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平安貴族の侍従・竹丸の日記  作者: RiePnyoNaro


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供犠の雨乞い(くぎのあまごい) その5~竹丸、雨乞いの成功に安堵する~

 夕暮れ時で雲の隙間から見える空が赤く染まり、イヤでも生贄の子供たちのことを思い出して背筋がゾッ!と寒くなった。


「心配しなくても姫も乳母やも侍女も、今頃きっと、戻って夕餉を食べてますって!」


口では強がるけど、胸の中は不安がモゾモゾと()いまわった。


宇多帝の別邸についたころには、すっかり日が暮れてあたりは真っ暗になってた。


ポツン


頬に冷たい液体があたり、雨が降り出したようだった。


もしや雨乞い成功?!


東中門廊で草履を脱いで廊下に上がると、ドタドタドタッ!と走ってくる足音がして


「にいさまっ!おかえりなさいっ!」


叫びながら走ってきた姫が若殿(わかとの)の腰のあたりに抱き着いた。


不意打ちを食らった若殿(わかとの)はいつもと違って()け損ねて、腰にしがみついた姫の頭を撫でながら


「浄見!どこへ行ってたんだ?心配したんだぞ!」


とろけそうなぐらい優しい口調で問い詰めた。


乳母やも北の対の方から歩いてきて


「あら、平次さま、先ほどお()でになったそうですね!

姫さまの外出をお伝えするのをすっかり忘れてました。」


若殿(わかとの)がしゃがみこんで目線を合わせると、姫が


「あのね、とうさまがね、あめをふらせるぎしきをするから、きよみもさんかしてくれ、っておっしゃったの。

てんのかみさまに、あめがふりますようにっておねがいしながらみてるようにって。

しんせんえんというところで、おいけのそばで、おぼうさんたちがおきょうをとなえてるのを、ずっとみてたのよ!」


なるほど~~~!


「つまり、帝が姫を神泉苑(しんせんえん)に連れ出し、雨乞いの儀式を観賞させてたんですねっ?!」


ん??


でもなぜ?


『雨乞いの儀式』を見せて楽しませるため??!!


私もちょっと見たいけど!!


でも姫の存在を世間から隠してるって若殿(わかとの)が言ってた気がするけど??


不用意に人前に連れ出していいの?


と疑問がわいた。


若殿(わかとの)が安堵と不安が入り交じった泣き笑いのような表情で姫を見つめ


「怖い夢を見たんだって?

実際に誰かに連れていかれたり痛いことをされたりしなかったか?」


姫はジッと見つめられ、恥ずかしいのか真っ赤な顔で目をキラキラ輝かせ


「だいじょうぶよ!

うばやが『とりのふえ』をかってきてくれたときに、そのゆめをみたの!

でももうへいきよっ!」


偶然の一致にビックリして思わず口を挟む


「へっ??!!

取蕗(とりふき)も鳥の笛を持ち帰って以降、変な夢を見たって言ってましたよね?!!

あの鳥の笛に呪いがかかってるんでしょうか??!!」


若殿(わかとの)は真面目な顔で(うなず)


「そうだな。

あの笛は子供を生贄(いけにえ)にする習慣がある遠い異国から持ち込まれたのかもしれない。

あの笛には生贄の子供たちの死ぬ間際の苦痛や恐怖といった強い無念の思いが込もっていて、敏感な人がその思念を受け取れば夢として追体験するのかもしれない。」


そしてフフンと小さく笑い口の端をゆがめ


「帝は今日こそ確実に雨を降らせたいと思召(おぼしめ)したのだな。

是が非でも雨を降らせるために、まだ幼い『予言の巫女』の力を借りようとは、天津神(あまつかみ)のご後裔(こうえい)にしては、いささか心もとないお振舞(ふるまい)だな。」


皮肉気にポツリと呟いた。



最後までお読みいただき、ありがとうございました。

水笛って簡単なつくりなのにリアルな鳥の鳴き声に聞こえるところはスゴイって感動しますよね!!

時平と浄見の物語は「少女・浄見 (しょうじょ・きよみ)」に書いております。


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