神の信仰は無に等しい
昨日出せなくてすみません。ち、違うんですよ。別にサボってたわけではないんですよ。
ちょっとした問題があったがなんとか買えた。あのオーナーはどうかと思うが、仕事に関しては礼を言っておこう。帰る直前に服を一着分くれたのだ。
アフターフォローの一つと言っていたが………正直そんなものは存在しないと思う。たぶんこれからもご贔屓にとかいう感じだろう。
昨日見てきたが、ノーゼンでの物価は他のところよりも高くなっている。まあ、こんな場所だし、作物が育たないとか色々あるのだろう。その中でも服は特に差が激しかった。
この世界の服にはナイロンが使われているが、どうも入手方法が難しく、手に入っても服に形を変えるのに結構労力がいるらしい。一体どんな作り方なんだよ…。
そういったこともあり、服自体が元々高いのだがここではその2倍以上高い。ほんとに高い。某アパレル業界で上から数えてすぐのユニ〇ロでの最低価格が一着二千円になったようなものである。マジで高い。
ま、ここまでしてもらったわけだし、流石に友好的には無理だけど邪険にはしないでやろう。コロッといってしまうアキであった。
「させと、まずはお前の傷をどうにかしないとな…」
泊まってる宿部屋に戻り、無反応(に見える)なアイナに向かっていた。てか、これでよく今まで生きれたな。僕なら死んでそうだ。てか自殺してる。復讐心でもあるんだろうか? 人間、気力だけでどうにかなるとも言われるしね。たまにだけど。
ちなみにもう一人の子はちょっと用事を頼んでおいた。何かを目的に買ったわけではなかったので使い道に困っているところだ。………衝動買いは駄目だな。
それよりも、さっき手に入れたスキルがなんだが、
〈魔術創造〉
魔術を創造できる
効果内容を想像し魔術を放つと魔術を創造できる
一度創造した魔術は以後、想像なしで使用できる(ただし、想像するほど効果は上昇する)
存在する魔法と同じ効果を持つ魔術を想像する場合、その魔法以上のペナルティが発生する
反則だった。いや、これは流石にダメでしょ。だってこれ、存在してても対価さえ払えば作って使用できるってことだし。よくあるやつの上位互換じゃん。よくこんなものがオリジナルにあったな。この世界の常識がぶっ壊れるぞ…。
ただ、魔法と魔術ってどう違うんだ? 詠唱と魔法陣みたいな感じで違ったりするのもあるけど、陣使っても魔法ってアイゼンでは学んだし…。ほんとに何が違うんだ?
『簡単に言うと、この世界に元から存在していたのが魔法で、存在していなかったのが魔術です』
オリジナルで作った魔法とかそういうこと?
『だいたいあってます。ただし、複合魔法は魔術ではありませんのでご注意ください』
複合魔法は二つ以上の魔法を一つの魔法として混ぜ合わせた魔法である。簡単な例で言うと、水と土で泥になることだ。複合魔法はこれの泥にあたるものである。まあ、それはオリジナルとは言いにくいし仕方ないよな。しかも複合"魔法"ってはっきり言ってるし。
…ぶっつけ本番で失敗したら元も子もないし何かやってみるか。………よし、これでいいか。
「我求めるは無限の可能性 星に願いを届けたまえ 〈魔術創造〉!」
ドオオオン!
床にみかんが食い込んだ。………怖っ!威力ヤバすぎやろ。一番の驚きはそれでみかんに傷一つないことだよ。
今創った魔術は物を生成する魔法だ。魔素(今更ながらほぼMP)を消費し生成するのだ。まあ、等価交換だけど。消費が軽そうなみかんを創ってみたわけだけど、まさかみかんが飛んでくるとは思わなかった。
今更だが、どうやらこのスキル、魔術創造は詠唱必須らしい。創った魔法は詠唱いらないけど。ちょっと使いづらさが出てきてるな…。これくらい我慢するけど。
何度かやってみたけど、どうやら落ちてくる方向、速度は変更できないらしい。唯一、地点の変更ができるようだ。半径3メートル以内だけど。………まあ、これにもレベルが存在しているみたいだしこれから使いやすくなるよ、うん。
さてと、じゃあ創りますか。エリクサーを! 前置きが長いって? 知ったこっちゃない。……………これは無理かよ。じゃあこんなもんでいいよ。
「(省略)〈魔術創造〉!」
唱えた後、手のひらから半透明な蝶が出てきた。その蝶がアイナの周りを舞い、回っている。その蝶がゆっくり2、3周したところで蝶が増殖し出してアイナを覆った。何分かそのままだったが、パキッという音の後に蝶が全方位に弾けて霧散し、覆ってた場所には完治したアイナがいた。
創った魔法は蘇生一歩手前。効果は、蘇生はできないが生まれる前から無いものを除いた全ての状態異常を完治と体力全回復である。ちなみに欠損も状態異常扱いらしい。なので、無くなった肉や骨も元に戻るのである。自分には使えないけど…。まあ、仲間を助けれるだけ便利だよな。
そしてアイナだが、僕の予想通り素体が良かった。茶髪で顔が丸く、鼻も低すぎず高すぎない。それでいて全体のバランスがいい。…これってほんとに20代か? 高校生でも通じるんじゃないか? ただ、まさかあの状態から治ると思ってなかったのか、今の彼女の顔はちょっと残念だ。呆けています。
そして今知ったのだが獣人だった。ふさふさしてそうな犬耳である。耳も欠損してたのか。
「あの、大丈夫?」
何やってんだよ! 最初の一言みんなこれかよ! ロイドを助けたときもこんなだったぞ! いや、あいつは男だしいいのか。………こういう時、咄嗟に言える力が欲しいです。
「あ、あの………これって? にわかに信じがたいのだけど、怪我が、」
「ああ、完治してるぞ」
「! う、ウウ…」
「う?」
「うわあああああ!」
注意! 悲鳴ではありません。泣いてます。そして10分後…
「私に出来ることはあまりございませんが、あなた様のために頑張らせてもらいます!」
急展開、そしてテンプレ乙! まあ、それだと僕が楽できるのでそれはそれでいいんだけどさ。しっかし、目がめっちゃキラキラしておる。これは危険ですね。…何かにまつりあげられないか心配になってきた。
「あ、ああ。よろしく。」
「はい! どこまでも、我が神よ!」
…先が不安になってきたよ。




