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崩れゆく世界で渇望している  作者: Altsaber
第一章 なおも朦朧としている世界
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9 リプル

 私たちの食事、そして荒塚悠の拷問も終わった後、氷宮詩玖が指示を出した。


「ここからリプルはすぐだ。Saliveに包囲されないように、全速力で戻る。」


 そうして、蓮は氷宮詩玖に背負われ、花は荒塚悠に担がれ、私はバージョン・ジンに背負われたまま、一行は風を切る音を立てながら森を突破し、目的地へ向かった。


 食事一回分もかからないうちに、私たちはリプルと呼ばれる場所へ到着した。


 外周に崩れ落ちた建物は、以前見たあの村の拡大版のようで、その間にそびえ立ついくつもの建築物が、かつての美しさを物語っている。


「ここがリプル。元の都市を基盤に開発された前線基地だよ。」


 蓮が私の背後に現れ、そう説明した。


「これはこの都市の守衛。あとで協力してあげてね。」


 都市に近づいたところで、蓮がさらに注意を促す。


「身分証を提示してください。」


 道路の中央にはバリケードが設けられ、その間に立つ守衛が私たちに求めた。


「私たちは適応者だ。」


「では、こちらで登録をお願いします。」


 氷宮詩玖が答え、四人は部屋の中へ案内された。


「そちらは?」


 守衛は私と蓮に問いかける。


「私たちは同じ隊です。この子は野外で見つけた少年です。」


 蓮が答えた。


「今でも外で生き残っている人間が見つかるとは。珍しいな。」


 守衛はそう呟き、私のほうを向く。


「では、少し協力してもらいます。」


 そう言って、守衛は細長い突起のついた筒状の器具を取り出し、私の前に立った。


「腕を出して。」


 私は言われた通り腕を差し出し、彼は私の袖をまくる。


「少し我慢して。」


 蓮が耳元でそっと囁く。


 次の瞬間、守衛は器具を私の腕に刺し、わずかな痛みが走る。やがて筒の中が深紅に染まっていった。


「そっちは終わった?」


 部屋から出てきた氷宮詩玖たちが私に声をかける。


「はい、通ってください。」


 守衛が先に答えた。


「じゃあ行こう。」


 蓮の言葉とともに、私たちは都市の内部へ足を踏み入れた。


 道行く人々は色とりどりの服を着て笑いながら歩き、時折巨大なものが道路の中央を高速で通過する。両脇の建物に掲げられた多彩な看板がこの世界をさらに彩り、私は一瞬で目の前の光景を処理しきれなくなった。


 この場所は決して大きくはない。それでも、外の世界すべてに匹敵するほどの情報量が押し寄せてくる。


「まずは支部で任務報告と休整だな。」


 氷宮詩玖が提案する。


「そうだね。整えばすぐご飯にもできるし、花と悠はもう限界でしょ。」


 蓮が応じる。


「なんでここで私の名前出すの!」


 またもや花の抗議が飛ぶ。


「行こう。あそこの電車のホームからなら三十分で着く。」


 氷宮詩玖の後に続き、私たちは大きな建物の前へ来た。


「入ろう。」


 蓮が私の手を引き、中へ入る。狭い通路を抜けると、特殊な道の脇に出た。


「うぅ…」


 立ち止まった直後、遠くから轟音を立てながら巨大な物体がこちらへ突進してくる。


 叫び声が喉まで込み上げ、脚の筋肉が動き出す。走り出そうとしたその瞬間。


「大丈夫。」


 蓮が私の手を軽く握り、安心させる言葉を伝える。それで逃げ出そうとする衝動は消えた。


 それでも、その巨大な物体が目前に迫ったとき、私は思わず二歩後ずさる。


「ドン。」


 巨大な物体は目の前で止まり、側面の扉が自動で開いた。私は蓮と一緒に中へ入る。


「今回の休整が終わったら、思いっきり食べて、ぐっすり寝て、また思いっきり食べる。」


「バカ、頭の中は食べることだけか。」


「バカって言うほうがバカなんだよ、悠のバカ。」


 花と荒塚悠はまた言い合いを始めたが、私はそれどころではない。目の前の状況に対処するだけで精一杯だった。


「こっち。」


 蓮が私を横へ引く。


「座って。」


 私は蓮の真似をして、彼女の隣に腰を下ろす。


「うぅ…」


 振動とともに巨大な物体は動き出す。同時に強い引力のようなものが働き、私は蓮のほうへ引き寄せられ、準備もないまま彼女の胸元に倒れ込んだ。


「おっと。」


 蓮は少し驚いた様子だったが、私を離すことはせず、片手で抱き、もう片方で私の頭を撫でる。


「レイアも疲れたよね。このまま休んでもいいよ、私は気にしないから。」


 蓮の言葉には不思議な力があり、私の体は自分の意思を離れ、そのまま彼女の胸に身を預け、温もりを感じていた。


「コホン。」


 向かいに座る氷宮詩玖が咳払いをし、こちらを見る。


 その視線は私の体に強制力を与え、気づいたときには蓮の胸元から離れ、姿勢を正していた。


「蓮、この子は後で本部に引き渡すんだぞ。」


 氷宮詩玖が注意する。


「わかってる。この子は何も知らないまま、この世界の争いに巻き込まれてる。これから何が待っているかもわからない。せめて今だけは温もりを感じさせてあげたい。」


 蓮はそう言いながら私の手の甲を優しく撫でる。それは氷宮詩玖への返答のようでもあり、自分自身への言葉のようでもあった。


「ああもう。」


 蓮は天を仰いでため息をつく。


「初めてあなたに会ったときも、彼と同じ感じだった。早くから運命を決められて、みんな可哀想な子だね。」


「少なくとも、私はもうその運命から抜け出した。」


「じゃあ、この子をあなたが歩んだ道に送るの?」


 今度は氷宮詩玖が言葉を詰まらせた。


「彼は違う。あの謎の能力も、あの剣も、大きな価値がある。彼は…第二のZeroになれるかもしれない。」


「あなたの選択は否定しない。でも、いつか自分の心と向き合って、本当にやりたいことを見つけるべきだ。」


 蓮がそう言い終えた直後、再び同じ轟音とともに、巨大な物体はゆっくりと停まった。


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