朝堂の晦冥(ちょうどうのかいめい) その4~竹丸、真の黒幕と真相を知る~
謎が残ったまま話を終え、関白邸に帰ることにした帰り道、流言飛語紙を読み直してると、あることを思い出した。
「あっ!そういえば、先週号の煽り文句は
『七宝屋の主人が〝娘は大物政治家に弄ばれて死んだ!”と涙の訴え!』
だったのに、今週号を見ると
『朝廷の闇!最大官庁の高級官僚!後宮美女儒の性上納に対する見返りとは?!』
という見出しに替わって、内容もそれ一色でした。なぜでしょう?」
若殿は不機嫌そうに眉をひそめ、
「ふぅーーーっ」
ため息をついた。
「そうか、それならすべて説明がつく」
えぇっ??!!
何が分かったの?
「何ですかっ!!教えてくださいっ!!
なぜ記事が突然差し替えられたんですか?
大江珠縁が贈った絹織物五十匹と廷子が受け取った五匹の食い違いは、なぜですか?
秘密を流言飛語紙に売ったのは、誰なんですか?」
疑問を一気にまくしたてると、若殿は
「その答えは、侍子さん(仮名)が誰なのかを突き止めれば、自ずと明らかになる。
蔵司が性接待をしてまで、防ぎたかった吸収合併だが、中務省が存続に便宜を図ったことが明るみになれば、蔵司の消滅は逆に早まるだろう。
では、得するのは誰か?
蔵司が消滅すれば、その業務と権限、俸給が内侍司に集まる。
その長は尚侍だ。」
「あっ!だから侍子さん(仮名)ですね!
尚侍の目的は、蔵司の性上納という醜聞を世間に公表し、蔵司を解体に追い込むことですね?
じゃあ贈り物の絹織物の量の食い違いは、なぜですか?」
「大江珠縁から受け取ったのは島小弁だから、島小弁が四十五匹分、中抜きしたんだろう。今後の生活に不安があるようだったからな。」
「はぁ?!!すぐばれるのに大胆ですねっ!!じゃあ、流言飛語紙に漏らしたのはどっちなんですか?
島小弁が銭のために?それとも尚侍が?」
若殿は眉根を寄せ、一瞬、苦痛の表情を浮かべ
「『大物政治家に弄ばれて死んだ七宝屋の娘』(*作者注:「脆弱の紅瑪瑙(ぜいじゃくのあかめのう)」に詳細はあります)の話をもみ消したかったのは誰だ?」
えぇっ??!!!
う~~~ん。
そういえば、その話、聞いたことがあるような無いような・・・・。
「私が知ってる人ですか?加害者の大物政治家?ってまさかっ!」
あっ!!
思い当たる人は一人しかいない!!
若殿は深刻な顔でウンと頷き
「そう。我が父上・関白どのは、今回のちっぽけな事件の噂で、己のより大きな醜聞を、叔母上・尚侍どのと手を組み、もみ消そうとしたんだ」
寂しそうに、呟いた。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
世相への風刺になってるでしょうか?・・・・え?なってない?ウソっ?!
時平と浄見の物語は「少女・浄見 (しょうじょ・きよみ)」に書いております。