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生命線上に独白の告発を  作者: 為世 斐文


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第27話「友達3」

「さしで喋るのはあまりなかったよね」

「まあ、そうだね」

 店を出て、近くの公園の机のあるベンチに座った。

 なんて話を切り出そうか。

 「実はこんなことを言われていて、とても悩んでいる」こう言ってしまってもいいだろうけど気恥ずかしいし、桜田さんに迷惑をかけるわけにもいかない。

 と言うよりも、むしろ桜田さんの話を聞いてあげた方がいいのではないかと思う。

 学校での雰囲気はないし、むしろ暗いというか、何かを隠している表情だ。

「なんかあったの」

 そう聞くと、桜田さんは買った雑貨から俺に視線を向けて、笑った。

「それはこっちのセリフでしょ」

「まあ……」

 やはり、どこか変な感覚を覚える。考えすぎだからだろうか。

 まあ、でも……深く追求してもな

「じゃあ、相談というか、なんだけど」

「うん。聞かせてよ」

 桜田さんは雑貨を机に置いて、手を重ねる。

「前の、玉乃さんはさ」

「うん」

「言うと、元カノなんだ」

「え?」

 まあそうなるよな……

「だけど、なんかずっと切れない線で結ばれてるというか……それで互いに会ってるみたいな感じで。正直、俺はまだ好きで、今の関係よりももっと、前の関係よりももっと、深く関わって生きたいって思ってる」

 桜田さんは黙って小さく頷いた。

「前、結構普通に嫌われたことしちゃったみたいで……既読、付かなかったんだけど。誤解だって、言われたんだ。でも、ちゃんとは説明してくれなくて、泣いてたからあまり質問できなかったんだけど……その時に言われた言葉があって」

「うん」

「『私たちって、今は友達……だよね?』って言われたんだ。どういう意味だと思う」

「んー……」

 机に置いていた雑貨をまた触っては、顔を伏せてぱっと顔を上げる。

「今の話だけで判断するね」

「うん」

「“これ以上は関わらないで”って言ってるんじゃないかな」

 言葉が詰まった。

 やっぱりそう……なんだな

「既読付けないって、みんなは付いてたってことなんでしょ?」

「うん……」

「それなら尚更、距離感を保ってる証拠だと思うな」

「やっぱり、そうだよな……」

 うぬぼれていた自分が気持ち悪い。

 笑顔を出すようになったのは、きっといじめまがいな事が高校生になってからはなくなったからで、別に俺だけに向けて特別な物ではなかったということだろう。

「前のさ、推薦の話と関わってたりするんじゃないの?」

 桜田さんは核心に触れてきた。

「まあ……そうだな」

「やっぱり。ここで判断して、どうするか決めてたんでしょ」

「うん」

「じゃあ、行きなよ。たぶん、関わっててもいいことないよ?」

 イラつくが、それが事実で、正しいことなんだと俺も感じている。

 でも、じゃあなんでわざわざ泣いてまで否定したのか。そして、本当に俺が言った通りのことだったんだろうか。

 あの時に推薦の話も持ち掛けようと思ったが、やめておいて正解だったかもしれない。

 相手にとってはあまり考えないでいいことだ。

 むしろ、それを玉乃さんのせいにするのは良くない。

「ありがとう。なんか整理できた気する」

「うん。それならよかった」

 明後日、神社に誘おうかなんて考えなくてよかった……

 席を立ち上がろうとすると、桜田さんはまた俺の手を掴んだ。

「待ってよ」

「なに?」

「どこか行かない?」

「なんで?」

「話聞いてあげたのに、それだけ?」

「え……いや、でもお金とか」

「いいじゃん。今日だけは私奢るよ。バイトしてるし。だから、ね」

 桜田さんは少し強く俺の手を握った。

 確かにまだ桜田さんの件は聞けていない。そして桜田さんの言う通り、俺は今話を聞いてもらったんだ。お礼はした方がいいだろう。

「俺と遊ぶことで、解消されるものなの?」

「うん」

 迷わずいう桜田さんに、俺は頷いた。

「ありがとう」

「いいよ」

 今は、玉乃さんの事を忘れるためにもこの判断がいいのかもしれない。



 明後日は大晦日だ。

 この前のカラオケで、私と李月くんとのわだかまりは解消できたはず。

 それなら神社に誘ってみてもいいんじゃないだろうか。

 んー……

 考えがまとまらない私は、智花に電話をかけていた。

「もしもし?」

「あ、智花」

「どったの?」

 何かを食べているのだろうか。変な口調が聞こえてくる。

「今、大丈夫?」

「うん。古江たちとアニメの談笑会中だけど、別に大丈夫だよ」

 そんなことしてたんだ

「李月くんとのこと……なんだけど」

「あー、ちょっと待ってね」

 古江さんたちに話とだけ伝えて移動する音が聞こえてくる。

 んー……悪いことしちゃった

「智花、そんなにしなくてもいいよ」

「だめだよ。友達の恋愛沙汰なんて聞かないでどうすんの。接種させてもらうから」

 この人は何を言っているのだろうか。

「そう、なんだ」

 少し引き気味で言葉を出すと、智花は笑った。その時には風を切るような音は聞こえず、どこかに座ったみたいだった。

「ほい。で、どんな話?」

「あのね、大晦日で神社に誘っても……いいかなって思って」

「おお、浴衣デートってやつ?」

「ん……そうなるのかも」

「いいじゃん!」

 声高らかに興奮している智花とは変わって、私の心にはやはりまだ少し拭えない気持ちがあった。

「あの……李月くんってさ……前の話だけでちゃんと許してくれたのかな……既読つけなかったこと……」

「えっと……ごめん。どんな話をしたの? 声は聴いてないから分かんない」

 やっぱり見てたんだ……

 恥ずかしくなる気持ちの半面、話がしやすくなるからありがたい。

 また何かを食べ始めた智花に、私は李月くんと交わした会話の内容を包み隠さず喋った。

「なるほどね……」

「私の口からはしっかりと説明してないし……そのあとに、私の感情だけをぶつけちゃって……その、もう関わるなって意味にも伝わらないかなって……思って」

「そうだね……今のままだとそう伝わってもおかしくないかも」

「だよね……」

 どうしよう……

「大晦日の時に、もう一回しっかりと話をしたら? 誘ってみてさ」

 あー……

「いいのかな」

「私には分からないけど、少なくとも断ったりはしないと思うな」

 そっか……

「分かった。ありがと」

「うん。また聞かせてね」

「うん。それじゃあ」

「はいはーい」

 そっか……そうだよね。話をするのは大事だもんね……

 私は意を決して、李月くんに連絡を送ってみた。



「なあ、その雑貨って飾るの?」

「うん。ちっちゃいの好きで、家に沢山飾ってるんだ」

 へー……自分よりもちっちゃいのが好きってことなのか。大きい人ばっかだしな……

「今絶対に失礼な事考えたと思う」

「え?」

「私の身長の事について考えたなら、潔く手を上げなさい」

 むすっと笑う桜田さんに、俺は目をそらして軽く手を上げた。

「やっぱり」

「ごめん」

「まあ、いいよ」

 なんだろう……ペースが早くて、心地いいけどわかんないな……

「もうすぐで夕方だしさ。もうこのまま一緒に何か食べない?」

 そう提案してくる桜田さんに、俺はスマホを開いて確認を取ろうと思ったが、どうやら俺のスマホは充電が切れたようだ。

「分かった」

 これは仕方ないことだ。

 スマホの充電が切れてしまったから、充電をさせてもらうためにも夕飯をともにするのが一番だ。

「スマホ、充電させてもらってもいい?」

 頷く桜田さんからスマホの充電をさせてもらいながら、食べる店を探しに歩いた。

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