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崩れゆく世界で渇望している  作者: Altsaber
第一章 なおも朦朧としている世界
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7 生への渇望

「おい!花!レイア!早く起きろ!」


 眠っているところを無理やり起こされ、私はぼんやりと身体を起こした。


「どうしたの、星月蓮?」


 私と同じくらい寝ぼけているのは、隣にいるピンク色の髪の少女――白夜花だ。


「私たち、Saliveに囲まれてる。」


「なに!!?」


 花は一瞬で眠気が吹き飛び、その甲高い叫び声で私も強制的に目が覚めた。


「でも、低級のSaliveが少しだけ。距離はあと約一キロ。」


「低級のSaliveが、こんな組織だった動きをするの?」


「考えられる理由は一つしかない。何かに引き寄せられてるってこと。」


 そう言いながら、蓮は私の方を見た。


「……私?」


「まだ確定じゃない。でも、あなたに関する謎が多すぎる。一人でSaliveがいる野外に現れたこともそうだし、私たちが遭遇してきた数々の異常も。」


「今それを考えても仕方ないでしょ。まずはどうやって抜けるか考えないと。」


 花は私たちの会話を遮り、そのまま外へ走り出した。私たちもすぐに後を追う。


「オォォ……」


 月明かりに照らされて、私は初めてSaliveの姿を見た。


 さまざまな型のSaliveが巨大な体躯を揺らし、その多くが頭や背中に威圧的な角を生やしている。こちらをじっと睨みつけていた。


「私が前を開く。ちゃんとついてきて。」


 花は手にしていた長柄武器を背中に回し、代わりに腰から二つの短柄武器を取り出した。


「こっち。」


 そう言って花は前方へ突撃する。手にした武器が轟音と火花を散らし、そのたびに遠くのSaliveが次々と倒れ、塵となって崩れ落ちていく。


「私たちも行くよ。」


 蓮は私を連れて花の後ろについた。


「オオオォォォ!!」


 私たちの動きに呼応するように、Saliveの群れもざわめき、こちらへと突進してくる。


「邪魔。」


 正面から飛び込んできたSaliveを花は蹴り飛ばし、隙を狙って飛びかかろうとした別の一体の前脚を両手で掴む。そのまま抱え投げのように叩きつけ、地面に転がす。続けてその頭を踏みつけると、Saliveの身体は突然崩れ落ちた。さらに数体が迫るが、花の二丁の武器が正確に命中し、動きを止める。


 そうして花が道を切り開き、私たちはその後ろについて包囲網を抜け出した。


「おい!蓮、気をつけろ!」


 包囲を抜けて一息ついた、その瞬間だった。夜の闇に紛れた一体のSaliveが花を回り込み、蓮へと突進していく。


 このままじゃ、蓮は死ぬ。私はそう判断した。


 前は、たとえ蓮が目の前で死んでも何も感じないと思っていた。けれど今は違う。蓮の言う通り、私は蓮が好きで、もっとそばにいたい。だから彼女には死んでほしくない。たとえ自分の命と引き換えでも。


 それに、私は自分が生きている意味をまだ知らない。もしかしたら今こそ、自分がすべきだと思える行動を見つける瞬間なのかもしれない。ただ誰かの命令に従うだけじゃなく、自分で選ぶこと。それが私のやるべきことなのかもしれない。


 だから私は剣を横に構え、蓮の前に立ちはだかり、正面からSaliveの衝撃を受け止めた。


「ぐっ!」


 時間が引き伸ばされたような意識の中、果てしない衝撃を感じる。そして私の身体は糸の切れた凧のように吹き飛ばされた。口の中に液体が溢れ、唇を押し破るように噴き出す。


「「レイア!」」


 宙を舞う中で、蓮と花が私の名を叫ぶのが聞こえた。そのまま地面に激突し、私はもう指一本動かせなかった。


「助からない……」


「行こう……じゃないと、私たちも死ぬ……」


「ごめん……なさい……」


 意識が途切れる直前、ぼんやりとそんな会話が耳に入った。


「グゥ……グゥ……」


 目覚めた時と同じ音。けれど今は、恐怖すらこの身体に訪れない。ただそのまま、私の意識は虚無へと沈んでいった。


 また、ここか?


 周囲は一面の虚無。空間も時間もない。ただ、壊れかけたこの身体だけが、ゆっくりと消えていく。


 これでいい。


 私みたいな人間に、生きる理由なんて元々ない。こうして消える方が、ずっと自然だ。


 でも、現実は私の望み通りにはならない。


 あの光が、“場違い”にまた目の前へ現れた。


 それを見た瞬間、心臓が激しく脈打つ。正体の分からない感情が胸を満たし、思考を奪っていく。


 それが何なのかも、なぜこんなに心を揺さぶられるのかも分からない。


 だけど――


『掴め。』


 頭の中にあるのは、その一つだけ。


 胸に燃え上がる感情は毒のように全身へ広がり、血が沸騰する。細胞一つ一つがそれに共鳴し、身体は炉の中に落ちたように焼けつく。


 私の手は勝手に前へ伸び、砕けた身体が少しずつ修復されていった。


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