謎に謎を呼ぶ
本日出した2話目です。
「………なあ」
「…なんだ」
「今って何階?」
「…地下6階」
「エンカウント率は?」
「…ゼロ」
「どうなってるの?」
「……………さあ?」
おかしい。さっきから次の階層までの最短ルートを通って進んでいるのだが、全く魔物に遭遇しない。…マジでどうなってるんだ?
「試しに敵に会いに行ってみるか?」
「…勝てるのか?」
「この階層ならいける。最大でも60だから」
「…ならいけるか」
「………そのレベルでいけるかいけないかを訊いてる今の状況がおかしいと思うよ」
それはユウのレベルに対してか、はたまた魔物のレベルに対してかは、僕にはわからなかった。
マップを見ると、5秒歩くと魔物と遭遇する場所にいることが分かった。とりあえず会いに行ってみることにした。
「グオオオオオオオ……………」
犬型の断末魔がダンジョンを覆った。まさかの一撃だった。一撃を当てたユウが首をかしげていた。…どした?
「…レベルに合わない弱さにびっくりした」
一応、魔物は僕らを見た瞬間に吠えながら突っ込んできたのでエンカウントはするみたいだ。ならどうしてなんだろ?
『どうやら、最短ルートには魔物の嫌がる壁があるようです。それが原因で今まで出くわさなかったようです』
壁?
『見えない壁です。人族や魔族などは外側の魔素を使いますが、魔物は魔素を保有してます。それを利用したもののようです』
ということは―――――
「〈ウインド〉!」
少量の風が発生する。
「やっぱり弱くなってる。最短ルートの通路だけ魔素が極端に少ないみたいだな」
『ちなみに魔物が弱いのは、戦闘経験が少ないからだと思います。ここにいるのは、なわばりを意識するものが多く、魔物を食べても美味くないので争ったりはしないようです』
なわばりがあるなら余計争いそうだけど…。
『まあ、このダンジョンに魔物が少ないので仕方ないでしょう』
………もういいよ。そういうことにするよ。
ちなみに、倒したことで得た経験値はユウのレベルが2上がることで証明された。…うますぎだろ。
そういうわけで、僕たちはレベルアップも兼ねることにした。高いに越したことはないからね。このダンジョン、マジで異常だな。Sランクモンスターを15体倒さないと上がらないくらいな僕でも10体倒せば上がるなんておかしいよ(笑)
30分で30体倒した僕は、7階へ続く階段でみんなと合流した。
「なんぼ上がった?」
「8上がった。これで80だ!」
「…14」
「私は1です」
ロイドやユウは結構上がったようだ。…何気にユウがロイドと同じになっているのがビックリだった。メアはレベル不詳なんだが、1上がったってことはまだ上がる領域なんだな。…最大なんてことが無くて安心したよ。そしてノインだが、
「レベルの規定がないからレベルは上がんなかった!」
「………どゆこと?」
訳わかんないことを言ってきた。
「私にはレベルが存在しないの。ただ、倒すたびにステータスが微力ながら上昇するの。まさに反則!」
「…ちなみにどれくらい上がったんだ?」
「全ステータス+10000!」
「………反則じゃね?」
「普通は一回でどこかのステータスが1か2しか上がらないからバランスは考えられてるよ」
てことは、それだけここが異常ってことみたいだな。ほんとやべえな。…どうしてここには誰も来ないんだろ? こんなんだったらみんなが狩りにやってくると思うんだけど。
そんな気持ちで7階へ降りたアキだったが、
「さすがにこれはねえだろ!」
「………もう、何も考えないほうが良いよ」
僕は今3階にいる。どうやらここは謎空間らしい。…意味はそのままさ。
「………俺、帰っていいかな?」
「待て、流石にそれは止めてくれ! ここまで来た意味が単なるレベル上げになってしまう!」
「それが、物語の筋書きでは―――」
「メア、そこでそういうことは言わない」
………それは言ってはいけないことだ
「…もう、床ぶち壊していかないか?」
「俺もそれには賛成だ」
「ノイン、一旦剣に戻るか? 疲れただろ?」
「そうしようかな………床を壊すなら降りたときに出るね」
「おう」
………もう冒険者らしくないよな、僕たち。まあ、わかってたことなんだけどさ。
「じゃ、いきますか―――――〈メテオナックル〉!」
天井に張り付き、そこから一気にズドーンである。衝撃波と共に天井の一部が崩れていたが、それは下階層全てに起こることである。なに、一つ増えるだけだ。気にしちゃいけない。途中、何かが手に当たりトマトの破裂した音がしたが気にしない。たとえ、それがラスボスであっても、だ。
後から降りてきている三人を見ながら、僕は最下層の10階に到着した。その階層はどこかの集落を思い出させるものだった。鉛筆型の藁の建物(たぶん家)や真ん中にある噴水(地下に噴水?)。他にも言いたいことはたくさんあるが無視することにした。そうこうしているとみんなが僕の横にやってきた。
「………ここはダンジョン、なのか?」
「人の住みやすそうなところですね」
「藁のほかにも、あれは………鱗?」
三者三様な第一印象を聞いたのちに、僕たちは町の中入ることにした。
「ちょっと! 早く出してよ!」
………ノインはいつも忘れられる。
「これは、魔道具か?」
入ることすらできなかった。この魔道具、対となる特定の指輪を付けた人だけが通過できるような仕組みになっていた。まあ、ドラリオンの聖属性には結界の封印・解除・破壊などの力もあるから、斬ればすべて終わりなのだが穏便に入りたいので却下しているのである。
「どうしようか…」
「中の人を呼ぶ?」
「外からの情報をシャットアウトしているみたいだから、呼んでも無駄だよ」
「…念話」
「親しい相手じゃないとまだ使えないんだよ…」
「人は入らず、伝達物を投げるとかは?」
「まだそれがマシだな………何も思いつかんし、それでいくか。」
外から来たもので冒険者の依頼で調査に来たもの、決して町の器物損害を与えない、とだけ書き、紙飛行機を飛ばした。縦横無尽に飛び、いろんなものを避けながら、目的地の村長の家に向かっていく。そして、それが村長の手に渡ったのを確認し、報告する。
「なんとか着いたぞ」
「………どうやってあんな動きをさせるんだ?」
「元々、紙飛行機は得意だったんだ。スキルも使えばこれくらいは出来るさ」
投擲のスキルを究めると、投擲物を任意の場所に飛ばすことが可能となるのだが、普通は視界内でしかできない。だが、マップの位置探知があれば見えない地点にも飛ばすことが出来る。速度はやや落ちるけどね。なんでも取っておくに越したことはないと、この時思った。
それから何分か経った後に2、3人の人がこちらに向かってきているのに気がついた。一人は村長らしき人なので交渉か何かかな?
「お主らのランクはいくらだ?」
「………僕は青、この男は赤、他は黒だ」
「…」
村長が横にいる男と話をしている。…あれがオッゾか。
「…どうやら嘘は言ってないようですね」
ってことは認めてもらえ―――
「では、さようなら」
と言って周りから黒装束の人たちが突如現れ僕たちの周りを覆って、武器の切っ先をこちらに向けてきた。
ど、どゆこと!?
3000字くらいが自分にはしっくりくることが分かったので、
これからは3000字を不定期に出そうと思います。週一は確実に出す予定なので長時間待たされるなんてことはないと思いますが、個人的な事情で最近投稿がまばらなのは申し訳なく思ってます。
こんなことがこれからも続くと思いますが、よろしくお願いします。




