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君と僕の理想世界  作者: 天崎
第2章
77/79

2

第1グラウンドへと足を踏み入れる。

砂をすり砕くように靴の感触を確かめて、爪先をコツコツと立てる。風は少しあるが、砂埃が舞う事もない。隣では実咲が大きく背伸びをしながら準備体操を始めていた。


「想也君、調子はどう?」

「うん、いい感じ。実咲と繋がってるから傷の治りが早いよ」

「ふふ、そうね。繋がってるものね」


上空を見上げると、撮影用のドローンが二台飛んでいた。さらにその奥に目を凝らすと、雲が長く引き延ばされながら流れていた。実際に雲がある訳ではなく、ただの映像だと分かってはいるがそれでも初夏の青空は清々しい気分にさせてくれる。


深呼吸を1つして、前を向く。


100メートル先には僕らと同じようにグラウンドへと入った2人がいた。

焦げ茶色と栗色の髪の男女だ。

海と内宮さんである。

改めて遠くから見てみると180センチほどある海の身長の高さが際立つ。


「さぁ! ついに二対二戦もセミファイナル! ここからは戦闘エリアも広くなります!」

「ここまではほぼ同時に競技を行ってきましたが、ここからは第1と第2グラウンド時間をずらして競技をスタートさせます。また、準決勝終了後は30分の休憩時間を設けて決勝戦となります」

「さて! 第1グラウンドで火花を散らしているのはどちらも1年生の八雲&内宮ペアと現乃&理崎ペア! 情報によると彼らは同じチームを組んでいるらしいです!」

「お互いに手の内がある程度分かっている状態ですが、どういった展開になるのか注目ですね」

「内宮選手は騎馬戦や棒倒しでも注目を集めた選手です! ド派手な試合が期待出来ます!」

「そうですね」


グラウンドの端で運営係の人が何やら指示を出した。それと同時に結界が起動する。

下から包むように展開された結界が天頂の辺りで切れ目なく結合しそれと同時に、周囲から聞こえてくる一切の音が遮断される。無風かつ無音の世界で僕らは向かい合う。


撮影用のドローンから開始のブザーが鳴り響いた。


それと同時に内宮さんが多数の魔法陣を展開する。

十数枚の並列起動を難なくこなす。

相変わらずおかしい量だ。

初手を譲る形になるが、こうなることは十分予想できた。内宮さんが魔法陣を完成しきってしまえば、どんどん手が付けられなくなる。

騎馬戦の時の護人達が良い例だ。ヤバくなる前に手を打とうとしたが遅かった。


しかしだからこそ、短期決戦はしてこない。

海も短期決戦を仕掛けて来たときのために、内宮さんから離れずに備えている。

ならば、こちらはその時間を使って精一杯の準備をするだけだ。


理想世界(イデア)――『衛星武装(サテライトアーツ)』」


昨日の戦いから得た経験を反映し、守る事を念頭においた能力の使い方を試す。

地面の土を材料に、あの時作ったものと同じ程度の杭を創り出す。そしてここから概念封入(コンセプト)を行う。


概念封入(コンセプト)――『自動防御』」


相手が幾ら早くても、ある程度の数を束ねて手数を増やせば対応できることがわかった。

あとは練習と準備あるのみだ。


僕に向かってくる攻撃に対し、自動的に防御を行う。


「――防性軌道ディフェンスオービット


火花が弾ける。

音速に迫ろうかという速度で飛来する炎の槍を、真っ向から叩き落とす。熱風だけは届くが至近距離でもないし、この程度なら強化(ブースト)しておけば火傷にはならない。


自動防御の良いところは、意識から切り離しても問題無いところだ。その分だけ相手に注意を払える。


まるで機関銃のように間断なく放たれる炎槍(フレイムランス)を凌ぐのは問題無いが、内宮さんの事だからこの程度で終わるとは思えない。


「魔力を以って氷と成せ、氷を以って槍と成せ――並列5枚、氷槍(アイスランス)


ほらやっぱり追加された。

外の音は聞こえないが、ウケはいいんじゃないだろうか。見た目だけなら派手な事になってるし。

実況がやかましい事になってそうだ。


僕も内宮さんも状況的には小手調べの状態だ。

このままでは文字通り千日手となる。


もうそろそろ仕掛けて来ると思うんだけどな。

海がごにょごにょと内宮さんに耳打ちしてるのが見えるし。


そう思っていると、僕の一歩後ろに隠れている実咲が警戒の声を発する。


「来るわ」

「オッケー。……って、やべっ!『衛星武装(サテライトアーツ)』!」


内宮さんの組み上げている魔法系(マジック)を見て、即座に衛星武装(サテライトアーツ)の量を増やす。あれはこのままじゃ防げない。


「――『水撃(ウォーターハンマー)』」


直径4メートル程のどデカイ水の塊が光を乱反射させながら飛んでくる。ランス系列と同程度の速度で飛んで来るが、サイズがサイズなだけあって視界を覆い尽くすほどだ。


衛星武装(サテライトアーツ)で中空を漂わせていた杭を正面に並べて盾のように使う。

完成した盾の後ろに身を隠した直後、耳をつんざくような破裂音が響き渡る。


危なかった。

衛星武装(サテライトアーツ)はあくまでも点や線での防御だ。炎槍(フレイムランス)くらいまでの大きさの攻撃なら散らせるのだが、水撃(ウォーターハンマー)レベルの巨大な攻撃になると弾いたり出来ない。突っ込ませても飲み込まれちゃうからね。

ある程度威力を弱めたりはできるけど、あの大きさの水が直前までの速度をそのままに慣性の法則に従って降ってきたらそれだけで脅威だ。


やっぱり模擬戦闘って大事だな。

自分が創った保持能力(ホルダースキル)の弱点が分かるし。


そのまま連続して水撃(ウォーターハンマー)が衝突する音が聞こえる。

幸い僕らはずぶ濡れにはなっていないが、辺りは水浸しになっている。


「想也君!上よ!」

「ぎゃー! 内宮さん本当にやってくれるな!」


実咲に言われるがままに上を見ると、今まさに降り注がんとしている炎槍(フレイムランス)の雨が競技ドームの天井付近に大量にあった。

まずい。

下は水浸し。上は大火事。


水蒸気爆発を狙ってるなこれ。

シャレにならない。


選択肢は2つ。

近場に降ってくる炎槍(フレイムランス)を撃ち落とすか、身の回りに同じように盾を作って防ぎきるか。多分どっちも出来るけど反撃に繋がらない。相手のペースに乗せられたままになってしまう。


「向こうに飛ぶわ!」

「え!? あ、うん!」


実咲に手を引かれて盾の上を飛び出した。

直後、爆音と共に熱風が背中を叩いた。

飛距離が伸びて、このまま行けば内宮さん達のところまで飛んで行けそうだ。


ちらりと後ろを確認すると、雷の弾が水蒸気の立ち込める中に入っていくところだった。ご丁寧に水浸しの地面には雷の槍が突き刺さっていた。


マジで危ない。

水系の魔法系(マジック)を使い始めたところから若干意識はしていたけど、どっちもやってくるとは思わなかった。


空中を舞う僕らは内宮さんからすれば良い的だ。

盾状態を解除した衛星武装(サテライトアーツ)が縦横無尽に飛び回り、迫る攻撃の悉くを防ぎきる。


「――水撃(ウォーターハンマー)


たとえ空中で水撃(ウォーターハンマー)が飛んできたとしても、空中で盾を作れば防ぐことが出来る。

目の前で盾を作ったせいで行く手が塞がれたが、そのまま盾に着地する。

そっか、空中でも自分の衛星武装(サテライトアーツ)を足場にできるのか。剣やレイピアなどで衛星武装(サテライトアーツ)を構成していたら出来ない芸当だが、杭なら特に問題ない。


位置関係としては、海達の斜め上20メートルほど上に陣取る形だ。


「着いてきて!」


衛星武装(サテライトアーツ)を足場にしてさらに距離を詰める。

真上を取ったあたりで水撃(ウォーターハンマー)が止んだ。跳ね返った水が全部自分に降りかかってくるからだろう。


あたり一面がびしょ濡れになっているからか、電気系の魔法系(マジック)も止んだ。代わりに氷槍(アイスランス)炎槍(フレイムランス)が密度を増してきた。


中距離メインの戦闘になってるせいで海が大人しくしてるのが唯一の救いだろうか。まあそれは実咲にも同じ事が言えるけど。


このままじゃいつまでたっても勝負がつかない。

いや、勝敗はついてしまうかもしれない。

終始内宮さんのペースだから、判定負けがあり得る。

そろそろ試合を動かそう。


理想世界(イデア)――土埃…じゃなくて『つむじ風』」


まだ濡れていない部分の地面に旋風が巻き起こる。

土埃が立ち込め、僕らもろとも海と内宮さんを飲み込む。ほとんど視界ゼロだ。

土埃そのものを創造しようと思ったが、側から見ると瞬きのうちに予兆なしで土埃が立ち込める事になる。それは明らかにおかしな現象だ。保持能力(ホルダースキル)におかしい現象は付き物だけど、僕の能力を教えたみんなならまだしも、知らない人が見ると色々と面倒だ。

保持能力(ホルダースキル)を加味しても、やっぱり違和感の残る現象に写ってしまうだろうから。


「行きましょう」


実咲の掛け声とともに気配を消して衛星武装(サテライトアーツ)から飛び降りる。何も言わなくてもこの後の連携は取れる。

僕らの固定パターンだが、海がこれを想定していないはずがない。


実咲はすぐ横に居るはずだが、全く気配を感じられない。意識して探って、それでも分からないレベルだ。

だが、土埃の中でも海と内宮さんの位置は探れた。

やはり土埃に巻かれた瞬間に距離を離したようだ。

真上を取られたままだとどこからでも奇襲されちゃうからね。


着地と同時に僕は左、実咲は右から回り込むようにして走り出す。狙いは内宮さんだ。


「やっぱりやってきやがった! 一葉!」

「――『風撃(エアハンマー)』、『岩壁(ロックウォール)』」


魔力が練り込まれ、超圧縮された空気の巨塊が近場の地面へと炸裂する。魔力で押し固められていた空気が一気に解放され、周囲の土埃を吹き飛ばした。

衛星武装(サテライトアーツ)を目の前に一本突き立てて捕まり、暴れる強風に耐える。




暴風から顔を背けて辺りを見回すと、リトリビュートを地面に突き刺して吹き飛ばされないように堪えている実咲が見えた。


いつも僕らが行なっている連携に対しての対策はバッチリ取られているみたいだ。実咲を一瞬でも見失ったらどうなるかが分かっているから、視界を遮る保持能力(ホルダースキル)はすぐに散らす事を徹底している。


位置が露わになってしまった以上、奇襲作戦は失敗だけど御構い無しに距離を詰める。距離を取られたら内宮さんの独壇場だが近距離戦や混戦に持ち込めば能力を十全に発揮出来なくなるはずだ。


「詰めるわ!」

「オッケー!」


今から距離を離すメリットなんてない。

とにかく前へ。

先程からずっとランス系列の魔法系(マジック)が飛んで来ているが、衛星武装(サテライトアーツ)の防御網を突破出来ていない。


「来いや!」


爆炎を剣にした海が間に立つように出て来る。

相対するのは実咲だ。

近接戦と言うにはちょっと遠い距離だが、海の炎剣(フレイムブレイド)の間合いに入っている。


真一文字に結んだ剣閃を屈んでやり過ごし、戻りの一閃をリトリビュートで受け止める。海は炎剣(フレイムブレイド)が受け止められた瞬間に引き戻して流れる様な動作で突きを繰り出したが、実咲は最初から知っていたかのように体を捻って躱す。

炎剣(フレイムブレイド)は物体としての輪郭がくっきりしていないから避けるのがちょっと大変なのだが、実咲は難無く回避している。


「――『氷槍(アイスランス)』!」

「『衛星武装(サテライトアーツ)』!」


援護の為に急いで作り上げられた氷槍(アイスランス)を横合いから砕く。

防性軌道ディフェンスオービットはあくまでも僕に飛んで来る攻撃を防ぐ概念封入(コンセプト)だから、僕に飛んで来ない攻撃は迎撃してくれないんだよね。今みたいに直接操作する必要がある。


弾ける氷を気にも止めず、海と実咲の攻防が激化して行く。海は一撃の重さを警戒した立ち回りをしている。対する実咲は炎剣(フレイムブレイド)を掻い潜り、リトリビュートによる一撃必殺を狙っている。

お互いに手の内を知っているからこそあと一歩が攻めきれない。足を止める事なく、常に立ち位置を入れ替えながらの戦闘だ。


海は必要以上に攻め込まず、いざとなったら内宮さんの所まで戻って来れるような距離の取り方をしていた。


構わず、今の内に内宮さんを攻める。

僕に気を取られて戻って来るようなら実咲と一緒に乱戦に持ち込む。戻って来ないなら特に問題は無い。


攻性軌道(オフェンスオービット)!」

「直並列13枚――『氷槍(アイスランス)』」


僕の身を守るように周回する衛星武装(サテライトアーツ)防性軌道ディフェンスオービットであるならば、僕から離れて直接攻撃を加えるのが攻性軌道(オフェンスオービット)だ。


半自動で敵を追尾し、杭そのものが破壊されない限り躱されたとしても再補足する。

概念封入(コンセプト)してあるため、操ること自体に魔力が必要無いのが衛星武装(サテライトアーツ)の良い所だ。なお、魔力を込めれば速度を上げたりもできる。込め過ぎると衛星武装(サテライトアーツ)の概念強度を超えて自壊してしまうが。


取り敢えず、標的は内宮さん。

絨毯爆撃のような魔法系(マジック)の蹂躙に対し、衛星武装(サテライトアーツ)を全てつぎ込んで対応する。

内宮さんは時間をかければ百を超える魔法系(マジック)を連続で撃ち続けられる。

水撃(ウォーターハンマー)を撃つ為に少し弾幕が薄くなったが、ランス系列だけに纏められた魔法系(マジック)の雨は、僕が分かるだけでも既に百発近い。

だけど、それよりは増えない。

競技スペースに配慮してなのか、制御しきれないからなのか、これ以上増やすと保有魔力が目減りしていくからなのか。本当の理由は分からないが、この量ならギリギリ耐え切れる。


ていうか本当に規格外だな内宮さん。

普通の保持者(ホルダー)なら制御しきれたとしても、5秒と持たない魔力消費量なんだけど。


ともかく、ここまで増えてしまった弾幕に対して僕の余裕は一切無い。

実咲を援護出来なくなったという事だ。

対する内宮さんも僕が攻性軌道(オフェンスオービット)で攻撃を始めた所為で、迎撃用の魔法系(マジック)を使わざるを得ない。結果的に一対一の撃ち合いになった。


ギャリギャリと鳴り響く擦過音が、僕と内宮さんのど真ん中に積み上げられて行く氷槍(アイスランス)の残骸を飛び越えて来る。

内宮さんはいつのまにか炎槍(フレイムランス)などを止め、氷槍(アイスランス)だけで弾幕を構成していた。辺りには氷槍(アイスランス)だったものが散らばっており、土の上に積もってキラキラと輝いていた。ガラスの草原みたいだ。


丁度いい。

これを使おう。


理想世界(イデア)――『つむじ風』!」


つい先程、視界を奪う為に創造した旋風を再び創る。

ただし今度は唯のつむじ風じゃない。

地面にある氷の欠片を巻き込んだ、指向性を持った突風だ。モロに当たれば強化(ブースト)しているとは言え全身が切り裂かれるだろう。

同時に衛星武装(サテライトアーツ)を何本か混ぜて突っ込ませる。


内宮さんに出来る対応は防御、回避、迎撃の3つ。

氷を含んだ突風を打ち消すとしたら、さっきの水撃(ウォーターハンマー)みたいな大質量で真正面から打ち消すか、大気系の保持能力(ホルダースキル)で突風そのものを消すか逸らすしかないと思う。例え突風を消したとしても僕の衛星武装(サテライトアーツ)は消せないわけだし、このタイミングでの迎撃は難しい。


やるとしたら防御か回避だけど、どちらでくるかな。


強化(ブースト)!」


内宮さんが選んだのは回避。

潤沢な魔力にものを言わせ、横に飛んで衛星武装(サテライトアーツ)を引き離した。

しかも、その速度のまま僕の方にまっすぐ向かってきた。近接戦は得意じゃないはずだけど、それでも突っ込んでくるってことは何かしらの考えがあるのだろう。

氷槍(アイスランス)を叩き落しながら、衛星武装(サテライトアーツ)で内宮さんを追いかける。


「魔力を以って水と成せ、水を以って壁と成せ――『水壁(ウォーターウォール)』。――『氷結(アイスロック)』」

「うわ、まじ!?」


いくら強化(ブースト)されているとは言え、僕の衛星武装(サテライトアーツ)の飛翔速度よりは遅い。内宮さんが距離を離し続けることなど不可能なのだが、あくまでも飛翔出来ていれば、だ。

魔法系(マジック)によって生み出された水の壁に衛星武装(サテライトアーツ)が飛び込んだ瞬間、追加の魔法系(マジック)で瞬間凍結させることで動きを止められてしまった。

僕の周りを周回している杭はまだ残っているけど、攻性軌道(オフェンスオービット)で飛ばした杭はほぼ全滅状態だ。杭そのものが壊れたわけじゃないから、もうちょっと時間があれば氷を破壊して再度攻撃に回せると思うけど、この数秒は使えない。


となると、次は僕が選択を迫られている。

前に出るか、後ろに下がるかだ。

内宮さんの方から近づいてきているおかげで、距離自体はすぐに詰められそうだ。

でもそんなことは内宮さんだってわかっているはず。どんな手を考えているかわからない以上、手数で負けている状態でリスクを背負って真っ向勝負をする必要はない。

即座に後ろに下がる。つまりは実咲と合流する。


《いったん戻るよ!》

《わかったわ!》


迫りくる氷槍(アイスランス)をどうにか躱しつつ、全速力で実咲のところまで戻る。

海との剣戟の繰り広げている最中だったが、構わず横やりを入れる。

空中の衛星武装(サテライトアーツ)を足場にして、飛び蹴りを食らわせようとしたがすんでの所で身を屈めて躱されてしまった。構わず格闘戦に持ち込もうとするが、内宮さんのカットが入る。


「あぶねっ!」

「想也君、後ろ!」


飛来する氷槍(アイスランス)の悉くを実咲が打ち払った。

その間に海が内宮さんの所まで戻ってしまった。


「はははっ。強いね、やっぱり」

「楽しそうね、想也君」

「楽しい……のかな。うん、そうだね。結構ワクワクしてるよ」


沸々と湧き上がる高揚感が体の芯を支えているような、そんな感覚を覚える。

少し離れた所で炎剣(フレイムブレイド)を構えている海の顔が少しにやけているのが見えた。

同じ気持ちだね。

きっと君達も次で決めようと思ってるんだろう?

もう少し続けていたいと思うけど、これ以上は間延びしてしまうからね。


内宮さんの射撃に注意しつつ、僕と実咲の2人がかりで海を抑えるのがベストだ。

実咲と頷き合い、意思の疎通が出来た所で地面を蹴り距離を詰めようとした。


その矢先だった。


突如として、グラウンドを覆っていた結界が消えた。


「「――なっ!?」」


海達の頭越しに見えていた結界が、シャボン玉が割れるように弾けて無くなった。

内宮さんが即座に魔法系(マジック)を消す。流れ弾が飛んでいったら洒落にならない。

少し遅れて風が吹いているのを感じた。

外部との遮断が無くなった証拠だ。

それと同時に、空からいくつものドローンが落ちてきた。ガシャン、とパーツを撒き散らして動かなくなっている。


「なんだ…?」


炎剣(フレイムブレイド)を消した海が、辺りを見回している。

実咲と僕は、取り敢えず海達の近くに集まることにした。何が起きてるのか状況が掴めないけれど、何かが起きる予感がした。

広いグラウンドの真っ只中に取り残されたような感覚に陥る。


「実咲。リトリビュートは消さないようにね」

「分かったわ」


結界の不具合か何かで一旦中止になったのだろうか。

それにしては――


「――アナウンスがねえな」


海の言う通りだ。

何かがあったにせよ、あの喧しい先輩の実況がキンキンに響いているはずなのだ。機材トラブルだと片付けてしまうには不自然に思える。


「一旦、グラウンドを出よう」

「そうだね」


海の判断に従い、グラウンドを出た。

そしてその直後に、僕らは見てはいけないものを見てしまった。それはここにあってはいけないもの。

学校にあるはずがなく、『シャンデリア』にあってはならないもの。


「ど、どういうこと…?」

「想也君。急いだ方が良いかもしれないわ」


内宮さんの動揺は至極当然なもので、実咲の声に焦りが混じっていたのも仕方のないことだろう。


地面に転がっていたのは、人類の敵。

地上の支配者。


怪物(モンスター)だった。


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