことになる。


「アタシもシエルのことが好きなのよ!!」


辺りがしんと静まり返り、僕は動きを止めるとヴィーナやカイ、エルデは顔を青くし、ルーチェだけは何処か面白げに笑みを浮かべていた。


「あっ!しまっ!」


シルヴァ本人も言うつもりが無かったのか思わず自身の口を塞いで赤面する。


ごめん。シルヴァが僕の事が好きっていうのは・・・。


「違うの!シエル!ア、アタシはシエルが知らない女の子に絡まれてるから心配で・・・」

「ふぅーん。じゃあそれってさっきの言葉は真実ってことでいいのよね?」

「うぐっ!?」


ヴィーナの鋭い言葉に彼女は冷や汗をかきはじめる。


「あの、ごめん・・・。」

「シエル。どうするんだ?オレ達はシルヴァと付き合っても気にしねぇぞ。」

「いや、え?付き合うって何?」


僕の言葉に皆はまたも静まり返るとカイとエルデの二人が直ぐに沈黙を破った。


「「はぁぁ!?」」

「え?何?どうしたの?二人共。」


突然胸ぐらを掴んできた男組二人に戸惑う。・・・え?なんか変なこと言った?


「テメェ何処までクソ鈍感なんだよ!!頭にウジ虫でも沸いてんのかァ?」

「なんで今の今までシルヴァの行動に気付かねぇんだよ!鈍感どころの話じゃねぇぞ!」

「ええ・・・何を言ってるのか分からないよ。」


カイとエルデが何故、怒っているのか理解出来ず困惑する。そもそもヴィーナは僕の事をダーリンと呼んでいるのもよく分からないしシルヴァも何故、怒っているのか分からない。さっきの”好き”って意味も”仲間として好き”って意味で言ったんじゃないの?


「シエル君。」


するとルーチェがいつもより冷たい声で呼びかけてくる。え?何?ルーチェもなんか怖い。


「貴方。シルヴァちゃんが今までどんな思いをしてきたのか分かってないようね?男はね察しが悪すぎると嫌われるのよ?」

「・・・ええ。」

「シエル。アタシのこと嫌いなの?」

「わわっ!そんなことないよ!泣かないで!」


ルーチェに威圧されながら涙目になるシルヴァを慌てて慰める。


「はぁぁ~ダーリン優しい!流石、アタシのダーリン!早く結婚したいわ~」

「け、結婚!?ちょっと待ってよ!それって・・・プロポーズ!?」

「「なんでそれには敏感なんだよ!!」」


「結婚」という言葉に赤くなった僕を見てカイとエルデはほぼ同時にそう声を発する。なんだ?皆何を言っているのか分からない。なんだよ鈍感とか敏感とか・・・付き合うとか。


「どうすんだルーチェ。シルヴァもこの状態だし俺達じゃもう対応できねぇぞ?」

「エルデの言う通りだ。おまけに渦中のコイツがクソボケだしよ。」


エルデとカイはルーチェに顔を向けてこちらを指差す。クソボケって僕のこと!?どこが!?


「仕方ないわ。ミネルバが迎えに来るまでの辛抱ね。」

「僕としては早く来て欲しいんだけどな・・・。」


ルーチェに苦笑しながら僕はこちらに笑みを浮かべるヴィーナと対照的に不貞腐れるシルヴァに目を向けるのだった。


◇◇◇


「はい!ダーリン!あーん!」

「そ、そこまでしなくても一人で食べれるよ。」


ルーチェ達の望みも虚しく結局日が暮れてもミネルバの船が追い付くことはなかった。


そんなことも知らないヴィーナは僕に手作りのオムライスを食べさせてくるが向かい側に座っているシルヴァはずっと黙って黙々と林檎を丸かじりしていた。


ダメだ。夕食までに声を掛けたけど無視されるしヴィーナというよりかこれ僕に怒ってるよね?何か悪いことしたかな?だとしたら謝りたいんだけど。


「あの・・・ごめんなさい。シルヴァ?」


恐る恐る声をかけるが彼女からは返事がないどころか目を合わせることすらしてくれない。


あぅぅ・・・皆。


そう思ってカイ達に助けを求めて彼らに顔を向けるが「自分でやったことだろ?なんとかしろ」と答えんばかりの視線を向けていた。


「ダーリン?どうしたの?」

「あ、いや、なんでも・・・ないよ。」

「そう?じゃああーん」

「あ、あははは・・・」


苦笑しながらオムライスの乗ったスプーンを僕の口へ運んでくるヴィーナに身を委ねる。


「ご馳走様!」


するとシルヴァがガシャンという大きな音を立てながら立ち上がると颯爽とした足取りで食器を洗い場に持っていく。


そんな彼女の態度にカイとエルデは互いに顔を見合わせて怖がった表情を浮かべる中、ルーチェは冷静な表情で紅茶を啜っていた。このまま時間が解決してくれれば・・・


そう願った矢先。


「ねぇ・・・そんなに嫌ならダーリンの団を抜けたらどうなの?」


自室へ立ち去ろうとしたシルヴァにヴィーナがそう言い放った。ちょっと!!何してるの!?


「アンタは所詮、ダーリンの仲間よね?素直に好きな気持ちを出すことなく胸に留めている。それじゃあアタシに取られても・・・文句は出来ないわよね?」


勝ち誇った笑みをヴィーナが浮かべるとシルヴァが彼女に振り返り、今まで見せたことがない怒りの表情を浮かべながら言った。


「黙ってよ・・・団の仲間ですらないアンタこそ偉そうに!アタシから・・・アタシ達から・・・シエルを盗らないでよッ!」


その言葉にヴィーナは一瞬、目を丸くするも直ぐに微笑みを取り戻す。


「思っていたより威勢がいいのね・・・いいわ!」


ヴィーナは立ち上がると腰に装備していた剣を手にする。


「甲板に出なさい!どっちがダーリンに相応しい女か・・・アタシのライバルに相応しいか試してあげるわ!」

「ヴィーナ?」


僕はヴィーナを見上げた瞬間、かつて出会ってきた十二神騎と同じ殺気を感じる。・・・なんだ!?この感覚は!!いや、これは・・・アレスやミネルバさん。ユピテルから感じたものと同じ殺気だ!


「この感覚・・・化けの皮が剥がれたか。」

「上等だァ!コイツも一応十二神騎なんだからよ!」


同じく殺気を感じたカイとエルデも立ち上がって身構えたがルーチェが彼らを直ぐに制止した。


「待って。」

「どけ!コイツらを束でやりゃあ勝てるぞ!」

「確かにそうだけどこれはシルヴァちゃんとヴィーナちゃんの戦いよ。」


ルーチェに続くようにシルヴァもまた彼らに言った。


「二人共。手は出さないで!この子は・・・私一人で倒すわ!」

「フフッ。いい心がけね!じゃあアタシとアンタとの戦いってのを始めようよ!」


高笑いしたヴィーナは直ぐに甲板を出るとシルヴァもまた弓を手にするとこちらに振る変えることも無く彼女を追って甲板へ出ていくのだった。


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