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一党追放  作者: 藤咲晃
終章 さよなら
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理解する者

 揺れる馬車に乗り、ユキナはアホ毛を揺らしながら空を眺めていた。

 冒険者一党が三組みも相乗りし、少々手狭な空間で馬車が揺れる度にレノの膝がユキナの胸部に当たる。


「わ、悪いな」


 頬を赤らめ。しかしだらしなく鼻の下を伸ばしたレノにマシュの仲間の一人──燃えるような赤髪のエルデリカが鋭く睨む。


「鼻の下を伸ばしてるじゃないよ変態」


 マシュが率いる一党は全員女性で全員がレノを睨んでいた。


「わ、わざとじゃないんだよ。だいたい馬車に十人も乗るってのは結構厳しいんだぞ!」


 手狭で窮屈な馬車の中、揺れれば事故も起こると理解していたユキナは特に気にした素振りも見せず窓から空に浮かぶ【楽園】を見上げるばかり。

 そんなユキナに気が触ったのかエルデリカが、今度はユキナを睨む。


「おい欠陥女、あんたも何か言ってやったらどうだい?」


 エルデリカの罵声にレノが睨み返し、マシュが怒鳴り声を張り上げた。


「エルデリカ!」


 強く怒鳴られたエルデリカはばつの悪そうな表情を浮かべ、不貞腐れるようにユキナから顔を晒す。

 するとマシュは申し訳無さそうな表情で、


「ごめんなさいね。ウチのエルデリカが失礼な態度を」


「別にいい」


 無表情で涼やかな瞳で返すユキナに、マシュは一瞬困惑を浮かべるがすぐに態度を改め微笑む。

 さっきのやり取りで悪くなった空気の中、クライアンが陽気に懐かしむように語り出した。

 

「マシュのメンバーはどうにも気が強いなぁ。……そういえばユキナとこうして馬車に乗り合わせるのは久しぶりじゃないか?」


「ん。三ヶ月振り」


 レノと組むよりも以前にユキナは二人の一党に一日だけ所属していたことが有った。

 特に親しくなった記憶も思い出もないが、世話になった一党相手にユキナは小さく相槌を打って見せる。

 ユキナの隣でレノが、


「……つまり俺と組む前の話しか。今更ユキナを誘ってもダメだからな?」


 はっきりと二人に忠告する。

 そんな彼にクライアンは肩を竦め、マシュが優しげな笑みを浮かべた。


「そりゃあ一度は追放したんだから誘わないさ。けどオレは兎も角マシュはどうかなぁ」


「もうウチは四人よ。それにエルデリカとシオンは……あぁ思い出しただけで吐気がっ」


 ユキナが生み出した魔物の斬殺劇を思い出したマシュは気持ち悪そうに口元を抑え、同様に思い出してしまったのかエルデリカとシオンが顔面蒼白で吐気を堪えていた。

 そんな三人にユキナのアホ毛が申し訳なさそうに萎み、


「その節はごめんなさい」


 彼女等に小さく頭を下げた。

 そんなユキナに一人、栗色の髪に琥珀色で大きな瞳でユキナを見つめる少女──ポリシュカが尋ねる。

 

「そういえば、あなたが素早く魔物を討伐できるってエルデリカから聴いたけど……魔力も使わずに一体どうやって?」


 ポリシュカの純粋な質問にユキナを除いた面々が苦笑を浮かべる中、当人はアホ毛を揺らしながら身振りと手振りを交えながら答える。


「シュッと行ってズババッ」


 彼女の感覚頼りの説明にレノは、それじゃあ誰も理解できないだろと言いたげな眼差しを向けると。


「なるほど! 脚に無駄な力を入れず踏込みのタイミングで呼吸術を合わせつつ速度で足りない筋力を補うのね!」


 理解して眼を輝かせるポリシュカに誰しもが唖然とする中、ユキナだけは何度も頷き嬉しそうにアホ毛を揺らすのだった。

次回は12時に更新予定!

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