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俺の黒小説が聖典になってた  作者: ぽんた7
Episode7 古代の記憶
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伝言

 日も傾いてきたので、その日は馬車を地下室のある建物に移動させてキャンプした。こっちの方が壁が多くて風を防げそうだからだ。幸い建物は決して朽ちない謎物質。建物の大きなドアは馬車でも余裕で通る事ができた。というかこれ幅と高さ的に車両の搬入路だろうなあ。ま、これでだいぶ宿泊は楽になる。


 灰域もここまで来ると砂漠の山岳地帯のようなもので、夜の気温低下はなかなか厳しいものがあった。まだ積み荷の水が凍るほどではないものの寒さで体力が奪われるのはよろしくない。ましてや小っちゃい女子二人なら尚更。


 簡素な食事を摂ったらリーネに日課のブラッシングをしてもらい、早々に就寝する。リンを寝床の中心に置いて女子二人の湯たんぽ代わり。リンもこんな虫しかいないような場所では外を散歩する気にはなれないようだった。他の四匹は狩りに出かけた模様。


---


 夜中。

 寝ていた俺は、リーネの感応術でたたき起こされた。リンの鱗が光っている。


『なんだなんだ! リーネ? いったいどうした?』


 しかし返事はない。リーネは寝ながらうなされていた。悪夢でも見ててそれが伝わって起こされた? と思ったが、どうもそんな雰囲気じゃない。今までにそんな事は起きなかった。リーネの意識に何かが侵入してきているのがリーネとの感応術経由でわかる。この感触は別の感応術が介入してる? 送信元は……地殻炉か!


 何で今頃、と思ったがその辺は後回しだ。リーネを起こすか迷ったが、通信が切れたら再度の接触があるか分からない。まずはこの状態で内容を聞いてみよう。


 今繰り返している部分はヘッダーだ。言葉は不明瞭で意味も分からないが、意味は伝わってくる。単なるリーネへの呼びかけだ。俺がリーネ経由で了承の意を送り返す。ヘッダーが止まった。


【管理者候補によるACK確認。本体部分の送出を開始。状況の経緯と現状の簡易レポートを送信】


 ほんと意味が直接伝わるって気持ち悪いな。しかし今は我慢。


【西暦4220年。本機に接続された32本ある地殻炉ネットワークのうち1本が破断した。】


 ネットワークとは、コンソールにあったグレーや青の線の事か?


【西暦4658年。全てのネットワークが沈黙。本機は自立稼働に移行。】


 よく分からんがここが孤立したって事か。


【その後ネットワークを再起動するためのキーを持つ管理者の着任を待機。候補者は数人現れたものの全て認証に失敗。正規のキーを持つ者は現れず、西暦4878年に本機の自立稼働限界に到達。ネットワークからの応答は依然無し。エネルギー供給を停止し休眠モードに移行。】


 管理者? 再起動キー?


【本機からのネットワーク再起動はすでに管理者単独では不可能なようロックされた。システムのリストアには本施設地下、地殻炉研究施設へのアクセスが必要。必要な情報開示ポインタを提示済み。要確認。】


【本文簡易レポート送信終了。フッター開始。】


 フッターには特に意味はなかった。猫の前足でそっと肩をゆすって今度こそリーネを起こす。その横で寝ていたティアも目覚めてこちらを見ていた。寝ているリーネの横で猫が光っていたのを邪魔せずに、見守る選択をしてくれていたのはラッキーだった。途中で起こされたら情報をロストしていたかもしれない。ほんと賢いなこの子は。


『リーネ、大丈夫か?』「うにゃん」


 リーネは上半身を起こしたが少しふらついている。だんだん目に光が戻ってきた。


「頭が痛いです。でも大したことはありません」


『そうか。良かった。何があったか覚えているか?』


「はい。夢ではなかったのですね。ソーマと地殻炉の会話を聞いていました。単語は良く分からなかったんですが...」


 それはそうかもしれない。


「でも、なんと言うんでしょう、地殻炉の気持ち?は伝わってきました」


『気持ち?俺にはデータしか開示されていなかったが』


「これは『寂しさ』というものなんでしょうか。炉は、ずっと待っていたんです、誰かが声をかけてくれるのを。でも現れなかったので眠りについた」


 寂しい? 機械が? にわかには信じ難いが、これだけ高度な文明だ。機械にも自我くらいあるかもしれない。


「この炉も、今まで訪れた炉も、話が通じる人が来るのを待っているんです、きっと」


「地殻炉には感情があると?」


 ティアがリーネに尋ねると、リーネは目を伏せる。


「はい、そのように感じました。いよいよ間違ってるのは神殿と私たちで、ティアやソーマが本来の姿、という可能性が高くなってきましたね」


「リーネ様……」


 ティアはなんとも難しい表情をしている。今まで散々否定されてきた感情が、今更正しかったと言われてもどう反応して良いか分からないのだろう。





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