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バカ勇者(♀)とロリ巨乳魔王  作者: あめふる
魔王軍に入ろう!
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大好きだった叔父


「……ロゼ。私は、ロゼと一緒に、魔王の下で働きたい。さっき、リリさんが言った通り、スパイとして潜り込んでいると、割り切ればいい。そうすれば、人類を裏切ったことにはならない」


 勇者は、我から離れると、魔術師の説得に取り掛かった。しかし、魔術師はそんな勇者にすら、牙をむき、杖を構えた。


「それが、バカな事だっていうのよ!最初から、スパイだと知っていて雇うはずがない!私たちはきっと、後々隙を見て、処分される!私は魔族を信用しない!信用できない!それにあんたも、私の気持ちを知っているはずよね!?いくら目の前にいる魔王が、小さく可愛くて優しいからと言って、過去に魔族によって処分された人間の事は、なくならない!私の……私の大好きな叔父だって、もう帰っては来ないのよ!」

「叔父……?」

「ロゼの叔父さんは、勇者として魔王城に派遣された。それは、十年前の事」


 我が首を傾げると、答えてくれたのは勇者だった。十年前となると、我が魔王になる前の事なので、我は知らない。


「その通り。そして私の叔父は、帰ってこなかった。家族を故郷に残し、叔母さんは毎日泣いていた……!それをしたのは、貴女達魔族!私は、魔族を……魔王を絶対に許さない!今回は勇者のせいで出鼻をくじかれたけど、次は必ず、貴女を倒して見せる」


 せっかく、友達になれると思ったのだが、魔術師のその目は、我を憎む者の目をしていた。他の、人間たちと変わらない。我は、人間にその目を向けられるのは、慣れている。だから、どうという事はない。ないはずなのだが……このタイミングで、魔術師にそんな目を向けられるのは、凄く辛い。


「──くっくっく。良いだろう。我は、いつでもこの城で、待っている。また、出直してくるが良い」

「……魔王様」

「アティ」

「はっ。う、うぐ。ち、違うぞ。コレは、違うのだ」


 リリと、勇者に指摘されて気づいたが、我は泣いていた。目から自然とあふれ出た涙が、頬を伝って床に落ち、それまで気づかなかった。慌てて袖で拭うが、しかし止まらない。


「ぐすっ。う、うぅ」

「……泣いても、無駄よ。次会った時は、敵同士。その時は容赦しないから、覚悟して」


 魔術師は、そう言って我に再び、背を向けた。


「……深刻なお話中に、申し訳ないんスけど、魔術師ロゼット様の叔父と言ったら、マクスウェル様の事っスよね?」


 遠慮がちに手をあげ、そう発言したのはウィンだ。どうやら、魔術師の叔父とやらを、知っているらしい。


「そうよ。数々の武勇を誇る、私が大好きだった叔父。彼は、間違いなく王国最強の騎士だった。だから、魔王討伐の勇者に選ばれ、そしてその任務を全うし、帰らぬ人となった。とても寡黙で、強い人だったわ」

「……」


 ウィンは、リモコンを拾うと、黙ってテレビをつけた。そして、チャンネルを回し、とある音楽専門チャンネルで、それを止める。

 そこに映っているのは、今魔界で大ヒット中の、人間ラッパーDJマックスの、新曲についてのインタビューだ。そこに映る人間は、サンタのように顔に白いひげを生やし、サングラスをかけた、中年の男だ。指にはいくつも指輪をはめ、首から下げているネックレスもたくさんで、高そうな腕時計もつけている。中年にあるまじき、派手なデザインのティーシャツを身に着けているが、やたらガタイがよくて、そのシャツが小さいのか、DJマックスが大きすぎるのか、窮屈そうである。


『──この曲は、オレの想いを乗せた歌だ。歌詞にはオレの魂と、本音を乗せて綴った。今の心境は、やり遂げたって感じだ。いや、生まれ変わったって言った方が、近いかもしれない。何故ならこの歌は、過去の自分に対する惜別の歌だからだ。聞いてくれ。──さらば、地獄の日々よ』


 そうして歌い始めたDJマックスだが、すぐにテレビが消された。それをしたのは、ウィンからリモコンを奪った、魔術師である。


「……今の、マックスおじさんだね。ロゼの、叔父の」


 勇者が、そう言った。

 DJマックスが、行方不明になった、魔術師の叔父……?確かに、我が魔王城を襲撃にしに来たものは、大概は魔界に住み着くとか、普通にお土産を持って帰るとかで、危害が加えられる事はほとんどない。たまに、本当に大真面目に戦って勝敗を決するが、しかし殺したりは論外で、最後はちゃんと仲直りするからな。

 だから、帰ってこないという事は、魔界に定住したか、帰る途中で何かがあったとしか、考えられないのだ。彼も、その例に漏れず、魔界に定住した類であったのなら、納得である。


「DJマックス……マクスウェル。なるほど、DJマックス様は、魔術師様の叔父様でしたか。彼は、十年前に確かにこのお城を訪れていますが、罠にはまり、抜け出せなくなると、魔界に住み着くようになり、今ではDJマックスとして名をはせる、ミュージシャンとなっています。他にも、魔界に永住したがり、実際そうする人間は大勢いますよ」


 リリに関しては、若くして当時の魔王の手伝いをよくしていたので、その時の事情を知っていたのだろう。


「よかったね、ロゼ。マックスおじさん、生きてたよ」

「よか……ないわよ、ばかぁ!DJマックスって何!?私は一体、何のために怒ってたの!?」

「DJマックス様は、人々を恨んでいたようです。特に、奥様からはDVを受けていたと、よく口にしています」

「歌も、人間に対する恨み辛みを綴ったヤツが多いっスね……うちも、マクスウェル様が生きていて、しかもこんな歌を歌っているのをみて、始めは目を疑ったっスよ。でも、迫力があって、良い歌ばっかなんで、実はうち、ファンなんスよ」


 口々に言った、リリとウィンの台詞に、魔術師は固まった。本当に信じられない物を目にしてしまったような、そんな顔をしている。

 そして徐に我の方を見ると、その表情を歪めた。


「ぐすっ……?」

「ま、魔王、ごめんね!謝るから泣かないで!叔父さん生きてたから、貴女に対する怒りは吹っ飛んだわ!むしろ、叔父さんに対する殺意がわいてきたから、だから、泣かないで!元々、本心では魔王が嫌いとか全く思ってなかったし、むしろ私も勇者と同じく可愛いと思っていたから、お願い、とにかく泣かないで!」

「お、おおう」


 魔術師は、慌てて我に謝罪すると、我を抱きしめて来た。とても、暖かな抱擁だ。ただ、ちと混乱した様子の魔術師は、力加減が上手くできないのか、少し痛かった。しかし、良かった。我は、魔術師に嫌われてしまったかと思ったが、そうではないようで、安心する。


「で、では、ぐすっ……勇者と一緒に、我の下で働いてくれるか……?」

「勿論よ!働く、働くから!」


 我は、上目遣いで魔術師を見てお願いをすると、魔術師は更に強く我を抱きしめて、そう言ってくれた。

 嬉しくて、我は笑顔になる。涙も、どこかへ飛んで行ってしまった。

 こうして、勇者と魔術師が、我が魔王軍の配下に下った。まずは試用期間からだが、これから楽しくなりそうである。


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