表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
崩れゆく世界で渇望している  作者: Altsaber
第一章 なおも朦朧としている世界
27/45

25 私の答え

 成功した……?


 そう思った。いや、権核の外側にはまだ何かの物質がまとわりついている。私たちの攻撃を受けてもなお残り、しかも急速に修復されている。


 今さっき権能を使い切ったばかりだ。この状況では、たとえもう一撃加えるだけでも、私たちにはどうすることもできない。敗北はもう目の前まで来ているようだった。


「……ブゥン……」


 聞き慣れた蓄力音が響く。恐鰐が私たちの存在に気づき、攻撃を放とうとしている。


「避けろ!」


 背後からバージョン・ジンが私を蹴り飛ばした。私は前方へ投げ出され、その直後、彼は数本のレーザーにロックオンされる。必死に身体をひねって回避しようとするが、それでも一本が左腹を貫き、直径十数センチほどの穴を穿った。


 私たちが恐鰐の背にいたせいか、全力の攻撃ではなかったようだ。それでも、バージョン・ジンはその一撃で完全に崩れ落ち、次第に生気を失っていく。


 私は蹴り飛ばされ、権核の正面に転がった。修復されていく障壁を見つめながら、失敗は分かっていても、再び権能を動員し権核へ向かおうとする。


 だが、私が腕を振り上げる直前、弾丸が耳元をかすめて飛び、権核へ命中した。最後の防御を撃ち抜く。


 それが白夜花からなのか、他の援護なのかは分からない。だがチャンスは一瞬だった。私は迷わず剣を権核へ突き立てる。


 触れた瞬間、剣は強く吸い付くように固定され、次の瞬間、指先から全身へと突き抜ける激痛が走った。反射的に右手を離してしまう。


 だが、この程度の痛みで皆の努力と犠牲を無にするわけにはいかない。私は再び手を伸ばし、吸い付いた剣を握る。そして無意識に手を離さぬよう、左手で右腕をへし折った。


 それでも痛みは弱まらない。salv1の権核が持っていたあの温かさとは違う。この権能は荒れ狂い、身体の内も外もすべてを溶岩で包み込むかのように焼き尽くす。さらに厄介なのは、吸収された権能が制御を聞かず、これまで受けた傷を修復し始めることだ。自分で折った右腕さえも。


 この痛みは、かつての飢餓と同じように、手を離せと本能に命じてくる。数少ない本能の助言だった。


 だが、その助言は不要だ。だから私は再び右腕を折る。


 そうして、折っては修復され、折っては修復される循環を繰り返した。


 時間が引き伸ばされたように遅く感じる中、私は疑問に囚われる。


 なぜ私は身体の声に従わず、この苦痛から逃げない?


 氷宮詩玖ひみや しぐや舞たちの、最後の生きる希望を守るためか?


 では、なぜ私は彼女たちを助ける? なぜSaliveの側に立たない?


 彼女たちが私を救い、Saliveが私を殺そうとしたからか?


 違う。私は生きたいとも思わないし、死にたいとも思わない。どちらも同じだ。


 ならば、なぜ私はここで、こんなことをしている?


 なぜ? なぜ? なぜ? なぜ? なぜ? なぜ? なぜ? なぜ? なぜ? なぜ? なぜ? なぜ? なぜ? なぜ? なぜ? なぜ? なぜ? なぜ? なぜ? なぜ? なぜ? なぜ? なぜ? なぜ? なぜ? なぜ? なぜ? なぜ? なぜ? なぜ? なぜ? なぜ? なぜ? なぜ? なぜ? なぜ? なぜ? なぜ? なぜ? なぜ? なぜ? なぜ? なぜ? なぜ?


 悪夢のように私を苛む言葉。


 なぜ? なぜ? なぜ? なぜ? なぜ? なぜ? なぜ? なぜ? なぜ? なぜ? なぜ? なぜ? なぜ? なぜ? なぜ? なぜ? なぜ? なぜ? なぜ? なぜ? なぜ? なぜ? なぜ? なぜ? なぜ? なぜ? なぜ? なぜ? なぜ? なぜ? なぜ? なぜ? なぜ? なぜ? なぜ? なぜ?


 目覚めてからずっと向き合わされてきた問い。


 なぜ? なぜ? なぜ? なぜ? なぜ? なぜ? なぜ? なぜ? なぜ? なぜ? なぜ? なぜ? なぜ? なぜ? なぜ? なぜ? なぜ? なぜ? なぜ? なぜ? なぜ? なぜ? なぜ? なぜ? なぜ? なぜ? なぜ? なぜ? なぜ? なぜ? なぜ? なぜ? なぜ? なぜ? なぜ? なぜ?


 私を苛み、苛み、苛み、すべてを投げ出したくなるほどに。


「やせきさん、好きです……」


 脳裏に突然、夙の声が響く。夙を抱きしめたときの感情が蘇る。もし私が死ぬことで夙が生きられるなら、私は迷わずそうするだろう。


 なぜ?


 それは、夙が私を生かすために自らを犠牲にしたからだ。


 ようやく、今の私の行動の理由が分かった。


「特に花もあなたのこと好きだから、余計に恥ずかしくて。」


「そうなのか。俺も花が好きだ。」


 ……


「こんな日がずっと続けばいいのに。」


「舞が望むなら、次も付き合うよ。本当は逆のはずだけどな。」


 ……


 過去の言葉と行動が、脳内で瞬く。


 もし私に“好き”という感情があるなら、それは“好きでいてもらえる”という感情そのものを好きだからだ。


 言い換えれば、私は花や舞や夙を好きなのではなく、彼女たちに好きでいてもらえる自分を好きなのだ。


 同じように、私が善意を向ける相手は、私に善意を向けた相手だ。


 氷宮詩玖ひみや しぐたちを助けるのは、彼女たちに助けられたから。


 Saliveを攻撃するのは、彼らに攻撃されたから。


 私は身体の本能以外、はっきりとした感情を持たない。


 だからこそ、私の感情は周囲の人間によって形作られる。まるで白紙が触れた色に染まるように。


 それは模倣でも、誰かになることでもない。


 他者の影響の中で、自分というものを形成していくこと。そして、その中で形作られた私もまた、唯一無二の存在だ。


 これは、私が求めていた答えではない。だが、夙のような出来事を、もう二度と繰り返したくはない。


 私の周囲の世界は崩壊へ向かっている。すべてが取り返しのつかなくなる前に、私は何かをしなければならない。


 残りの問いは、時間に委ねればいい。


 そのとき、私の身体も限界を迎えた。力を失った脚は崩れ落ち、砕いた右腕も支えにならない。私はそのまま、地面へと倒れ込んだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ