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丑寅の隠(うしとらのおに) その3

 声のする方へ几帳と壁の間を進むと塗籠(ぬりごめ)の北東の角に若殿(わかとの)がいた。

塗籠(ぬりごめ)の北東の隅には東壁に沿って置いてある長櫃の上に、唯一むき出しで鉢植の木が置いてあったようだ。

というのも、その植木鉢が床に落ちて割れていたから、おそらくそこにあったんだろうとしかいえなかった。


素焼きの鉢で土も普通の腐葉土っぽくて、根が見えてるその植木は一尺(30cm)ぐらいの高さで、特徴的なのは葉っぱがギザギザなこと。

「これは何の木ですか?」


「ヒイラギだ」


あっ!と思い出して

「確か風水師が鬼門に置くと魔除けになるって言ってましたよね!北東は鬼門ですからそのためですよねっ!」

得意になってしゃべった後

「・・・ということはっ!もしかしてっ!鬼が入ってきたんじゃないですか!魔除けを叩き割って!あの世から!

紀成夫(きのなるお)は鬼に殺されたんじゃないですか!

陰陽師に恨まれて、鬼を使って殺すように仕向けられたとか!式神を使うかわりに!」


若殿(わかとの)が顎に指をあて考え込み

「確か、滋岳川人(しげおかかわひと)という陰陽頭(おんようのかみ)が『文徳天皇陵の設置地の選定が発端となり地神(つちのかみ)の追跡をうけるも、呪を唱えて逃れた(*作者注「今昔物語 巻第二十四 本朝 付世俗:滋岳川人(しげおかかわひと)地神(つちのかみ)に追はるる(こと)、第十三」)』との逸話があったな。

鬼ではなくとも異形のモノを操る力があるなら、人を襲わせることも可能か?」

ついに若殿(わかとの)怪奇現象(オカルト)を受け入れたっ!

わーーーい!仲間だっ!

・・・でも一人ぐらい冷静な科学的思考の人が必要かも。


塗籠(ぬりごめ)を出て主殿を調べることにした。

ここもキッチリ片付いていて狩衣や袴が脱ぎ散らかされてることもなかったし、筆や文や書が床に落ちてることもなかったし、紀成夫(きのなるお)が夜中にこっそり帰ってきたにしては片付きすぎてた。


若殿(わかとの)は侍女を呼び出し話を聞いた。

聞いたところによると、今朝、紀成夫(きのなるお)が発見された後、侍女が掃除したらしい。

侍女の話では旅装束は脱ぎ捨てられて残ってたし、乾飯(ほしいい)やひょうたん、書や常備薬、身だしなみ用品などの旅支度がはいった荷物はあったらしいがすべて片付けたとの事。

若殿(わかとの)がそれを聞いて舌打ちせんばかりに苛立ってた。


「旅の荷物にあったものがわかりますか?選び出してください。」

侍女に命じ選び出されたものを前にして次々と調べた。


一枚の文にサッと目を通し

「竹丸、これは何だと思う?」

と差し出した。


それには

『うしとらのおにあり ゆげこれお』

の文字が書かれていた。


「どういう意味でしょう?丑寅(うしとら)に鬼がいるってことですか?『ゆげこれお』って何でしょう?」

(その4へつづく)

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