第七話 忠告
「キミツキさん、ちょっといい? 先生にノートを届けてほしいと言われたんだけれど、重いから手伝ってほしいの」
朝方、そう言う竜胆さんに話しかけられたきみつキは、僕の方をちら、と見た。
「……行ってくるね」
「うん」
名残惜しそうに、でも何か決めたみたいに離れる彼を見ていると不思議な感じがした。寂しかったとかそういうのではなく、何かが違うような、不安になるような後ろ姿。見つめていると……
「なつきくんっ」
「わっ⁉︎」
元気な女子生徒の声に、肩が跳ねた。
「烏丸さん」
いつも竜胆さんと一緒にいる子だ。
「どうしたの?」
「一緒に教室行こうや」
「い、いいけど……」
あまり話したことないのに、彼女は『前から友達』みたいなテンションで話しかけてくる。
「なあなあ、なつきくんとキミツキくんっていつも一緒におるよなぁ。いつからおるん?」
「え? ……中学校のときからだけど」
「へぇ〜。仲良しやねぇ」
ニコニコと聞いていた烏丸さんだったが、ずい、と顔を近付けてきて
「なあ、キス、したん?」
「っ……⁉︎」
僕はドタドタと彼女から離れる。
「な、な、なんでそんなこと君に……言わなきゃ……」
「気になるやん。なぁ、したん?」
ずずい、と彼女は僕が折角空けた距離を詰めてくる。
「し、し……てない、よ」
「なんや」
元の距離に戻ると彼女はつまらなさそうに呟いた。
勝手に聞いておいてそんな反応はどうかと思う。
「でも、気ぃ付けや? 唇渡したらあかんで。そっから魂まで食われたら、終いや」
「何を……」
最近よく分からないことばかり言われる。竜胆さんも烏丸さんも、彼女達は一体何がしたいんだ。
「そうや。今の話、キミツキくんに言うたらあかんで。それと、キスも。うち見とるから」
彼女は、しーっと人差し指を口に当てて言う。近付いたかと思うとまたパッと離れて
「じゃあなぁ〜」
そう手を振って教室に駆けていった。……一緒に行くんじゃなかったのか? 小さな裏切りだ……。




