第十一話 もの足りない
「今年は雨が多いわねぇ」
「そうだな。夏祭りがちゃんと開催できるといいんだが」
もうそんな時期か、なんて両親の会話を聞きながら思う。
「美味しい? なつき」
「うん、美味しい」
ハンバーグを口に運ぶ。
そういえば僕、ハンバーグ好きなんだった。
なんだか、これまでよりずっと味を感じる。
あの日、竜胆さんと烏丸さんに両手をかざされてから、僕の世界にはゆっくりとゆっくりと色が戻ってきた。色んなものがその形を取り戻していって、忘れていた世界の鮮やかさを思い出してきた。
でもただ一つ、戻ってないのはきみつキ。
竜胆さんや烏丸さんに聞いたけど、見つからないらしい。
それと、僕が気にしてそっちに意識を引っ張られそうだから言いたくなかったらしいけど、僕に少しだけ憑いてる狐がきみつキにも憑いてるんだと。そしてあろうことか僕が、その狐に力を貸してるって言うんだ。そうすると、そこに繋がりが生まれてきみつキの方の狐が上手く祓いきれないらしい。……そんなこと言われたって、狐に力を貸した覚えも、貸してる自覚もないんだけどな。
仕方ないから、僕は時間の経過で進む浄化に専念して、彼女達は僕との繋がりがある狐を辿ってきみつキを探すことになった。
……なんだか、彼がいた頃がずっと昔のように感じる。
そしてどうしてか、そわそわと落ち着かなさと喪失感を感じるんだ。彼とまた、会える日は来るのだろうか。
あ、でも、今度祭りがあるんだ。そこに行けば会えるかもしれない。……なんとなくだけど。




