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崩れゆく世界で渇望している  作者: Altsaber
第一章 なおも朦朧としている世界
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12 日常のテスト

 剣袋を背負っていると、中からじんわりと安心感が伝わってくる。これは私が目覚めたときに唯一持っていたものだから、私のお願いで舞が機関の人たちに剣を返してもらい、さらに持ち歩きやすいように剣袋まで作ってくれたのだ。


 スタッフの後について歩き、私は一台の装置の前に連れていかれ、その中に座り込む。


 舞から聞いていた。この装置は「権能適応度」を測るためのものらしい。


 四年前、つまり2035年。人類の世界はまだ科学の世界だったが、Saliveと呼ばれる種族が突如侵略してきて、人類は次々とシェルターへと追い込まれた。


 そしてその絶望の最中、ごく一部の人間に適応性があることが判明した。Saliveのエネルギーコア――権核のエネルギーを特殊な装置でその人たちの体内へ移し、彼らにも権能を使えるようにしたのだ。


 だがこの技術を持っているのはSprobeという機関だけで、私がいるこの機関もその数ある支部の一つに過ぎない。


 しかも適応者は自分で権能を補充することができず、この機械を通して権核のエネルギーを吸収するしかない。だからほとんどの適応者はSprobeと雇用契約を結び、Sprobeが転化サービスを提供する代わりに、適応者たちは小隊を組んでSprobeから与えられる任務をこなすことになる。


 氷宮が所属している赤尾小隊もその一員で、だからこそ氷宮は機関の指示に逆らわないのだ。


「検査結果が出ました。適応度は0です。」


 そして私の結果は、ほとんどの人と同じく、適応度なし。


 だが以前、赤尾小隊が私にSaliveを引き寄せる現象を報告していた。彼らのテストによると、低階のSaliveは確かに何らかの影響を受け、無意識に私へ近づいてくるらしい。


 そのため検査結果を何度も疑われたが、何回測っても適応度は0だった。


 以前、私をどこかの部屋へ連れていったあの人たちもそうだ。私が特殊体質かもしれないと考え、検査結果を無視して、人によっては猛毒となる権能を無理やり体内に注入しようとした。だが幸いにもすぐに発覚し、彼らは全員解雇された。


「こちらへ。」


 装置から降り、私はスタッフに連れられて次のテストへ向かう。


 テストはとてつもなく広い部屋で行われる。そのがらんとした空間の中央には、一頭の凶暴な獣が縛られていた。だがよく見れば、それはどの記録にも存在しない生物種であり、Saliveと呼ばれる存在そのものだった。


「salv1、第一階位Salive。名はピ。権核は頭部の第一角と第二角の間にあります。」


 スタッフの声が上方から響く。


 私は慣れた手つきで自分の剣を抜き、権核の位置へ一突きする。すると熱い流れが剣を通して右手へと流れ込み、そこから全身へ広がった。今の私は、力がいくらでも湧いてくるように感じる。


「はあっ!」


 隣のコンクリート塊へ剣を振り下ろす。轟音とともに、大きな欠け目が刻まれた。よく見れば、その巨大なブロックにはすでに無数の傷跡が残っている。つまり、これが初めてのテストではないということだ。


 このSaliveは機関が捕獲した数多くの個体の一つだ。なぜ捕獲するのかといえば、それは彼らの特性にある。


 低階のSaliveは人類にとって大きな脅威ではない。だが同時に、人類の科学では彼らを処理することもできない。Saliveは物理法則を完全に無視した存在で、身体を吹き飛ばされても、近くにある材料で再構築する。コア――つまり権核さえ無事なら、何度でも再生するのだ。


 しかも彼らは食事も必要とせず、エネルギーは無尽蔵に見える。そして攻撃対象は人間のみ。今なお、これは世界が人類に与えた罰だと考える者も少なくない。


 その後に現れた適応者だけが、ようやくSaliveを本当に殺せる存在となった。彼らの権能が権核に触れれば、権核を封印状態にできるからだ。異なる個体の権能は他者にとって猛毒であり、たとえ適応者でも他の適応者の権能が自分の権核に触れれば即死する。


 そのため、ある適応者が得た権核は他者には使えない。さらに、適応度を検出されたばかりの人はまだ権能を吸収して権核を形成していないため、Saliveを倒して権核を得ることもできない。


 そこで人類の科学が登場する。Saliveを消滅させることはできないが、身体を繰り返し粉砕し、再構築前に権核を機械へ送り込み、権能へ転化させる。そして適応者はそれを吸収して自らの権核を凝縮する。そうして初めて、自分の能力でSaliveを倒し、権核の等級を高めていくことができる。最初のSaliveは、いわばスタート資金のようなものだ。


 そして私は適応性こそ持たないが、この剣が転化装置の役割を果たし、権能を私の体内へと変換してくれる。不思議なことに、他の人が使っても同じ効果は出ない。だから私は今もこうして様々なテストを受け続けている。


「よし、今日はここまでだ。休んでいい。」


 上からの声とともに、閉ざされていた大扉が開く。私はそのままホールへと連れていかれた。


 ホールで一番目立つ場所にいたのは、スマホをいじりながら退屈そうにしている雛原舞だった。


「雛原部長、人をお連れしました。」


 さっきまでどこか暗かった瞳が、ぱっと色を取り戻す。まるで黄色い蝶のように軽やかに近づいてきて、雛原舞は私の腕を掴んだ。


「行こっか。今日はね、あなたに見せたい場所がたくさんあるんだよ。」


 そう言って、彼女は楽しそうに笑った。

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