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石龍の花嫁(せきりゅうのはなよめ) その10

若殿(わかとの)はフフンと得意げに笑った後、白陀(はくだ)に渦巻状列石の秘密を教えに行き驚いた白陀(はくだ)は慌てて庭に出てくると同時に若殿(わかとの)はなぜか火鉢を持って庭に出てきた。

その火鉢は表面がザラザラしていて見た目より全然軽く、私でもひょいっと力を入れずに持ち上げられた。

水瓶に水を汲んでくるよう私に指示しその通り持っていくと若殿(わかとの)は水を火鉢の表面にかけ始めた。

するとその火鉢の表面を水は伝わり滴り落ちる途中で水が火鉢にしみ込んで消えてなくなった。

「えっ?水を火鉢が吸い込みました!なぜっ?!」

とビックリして声を上げると若殿(わかとの)

「これは能登で産出する土(珪藻土)を使って作った火鉢だ。この土(珪藻土)は中に空気を多く含むことができるから断熱効果に優れていて火鉢によく使われるから屋敷内で火鉢を探した。この屋敷の火鉢にもこの土(珪藻土)が使われていたのは幸運(ラッキー)だった。つまりxx古墳の上部にある渦巻状列石はすべて能登産の土(珪藻土)を使っているんだろう。」

だから

『龍頭は水を操る』

『龍頭は能登より出づる』

と古文書にあったのか!へぇ~~~!

これで全部スッキリ解決っ!と思ったけど待てよ・・・・

「そういえばまだ『龍を宿した証拠』は見てません!あれは何だったんですか?」

と渦巻状列石の影に見とれている白陀(はくだ)に話しかけると

「あぁ、ちょっと待ってろ」

とどこかへ何かを取りに行った。

帰ってきた白陀(はくだ)が手に持っていたものは奇妙な生き物の死体で、顔から頸にかけては馬みたいで尖った口がニュッと前にでて、頸から下には手も足もない胴体があり、一番下には先端がクルクル巻いた尻尾のようなものがついている得体のしれない生き物の干物だった。

身体中に節があるようで背中部分はトゲトゲしていた。

「ナニコレーーーーっっ!不思議な形ですねぇ!生き物ですか?作り物ですか?これが龍を宿した証拠?ということは龍の赤ちゃんですか?スゴイーーーー!ホントに善女龍王(ぜんにょりゅうおう)は龍を宿したんですねぇ!疑って悪かったです!」

と今日一番のテンションで感嘆の声を上げた。

白陀(はくだ)はバツが悪そうにハハハと笑い

「いや~~実はこれは『タツノオトシゴ』という魚の一種なんだ。海沿いに住む人々なら知ってるだろうな。これを使って『善女龍王(ぜんにょりゅうおう)が産み落とした龍の赤子』だと騙せるのは知識に暗い都の人々だけだよ。ハハハッ。まぁでもお前なら十分信じてくれただろうなぁ!」

と言ったけど、私はまだこの生き物が魚の仲間で海を泳いでるなんて信じられない!

大体ヒレもないのにどうやって泳ぐの?絶対龍の赤子だ!

この目で泳ぐ姿を見るまで魚だと認定しないぞ!

 日が高くなるにつれ段々崩れた影がどう見ても龍の顔に見えなくなってくると、渦巻に並んだゴツゴツした不格好なただの石たちがまたひっそりと『そこにいるだけ』という自分の役目をはたしているように見えた。

まだ残っていた疑問を口に出し

「結局、xx古墳の上部に渦巻状列石で龍の影を作った意味は何だったんですか?」

と聞くと若殿(わかとの)は目を細めはるか遠い古代(いにしえ)を見透かすように

「xx古墳に埋葬された皇女(ひめみこ)は『龍の花嫁』だという伝承があるだろう?

その身体が眠る場所には夫となった龍がいつまでも彼女を見守り続けているという意味だったのかもしれないな」

と呟いた。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

タツノオトシゴって動いてる映像を見るまで魚って信じられませんでした!

時平と浄見の物語は「少女・浄見 (しょうじょ・きよみ)」に書いております。

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