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一党追放  作者: 藤咲晃
四章 海底に潜む謎の生物
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海底に棲まう化物

 太陽の光が照らし、船の影が差す海中。

 ユキナは辺りを見渡した。

 磯岩と潮の流れが有るばかりで肝心の生物の姿形が見えない。

 生物の死骸さえも見当たらない様子にユキナは小首を傾げる。

 そして彼女は大きく水中で息を吸い込んだ。

 水中で呼吸。なんとも不思議な感覚にユキナのアホ毛が楽しげに揺れる。

 不思議な感覚といえば水避けの指輪の効果もそうだ。

 海中に居て衣服が濡れないが、しっかりと身体には水圧と水の抵抗を感じるなんとも不思議な感覚がユキナの全身を包む。


 ユキナは試しに剣を引き抜く。

 一振り、二振りと軽く振り回し、しっかりと水の抵抗と重みで剣速は愚か身体の鈍い動きに息が漏れる。


 地上と違って俊足に動けない。ここは人にとって過酷な水中だと頭の中に認識を叩き込む。

 そうしてる間にユキナの背後にレノが近寄る。


「こら! 一人で勝手に突っ込むじゃない!」


 少々ご立腹な様子だ。


「ごめん……でも周りに何も居ないよ」


「……変だな。普通魚一匹ぐらいは居るだろう? そういえば今朝は普通に水揚げされてたんだよな」


「それなら魚は居るはず?」


 しかし何度も周囲を見渡せども魚の姿は見えない。

 

「……深く潜ってみる」


「そうだな。……雷と炎は使えないか」


 海中で雷魔法を使用しようものなら術者ごと感電してしまうだろう。

 幾ら水避けの指輪を付けているとはいえ、危険な試みは避けたいところだ。


「うん。ビリビリで危険」


「自滅は笑えないからなぁ。ま、今は生物の発見が最優先だな」

 

 二人は早速海底に向かって潜り始める。

 磯と海藻が波に揺れる様子を観察しながら海底に進む。

 しばらく潜り、日の光が薄れた海底で二人は思わず動きを止めた。

 海底の底に金色の光を放つ二つの瞳が見える。

 そして口の様な穴から浮上する生物の骨にレノは眉を顰める。

 大小様々な生物の骨。しかし、鯨程の大きさの骸まで浮かぶ。

 

「……やべえかもな」


「ん」


 嫌な汗が二人の額から流れる。

 そして二人は同時に下を見た。

 よく見れば口の様な穴には、鋭く鋭利な牙が生え並んでいた。

 金色の光を発する瞳は爬虫類特有の縦線が入った瞳だ。

 明らかに魔物の類いだ。それも巨大なサイズの魔物が海底に居る。

 魔物はユキナとレノを凝視すると巨大な腕の様な物を伸ばす。

 人の様な5本の指先と鋭利な爪が二人の足元まで迫る。

 ユキナとレノは同時に上昇するように泳ぎ始めた。

 追い掛ける2本の腕の様な物が迫る。


「海に人の腕の様なもんを持つ魔物なんて聞いたことねえぞ!?」


 ユキナはこれまで三頭首の犬や竜とは遭遇したことが有るが、海底に潜む魔物とははじめてだった。

 何よりも心の底から溢れる恐怖に、アレと戦おうなど戦意すら湧かない始末。


「……あんなのはじめて。恐い」


 二人は迫る腕から難を逃れ、海底に顔を向けた。

 すると魔物は両腕を動かしていた。

 それはまるで人が水中で海面に向けて浮き上がるように。

 海底から浮かび上がる魔物の姿に二人は驚愕のあまり動きを止めてしまう。

 そして同時に海底に潜む魔物の全容が視界に映り込んだ。

 人と同じ体格と骨格。違いがあるとすればそれは巨大で何もかもが遥かに太い。

 更に身体の全身を鋭い棘が覆っていた。


「……なにこれ?」


「巨人か?」


 訳の分からない魔物に、二人は船を目指して泳ぐ。

 幸い巨体なせいか、魔物の動きは酷く鈍重だ。

 これなら逃げ切れる。そうユキナが考えた瞬間。

 二人の間を光の柱が駆け抜けた。


 恐る恐る魔物に目を向ければ、口元から煙りを吐き出している姿が映り込む。

 何らかの魔法を攻撃手段として放ったが、幸いな事にはずれた。

 巨大な魔物が与える衝撃と恐怖がユキナとレノの心の底から溢れる。

 故に二人は全力で船に向かって泳いだ。

 そして錨を足場に船に乗り込むや否や。


「急いで船を出してくれ!」


 レノの叫びに船員たちが訝しむ。


「……大きい魔物がピカッ! って何かを放った」


「ピカッ! まさか海中から突然発生した光の柱か?」


「うん」


 ユキナが頷くと。海面が激しく揺れ出す。

 船体の右側面の海面から伸ばされた腕に船長が叫ぶ。


「錨を上げ帆を張れぇぇぇ!!」


 焦りと恐怖を滲ませた船長の指示に、船員は大慌てで動き出す。

 総出で錨を引き上げ帆を張り、帆に風属性の魔法を放つことで促進力を与える。

 受けた風によって海面を移動する船の後方を巨大な魔物の頭部が見つめていた。


「あんなの魔物知らないぞ!?」


「新種か!!」


「二人は詳しい話しを頼む」


 浮き足立つ船員の声に二人はただ頷き、極度の疲労と精神的負担の影響で甲板に座り込むのだった。

 二人は一先ず借りた指輪を返却し、見た物を全てを話した。

 二人の話しに驚く船員、そして報告を聞き付けた生物調査学と冒険者ギルドは魔物に対して緊急クエストを発令。

 こうしてアスガルの海域で発見された謎の巨大魔物に対し討伐隊を編成されたのだが、既に魔物の姿は何処にも無かったという。


 奴は何処から来たのか、何処を寝床にしているのかさえ詳細は明らかにならず。

 奴の目撃された地点の海底付近では奴が捕食したと思われる多種多様の骨が発見され、食い散らかされた磯岩も発見された事から選り好みしない食性ということだけが判明したのだった。

 その暴食のような食性からグラトニーと命令されることとなった。

 

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