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崩れゆく世界で渇望している  作者: Altsaber
第一章 なおも朦朧としている世界
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10 未だ準備できていない別れと再会

 白い空間にはベッドが一つと、天井に掛けられた「時計」と呼ばれるもの以外、何もなかった。そして私はここで待つように言われた。


「これからどうなるんだろう。」


 右手を目の前に上げ、手のひらを広げる。白くなった指先の先端にはわずかに黒が滲んでいる。私は退屈しのぎにそれを見つめ続け、やがて瞳孔はぼやけ、視線は焦点を失っていった。


 自分が何をしているのかも、何をすべきなのかもわからない。唯一私と繋がっていた剣さえも彼らに持ち去られた。


 それに抗うこともできず、ただこうして待つしかない。どれくらい経ったのかもわからないまま……。


「こっちへ来い。」


 声が私を外界へ引き戻す。見たことのない人物が、ついて来るように合図した。


 狭い通路を何度も通り抜けた後、私は奇妙な容器の中に入るよう求められた。どうやら「検査」と呼ばれるものらしい。


 すべてが終わった後、ようやく広い部屋へ連れていかれると、蓮たちはすでに中で待っていた。


「待て。」


 蓮のところへ行こうとしたが、隣の人物に止められる。そして彼は氷宮詩玖に向かって言った。


「今回の特殊な状況については、専門の隊を派遣して調査する。君たちは一か月の休暇だ。その後、任務を与える。」


「それから、彼だが……」


 その視線が私に向けられる。


「彼には適応性は検出されなかった。しかし、報告された状況から判断して、調査すべき点が多い。すでに本部へ報告済みで、次の指示を待っている。よって彼はしばらくここに留まる。」


「了解した。」


 氷宮詩玖は静かに目を閉じ、その決定を受け入れた。


「待っ――」


 花が何か言おうとするが、氷宮詩玖が手で制し、そのまま皆を率いて部屋を出ていく。


 氷宮詩玖は最後まで私を一度も見なかったが、気のせいか、振り向く直前に一瞬だけこちらを見たように感じた。


「レイア、ごめんね。」


 花は小さく謝り、視線を合わせないままバージョン・ジンとともに荒塚悠の後ろについていく。


 蓮だけが、ずっと優しい目で私を見つめ続けていた。一瞬たりとも逸らさず、いつものままの穏やかな眼差しで。


「コホン。」


 どれほど経ったのか、隣の人物が軽く咳払いをする。そこで蓮はようやく視線を外し、何も言わずに背を向けた。


 去っていく蓮の背中を見つめながら、何が起きたのかはわからない。ただ一つ感じたのは、この別れは長くなるかもしれない、あるいは永遠になるかもしれないということ。


 けれど私は何もできない。氷宮詩玖たちがそう選んだのなら、それが正しいのだろう。私はまだ、彼女たちの決定を覆そうという考えを持ったことすらない。ただ受け入れるだけだ。


「来い。」


 蓮の姿が消えた後、隣の人物に連れられ、再びあの純白の部屋へ戻された。


 こうして私は、また外界との繋がりを断たれた。


「コツ…コツ…」


 この部屋で動くものは、私と天井の時計だけ。


 時間の感覚はない。ただ一番遅い針が六、七周したことだけはわかる。


 私はベッドに座り続ける。日々の検査以外、誰も何かを指示することはない。私の頭の中はこの白い部屋のように何もなく、ただ時間だけが削れていく。


 最初の頃は、蓮と同じくらいの年齢の若い女性が、食事を運ぶついでにこっそり話しかけてきたが、ある時から突然一言も話さなくなった。


 検査中、何人かが私をこっそり別の部屋の前まで連れていったこともあったが、すぐに他の者に見つかり、それ以来二度と姿を見ていない。


 この日常が永遠に繰り返されるのだと思い始めた頃。


「ドン!」


 いつもとは違う乱暴な音で扉が開かれた。そして一筋の黄色い光が飛び込んできて、白と黒しかない世界に色をもたらした。


 その光は私のベッドの前で止まり、ようやく姿が見える。見知らぬ少女だった。


 両手を腰に当て、私を見下ろしている。腰まで届く黄色の髪、今にも輝き出しそうな瞳。その視線は私の全身をなぞるように動いていた。


「ごめん、遅くなった、やせき…」


 そう言って彼女は身をかがめ、私を抱きしめ、顔を私の胸に埋める。


 やせき?


 その行動よりも、その言葉が気になった。もしかして、以前の私を知っているのか。胸が高鳴る。


 自分の過去を知りたいという思いが強すぎて、少し神経質になっているのかもしれない。冷静になると、彼女がまだ私の胸に顔を埋めていることに気づく。


 出会って間もない相手にここまで近づくのは普通ではない。蓮のテントで見つかった後、花が教えてくれたことだ。


「その…ちょっと近すぎない?」


 私は声をかける。


「問題ないよ。だって私、あなたの彼女なんだから。」


 かのじょ? その言葉の意味がうまく理解できない。


「はあ、本当に記憶喪失なんだ。」


 彼女は私から離れ、顔を近づける。鼻先が触れそうな距離。


 声は落ち込んでいるようなのに、目は不自然なほど輝いている。


「彼女っていうのは、あなたが恋してる相手のこと。記憶はなくても、私たちの過去まで否定しちゃだめだからね。そんなことしたら許さないから。」


 燃え上がる。胸の奥で消えかけた希望が再び燃え始める。


「私を知っているの? 私の過去を?」


「もちろん。だって私はあなたの彼女なんだから。」


 彼女は再び強調する。


 こんなに高揚したのは初めてだ。自分が誰なのかも、何をすべきかもわからず、ただの抜け殻のようだった私に、ついに過去を知る機会が訪れたのだから。そこから、自分の進むべき道も見つかるかもしれない。


「なら、私のことをすべて教えてほしい。」


「もちろんだよ、やせき。」


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