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崩れゆく世界で渇望している  作者: Altsaber
第一章 なおも朦朧としている世界
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8 夢の余熱

「チュン…チュン…」


 再び目を開けると、まだらな陽光が私の体に降り注いでいた。


「ドクン、ドクン。」


 鼓動のざわめきはまだ収まらず、未知の感情もわずかにこの身に残っている。でもその余熱を味わうだけで、胸の奥から理由のわからない喜びが込み上げてきた。


「っつ…」


 余熱が冷めた後、私は起き上がって周囲を見渡すと、腰から痛みが走った。


 視線を落として自分の腰を見ると、白い帯のようなものが新たに巻かれており、その上には私の剣が置かれていた。


「ん…」


 私は剣を手に取り、それを杖代わりにして震えながら立ち上がり、自分の体の状態を確かめる。


 全身にかすかな痛みがあり、両足には少し力が入らない感覚があるが、昨日の痺れよりはずっとましだ。


「レイア、無理しないで。まだ横になってたほうがいいよ。」


 澄んだ声が聞こえた。それが蓮の声だとはすぐにわかった。


 振り返ると、蓮が器を手にこちらへ歩いてくるところだった。


「私、まだ生きてる?」


 左手を握ってみると、どこか現実味がなかった。


「本当はもうあなたを置いていくつもりだった。でも、氷宮詩玖たちがここでの戦闘を感じ取って、援護に来てくれたの。」


「でもね。」


 蓮は続けて言う。


「私たちがあなたを連れてSaliveから逃げ切ったとき、あなたはもう虫の息だった。あの状態じゃ、lv4の治療師どころか、たぶんlv5でも救えなかったと思う。」


「じゃあ、どうして?」


「その場で埋葬しようって話になったの。でもあなたの剣を体の上に置いた瞬間、あなたの体が勝手に修復を始めたの。」


「剣…」


 私は右手の剣を見下ろす。黒い刀身は何の材質でできているのかわからず、まるであらゆる光を飲み込むかのようだ。相変わらずどこか懐かしい感覚はあるけれど、それ以外の反応は何もない。


「それはひとまず置いといて。はい、薬を飲んで。近くで見つけた回復を促す草よ。」


 蓮はそう言って器を差し出す。黒緑色の薬液からは刺激的な匂いが立ち上っていた。


「ごく、ごく。」


 蓮に支えられながら、私は薬を一気に飲み込む。嫌な感覚が喉を通り抜けていった。


「みんなは?」


 私は蓮に尋ねる。


「花は食べ物を探しに行った。詩玖たちはSaliveの処理。だって、あなたの周りにはいつもSaliveが集まるから。」


「ごめん…」


 私は彼女たちに迷惑をかけている。でも、できることは謝ることだけだった。


「謝らなくていいよ。あなたがいなかったら、私もここでこうして話してない。」


 蓮はそう慰めてくれた。でも、私がいなければ、彼女たちがあんな危険に遭うこともなかったのではないだろうか。


「じゃあ、私を置いていったりしない?」


 初めて、置き去りにされたくないという思いが芽生えた。


「もちろんしないよ。だってあなたは私の命の恩人なんだから。それより…」


 蓮は一瞬言葉を止めてから続けた。


「私たち、あのとき本当にあなたを置いていこうとしたの。恨まない?」


「恨む?どうして?」


 蓮の言葉に私は首をかしげる。


「その…ううん、なんでもない。」


 言いかけた言葉を蓮は飲み込んだ。


「蓮、花の手当てお願い。」


 遠くから氷宮詩玖の声が響き、私たちの会話を遮る。続いて森の中から四人の姿が現れた。


 氷宮詩玖が先頭を歩き、荒塚悠とバージョン・ジンが後ろに続く。そして花は氷宮詩玖の肩に担がれていた。


「戻る途中で花の叫び声が聞こえた。近づいてみたら崖の縁の木の枝にぶら下がってた。」


 氷宮詩玖はそう説明しながら、花を蓮の前に下ろした。


「権能がもう尽きてるなら、あんな危ないことするなよ。」


 荒塚悠はそう言いながら、花のお尻を一蹴りする。


「いたっ!悠、誰のためだと思ってるの!あんたがそんなに食べるから、あんなに採らなきゃいけなかったんでしょ!」


 花は地面にうつ伏せになりながらお尻を押さえ、言い返す。


「自分が食いしん坊なだけだろ。」


 荒塚悠はさらに反対側のお尻も蹴った。


「詩玖、どうだった?」


 花たちが友好的にやり合っている間に、蓮は氷宮詩玖に状況を尋ねる。


「半径五キロ以内のSaliveが不自然にここへ集まってる。でも幸い、低階級ばかり。」


「彼の扱いはどうする?」


「ひとまず本部に報告する。彼にはまだ解明すべき謎が多い。」


 彼女たちの話題は私のことらしい。でも私は、花が持ち帰った食べ物を仕分けしているバージョン・ジンに目を向けていた。


 彼は常に黒いフードをかぶり、戦闘服も黒。存在感が薄く、普段はなかなか気づかない。


「これはそのまま食べられる、これは焼く、これは食べられない。悠!これ処理して。食べたらすぐ出発だ。」


 低い声が響き、会話を遮る。


「よし、任せろ!炎よ、燃え上がれ!」


 荒塚悠が指を鳴らすと、光を歪めるほどの高温の炎が空中に生まれ、バージョン・ジンが仕分けた食材を包み込む。


 炎は空へと立ち上り、昼間にもかかわらず周囲を橙色に染め、高温の熱波が一気に押し寄せ、熱風が吹き荒れる。


 その張本人は真っ直ぐ立ち、赤い髪を熱風に揺らしながら、自分の成果を誇らしげに見つめていた。


「うわあ!悠、何してるの!せっかく集めたのに全部焦げちゃう!」


 花はよろよろと立ち上がり、まだ得意げな荒塚悠に飛びついて押し倒す。食べ物が無駄にされる怒りを拳に込め、何度も彼の胸を叩いた。


「わっ!悪かった!次は気をつける!」


 荒塚悠は胸を両手で守りながら必死に謝る。


「もう何回目?全然反省してないでしょ。」


 謝罪は花の拳を弱めることはなかった。


「はあ…」


 氷宮詩玖は額に手を当ててため息をつき、炎へ右手を伸ばそうとする。


「シュッ!」


 目で追えない速さで、バージョン・ジンが腰の剣を抜き、炎へ振るう。剣気が落ち葉を巻き込みながら炎へと走り、それを打ち消した。


 彼はそのまま食べ物へ歩み寄り、一つずつ確認する。


「中身の半分以上はもう食べられない。残りはこれだけ。」


 彼は残った分と最初に分けていたものを抱えて戻ってきた。


 ほとんどは桃のような果実で、殻をむいて食べる未知の食べ物もあった。今回はリスのような小動物はない。


 食料は少なく、荒塚悠を除いて私たちはかろうじて空腹を満たせる量しか分けられなかった。


「俺も腹減った…」


 荒塚悠は花に命じられ、関係のない食事風景を膝立ちでじっと見つめている。


 お腹が空いたら食べる。蓮はそう言っていた。だから私は、手に持った食べ物の半分を荒塚悠に渡そうとする。


「ありがとう、さっきのことは謝る。君は天使だ。」


 荒塚悠は水を飲むように表情を変え、私の手の食べ物を真っ直ぐ見つめる。


 私も空腹だけれど、何が正しくて何が間違いかはわからない。ただ蓮と花の行動を真似して、食べ物のない人に分けようとしただけだ。


「レイア、放っておいて。じゃないと反省しないから。」


 でも花が止めた。


「うん。」


 どうやらこれは間違いらしい。


「これが現代の拷問だ。非人道的な虐待だぞ!」


 荒塚悠は突然立ち上がり、花に反旗を翻す。


 でも私が元の場所に座り直し、ほんの一瞬目を離した間に、その反乱はあっさり鎮圧された。荒塚悠は相変わらず跪いたまま、違うのは両脚の上に石が二つ乗せられていることだけだった。


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