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緑中の光  作者: いとい・ひだまり
第一章 君と共に
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第八話 空腹

 腹が減った。

 今までこんなことはなかった。


 狐が私になろうとしている。

 狐は私だけを食っていた筈だ。私の気を、私から生まれる不安や執着を。それだけではもう満足できないというのだろうか。私を通して、他のものまで飲み込もうと……。


 世界が暗くなりつつある。狐が私達を闇へと(いざな)っているのだ。なつきから離れなくては。

 彼までもが狐の餌になる前に。


「――きみつき」

「あ、なつき……」

 普段と変わらない様子で彼が話しかけてきた。

 駄目だ。そんなに寄らないでくれ。おかしくなりそうだ。

 どうしよう、不味い。このままではいけない。竜胆さんにも言われたんだ。私が離れれば、なつきと狐との絡み合った憑き合いも、解くのが少し簡単になる。


 欲が抑えられない。これ以上いたらいけない。今すぐ狐を、ワタシを、どうにか……。


 嫌だ、まだいたい。なつきの側に。

 いや……駄目だ。

 だけど、あと少しだけ。ほんの少しだけ。それだけ……。

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