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バカ勇者(♀)とロリ巨乳魔王  作者: あめふる
魔界で暮らそう!
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魔界の都市


 場所は移動し、魔界の都市となる。

 都市の名は、グラム。魔王城からは、馬などの乗り物を使って半日程の距離にある。ただ、城とグラムは転移魔法装置で繋がっているので、わざわざ城の外に出て町へ向かう必要はない。必要がないので、魔王城とグラムを繋ぐ道はなく、道中は普通に歩いたら、非常に危険な道のりとなっている。

 今回も、我が配下となった勇者と魔術師を引き連れ、2人に装置の使い方を教えながら、グラムへとやってきた。

 グラムにつくと、我らは町にいくつか点在している、転移装置の施設に現れる事になる。そこには、城にあった転移装置と同じ、石の祭壇がいくつも並べられ、魔界各地の村や町へ、すぐに飛べるようになっている。

 ただし、城を始めとして、重要施設への装置だけは特別なので、転移装置の前には屈強な警備員が立ち、許可のない者の転移は許されていない。


「魔王様!リリさんも、お疲れ様です!」


 早速、装置で転移してきた我とリリに、転移装置を警備していたミノタウルスが、野太い声で挨拶をしてきた。我を遥かに凌ぐ背の、巨大なミノタウルスは、牛の顔を持ちながら、人の身体を持つ魔族の一種である。

 そんな彼は、青色の制服に身を包み、頭の上には牛の顔を模したロゴの入った、警備会社の帽子を被っている。


「お疲れ様です、タロウさん」

「うむ。ご苦労である、タロウ──そう警戒をするな」


 近づいて来たタロウに、身構えたのは勇者と魔術師だ。

 人間にとって、ミノタウルスは強大な力を持つ、敵だ。警戒されても無理はないが、基本的に彼らは、温厚で、優しい。我が小さいときは、道行くミノタウルスに高い高いをせがむと、皆快くしてくれたものだ。

 それに加えて、タロウはただの警備員であり、戦闘員ではない。勇者と魔術師が警戒をする必要は、全くないのである。


「こちらの、人間さんは?」

「新たに、我が配下となった者である。これから転移装置を使う事もあるだろうから、顔を覚えておいてやってくれ」

「人間さんが、魔王様の配下ですか。さすが、魔王様は懐が深い!私は、ミノタウルスの、ヤマダ・タロウと申します。どうぞ、よろしくお願いします!」


 そう言って、礼儀正しく頭を下げるタロウに、勇者と魔術師も、警戒を解いてくれたようだ。


「……ベルクルス・エッジボルト」

「ろ、ロゼット・ラック・コアウイラよ……よ、よろしく……」


 しかし、堂々と名乗った勇者と違い、魔術師は警戒を解きながらも、勇者の背後に隠れて怯えた様子である。この辺は、慣れて行けば、どうにかなるだろう。というか、このグラムに暮らすのであれば、慣れてもらわなければ困るのだがな。


「ベルクルスさんと、ロゼットさんですね。よろしくお願いします」


 警備の者と軽く挨拶を済ませると、我らは転移装置施設を後にした。大勢の魔族が行きかう光景を、勇者と魔術師は物珍しそうに見ているが、それもすぐになれる事であろう。


「ここが、魔族の都市……」


 施設から外へ出て、呟いた勇者が見上げるのは、我らが誇る、都市の風景だ。そこには、高い建物がそびえたっている。四角形の長方形のビルが、縦に、天に突き上げるようにそびえたっていて、背の高いのや、低いのも混ざり、群れをなしている。そのビルの中には、数多くの企業が入っており、大勢の魔族が働いているのだ。

 そんなビル群の間を、大きな道が通っている。その道を通るのは魔導車と呼ばれる、四輪の車だ。魔法の力で動く、便利な乗り物である。この都市でしか使う事ができないが、この広い都市を移動するのに、大いに役にたっているぞ。


「な、なんか、私たちの町とは全く形が違うわね……」

「うん。まるで、別の世界に来たみたい」


 そんなグラムの風景に、2人は圧倒されているようである。人間の町は、見た事がある。レンガや、木の家が主流の人間にとって、この町の風景は、確かに物珍しいだろうな。


「この町に、魔術師の叔父も暮らしているぞ。よければ、会えるように手配を──」

「いらない。会いたくない」

「ロゼ、痛いよ」


 我の申し出を断った魔術師は、勇者の腕を強く握りしめ、暗い表情になってしまった。


「そ、そうか、分かった。分かったから、勇者の腕を離してやれ?な?」

「……」


 我がそうあやすと、魔術師は勇者の腕から手を離した。


「今は、心の整理がつかないの。察して」


 何もない足元を見て言う魔術師は、呟くようにそう言った。

 魔術師は、魔族を恨んでいた。その原因は、魔王討伐に出て、帰らぬ人となった、叔父だ。帰らなくなった理由は、我ら魔族が殺したからだと思い込んでいた魔術師だが、その叔父は生きていた。それだけなら嬉しい事だろうが、その叔父が魔界へ来る前の生活に対する恨みを連ねた歌で、魔界で大ヒットの歌手となっているたのだから、その心境はうかがいしれん。


「……こほん。お二人の新居は、こちらです。ていせつ近の、優良物件ですよ」


 リリは、我らの先頭に立つと、ファイルを片手に案内を開始した。空気が重くなったので、それを誤魔化すように、言ってくれたのだ。

 新たに我が魔王軍に加わる事になった勇者と魔術師は、今日から魔界にある、魔王軍所有の寮に暮らしてもらう事になる。寮と言っても、1人暮らしと大差ない。普通のアパートと変わらないそこで、自炊に、洗濯を、自分でやる事になる。

 ちなみに、リリの格好は、女教師から元のスーツに戻っている。マントも背負っていて、その姿こそが、我の側近である、リリの真の姿である。


「ていせつ?」

「転移装置施設の略称だ!コレがある場所から近いと、地価が高いのだぞ」

「なるほど。確かに、近いと便利そうだから、土地も高そうだね」

「……とはいえ、私たちみたいな新人が、それほど良い所に暮らせるとは思えないけど。その辺は、どうなの?」


 歩き出したリリに続き、我らも歩いてついていく。道行く魔族とすれ違うたびに、緊張した面持ちなる勇者と魔術師だが、段々とそんな反応も薄れて行った。

 そんな中で、魔術師がリリに疑問を投げかけた。


「その通りです。お二人に暮らしていただく寮は、我が魔王軍が所有している寮の中でも、最下層の物となります。なので、あまり期待はしないでください」

「……分かってる。私としては、住めるところを用意してくれるだけで、ありがたいもの。我儘は言わないわ」

「私は、魔王と一緒に住みたい」

「残念だが、我には我の家がある。勇者も魔術師のように、我儘を言うな」

「……うん。いつか、生計を立てられるようになったら、一緒に住もう。その時まで、我慢するよ」


 そう言う勇者の目は、前を向き、輝いていた。目標に向かい、思いを誓う者の目である。

 それからしばらくして、辿り着いたのはオフィス街から少しだけ外れた、住宅街だ。そんな住宅街の中に、寮はある。2階建ての、薄茶色のキレイな建物で、出入口は1階にしかなく、2階への部屋は、1階の玄関からあがり、その先にある階段を上がっていく作りになっている。横長に玄関が立ち並んでいて、玄関の前には物がおかれたり、ポストから新聞が出ていたりして、他の者の生活感を感じる事ができるぞ。


「勇者様は二階のお部屋で、魔術師様はその下の階に住んでいただきます。部屋番号は、103号室と、203号室ですね。とりあえず、魔術師様のお部屋である、103号室に入ってみましょうか」


 リリはそう言うと、103と書かれたプレートが掲げられている玄関のカギを解錠し、その扉を開いた。家の中は、いきなり廊下とキッチンがあって、短い廊下を経て、開け放たれている扉がある。その短い廊下にはトイレや風呂場への扉があり、今は風通しをよくするためか、それらの扉も全て解放されていた。短い廊下を通り、奥の部屋へとくると、そこがこの家唯一の部屋となる。

 ウィンの家と比べると、凄く狭い。広さで言うと、8帖程だろうか。我の部屋よりは、広いぞ。

 だが、各所には既にテレビや机に、ベッドやタンス、エアコンに電子レンジに、洗濯機に冷蔵などなど、生活に必要な物は揃えられていて、すぐに生活ができるようになっている。ベランダには、洗濯竿もつけられているからな。

 それに、床はキレイなフローリングだし、壁も白くて、とてもキレイだ。狭い事を除けば、生活には困らないと思うが、どうなのだろう。


「家電は全て、新品です。ベッドのお布団も、新品ですのでご安心ください。生活に必要な物は、全て支給品となりますので、ご自由に使っていただいて結構です。それから、光熱費もこちらで支払うので、気にしなくても平気です。しかし、節約は心がけてくださいね」

「私は、勇者だよ。野宿の経験もあるから、これだけ揃っていたら、いくらでも生きていける」

「それは心強いです」

「ロゼだって、同じだよ。ね、ロゼ」

「……」


 勇者の問いかけに、魔術師は答えない。目を丸くして、部屋を眺めている。


「ど、どうしたのだ、魔術師。部屋が、気に入らなかったか?」

「……違う」

「では、どうされましたか?何か、お部屋に不備でも?」

「……違う。散々苦労して入った王国軍より、遥かに待遇が良い」


 魔術師はそう言って、静かに頭を抱えた。その目の端には、うっすらと涙も浮かべていて、心痛な面持ちである。


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