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バカ勇者(♀)とロリ巨乳魔王  作者: あめふる
魔界で暮らそう!
23/34

電池切れ


 レストランを後にすると、魔術師は落ち込んだ。これみよがしに落ち込み、後悔の念に苛まされている。

 買い物の続きをしたい所だったが、とりあえずは休憩だ。天井まで吹き抜けとなっている広場に置かれた、休憩スペースのソファに、対面する形で2人それぞれで腰かけて、元気のない魔術師の様子を伺う事にする。

 我の隣には、当然のように勇者が座り、正面にはリリと魔術師が座っている。


「ま、魔術師は、どうしたのだ?」

「ご飯を食べすぎて、後悔しているんだと思う。ロゼは、体重とかにうるさいんだ」


 我の質問に、勇者が答えてくれた。

 体重……。そういえば、ヘルシーなご飯が食べたそうだったな。結局、多数決でヘルシーとは無縁の焼肉丼になった訳だが、しかし魔術師の食べっぷりからは、そんなの気にしているようには見えなかった。だから、間違いであろう。


「ええ、その通りよ!」


 あっていた。では、あの食べっぷりは一体どういう事なのだろうか。


「……そ、その割には、大盛にしていたが……では、何故少なめにしなかったのだ?」

「美味しそうだったからよ!あんなに美味しそうな物を前にして、我慢できる!?」

「す、すまん」


 恐る恐る尋ねた我に、魔術師は力説した。気持ちは、分かる。確かに、あんなに美味しそうな焼肉丼を前にしたら、我慢をする事など不可能である。

 だが、あんなに幸せそうな顔をして食べておいて、後になってこの絶望の表情の落差は、見ていて忍びない。

 どうにかしてやれる方法はないだろうか。


「パパー。ボウリングしたい!」

「お、いいぞ。三階にある、屋内スポーツ施設、『スポーツしようぜ!』略して『スポゼ』は、ボウリングから、バッティングセンターに、アスレチックなどをして遊べる、この辺りで一番の屋内スポーツ施設だ。入場料さえ払えば、あとはへとへとになるまで遊べて、一日の食事分以上のエネルギーを消費する事ができるし、夜はぐっすり間違いなしだな!」


 我の横を、子供連れの男が通り過ぎた。子供は肩車してやり、しっかりと父親の角を掴んで、まるで乗り物気分のようだ。

 しかし、問題はそこではない。今男が、まるで我に向けるように細やかに説明してくれた、スポゼの話は興味深い。スポゼは、CMなどでもよく見かけるし、入った事はないが、存在はよく知っている。

 子供連れの男も言っていたが、そこなら食べた分をエネルギーとして消費する事ができるし、オマケに色々と遊べて楽しそう。


「魔術師!スポゼに行くぞ!」


 我はソファから立ち上がると、魔術師に向かってそう言った。


「す、スポゼ?」

「屋内スポーツ施設です。恐らく、そこで遊んで、食べた分のエネルギーを消費しようというお考えですね。さすがは、魔王様です」

「くくく」


 我はリリに褒められて、鼻を高くする。偶然通りかかった親子よ、ありがとう。おかげで、リリに褒めてもらえたぞ。


「いや、でもお金がかかるんでしょ……?」

「大丈夫だ!リリが払ってくれるからな!」


 不安げな魔術師をよそに、我はそう言い放ってやった。リリがいれば、金の心配はない。金がなくとも、カードやらなにやらで払ってくれるから、安心だ。


「魔王様。勝手に決めないでください」

「そ、そうよ、魔王。勝手にそんなの、決めたらダメよ」

「ですが、全員分私が払うので、ご安心ください」

「結局払ってくれるのね……じゃなくて、いいわよ、そんなの!私のカロリーのために、お金をかける必要はないわ。帰ったら、しっかりと運動するから大丈夫よ」

「そう言いながら、ロゼは運動をサボるよね。帰るとゴロゴロして、お皿洗いを私にやらせて、自分はテレビを見ながら笑ってる。テレビで見て参考にして、やろうと決めていたお風呂上がりのストレッチも、一日だけやって、もうやってない」

「う」


 魔術師は、勇者に暴露されて、俯いた。


「安心するが良い、魔術師よ。我と一緒にいる限り、貴様に安寧の時はないからな。さぁ、行くぞ!」


 我は魔術師の手を取り、立ち上がらせた。そしてそのまま魔術師の手を引いて、スポゼへと向かう事とする。

 スポゼでは、ボウリングに、クライミングに、バッティングセンターでのバッティングを楽しみ、我らはたっぷりと汗をかいた。本当に、休む暇もなく楽しみ、過ぎゆく時間もあっという間であった。

 そして我は、電池が切れた。寝不足だった事も相まって、元々残っていた体力は、少なかったのだ。もう、身体が動かない。


「あー……」


 ショッピングモールの、屋外に設置されているベンチに座り、天を仰ぐ。隣には、同じく力尽きた魔術師も座っていて、一緒になって天を仰いでいる。


「な、中々、いい勝負であったな、魔術師よ。勇者と同じく、貴様も中々やるようだな」

「と、当然よ。もう、腕も足もぷるぷる震えてて、言う事きかないけど、私だってこれでも一応、勇者の仲間なんだから……」


 我も、同じだ。はしゃいで遊びすぎ、もう腕が言う事を聞かない。我は元々、インドア派の、現代っ子だ。そんな現代っ子を、いきなりスポーツ施設に放り込み、全力で遊ばせるとかどうかしているぞ。

 心の中で文句を言うが、しかしよくよく考えれば、スポゼに行こうと言い出したのは我であった。

 最初は、楽しそうだと思って入り、実際楽しかった。しかし終わってみれば、訪れた事を後悔し、今すぐ家に帰りたい気分になってしまったぞ。なんと恐ろしい施設なのだろうか。周りにいた家族連れは、最初から最後まで楽しそうにしていたが、一体どれだけの体力を持っていれば、最後まで楽しめると言うのだ。


「魔王様は、もう少し体力をおつけください」

「ロゼもだよ。もっと、運動しないとダメ。今日から一緒に、ジョギングする?」


 そこへ戻って来たリリと勇者に、我と魔術師はそれぞれ、軽く怒られてしまった。2人も座れるように、我と魔術師は身体をくっつけ、スペースを確保する。と、我の隣に、リリが。魔術師の隣に、勇者が座って、ちと窮屈ではあるが、全員仲良く座る事ができたぞ。

 一緒に遊んでいたはずの2人は、平気な様子だ。リリは冷静に遊んでいたので、平気なのは分かる。しかし勇者は我と一緒に、相当無茶な運動を続けていた。それなのに、疲れた様子が一切ない。さすがは勇者であると、我は感心させられたぞ。

 そんな、平気そうな勇者の手には、ペットボトルが握られていて、それを我と魔術師、それぞれに手渡してくれた。2人は、飲み物を買いに行ってくれていたのだ。渡されたのは、我の大好物である、炭酸のジュースだった。

 早速キャップを回し、喉に流し込むぞ。炭酸が弾け、全身に染み渡り、我の渇きを癒してくれる。あっという間に半分ほどを飲み干し、口を離した。


「ぷはぁ!生き返るな!」

「アティ。美味しそうだから、一口頂戴。私のも、一口あげるから」

「うむ?良いだろう」


 我は勇者に自然とそう言われ、今口をつけたペットボトルを手渡した。代わりに、勇者からもペットボトルを受け取る。こちらも既に開封済みだが、よく見れば我のと同じ飲み物であった。


「勇者よ。これ、我と同じ飲み物──うわっ、うわっ、うわわぁ……」


 勇者は、我が渡したペットボトルの口を、舐めていた。真顔で、美味しそうに、ペロペロしている。我はそれを見て、引いた。さすがに気持ちが悪くて、鳥肌がたったぞ。


「はい、返すね」

「い、いらん……」


 肝心の飲み物には手をつけず、ペットボトルの口をペロペロ嘗め回しただけの勇者が、ペットボトルを返そうとしてきたが、我は受け取りを拒否した。代わりに、今手にしているこのペットボトルをいただいておこうかと考えたが、コレを寄越して来たのは、勇者である。同じように、ペロペロ嘗め回した後なのではないだろうか。

 喉、まだ渇いているのに、これでは喉を潤す事ができん。


「はい、魔王。私のを、一緒に飲みましょう」

「良いのか……?」


 魔術師も、喉が渇いているはずだ。それなのに、そう言いながら飲みかけのペットボトルを渡してきてくれて、我は遠慮せずにはいられない。


「良いのよ。あんな気持ち悪い事されたペットボトルを見たら、飲みたくないでしょう?だから、一緒に飲みましょ」

「ありがとう……」


 魔術師は、怖いけど優しいな。我は感謝しつつ、ペットボトルに口をつけ、喉の渇きを癒した。中身はお茶で、我の趣味とは合わなかったが、とても美味しく感じたのは、きっと魔術師の優しさのおかげだな。


「私のも、どうぞ」


 リリもそう言って自分のペットボトルを手渡してくれるが、それは我の好きな、炭酸飲料であった。ただし、炭酸の薄い、薬のような味のする、栄養ドリンクだ。炭酸好きの我だが、それはあまり好きではない。


「あ、ありがとう」


 一応、受け取って飲んでみたが、やはり不味かった。魔術師がくれたお茶のように、優しさ効果で美味しくなると思ったのだが、そんな事はなかった。つまり、お茶が美味しく感じたのは、ただ単に喉が渇いていたからのようである。

 我は、一口飲んだだけで、無言でそれをリリに返したぞ。


「むっすー」

「な、なんだ?どうした、勇者ふてくされた顔をして」

「だって、アティが私のペットボトルだけ、飲んでくれないから」

「あんたが悪いんでしょ。あんな気持ち悪い事されたら、誰だって飲みたくなくなるわ。飲んでほしかったら、普通にしなさいよ」

「それじゃあ、私のアティに対する愛が足りないと思われるかと思って。だから、愛情をこめて、ペロペロしたんだよっ」

「そんな愛情はいらん!」


 我は、全力でそう訴えた。喉が渇いているのに、ペットボトルの口をペロペロと嘗め回して、飲みにくくする。そんな愛情は、ない方がマシである。

 しかし、今日一日を通じて思ったが、2人は魔界での生活に、よく馴染んでくれているようで、安心したぞ。最初のころのように、もう道行く魔族に対して、警戒する事もなくなったからな。このまま順調に、魔界での生活に馴染んでもらえれば、我は嬉しいぞ。


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