大学の非常勤講師になった主婦
通勤移動に電車を使うことになったため、購入したポケットWiFiを持ってから、結子には奇怪な脳直受動能力がついたらしい。
持ち主の結子がそれに気づいて体感するのはまだ先の話だが…
水戸結子。
非常勤講師として週2回、隣県の県庁所在地にあるこの大学の教壇に立っている。
今年大学2年生の長女、高校3年生の長男、中学2年生になる次女の3人の子どもを持つ45歳の主婦講師である。
地元で、Information and Communication Technology 俗にいう「ICT」の子ども向けイベントに、結子が関わっていたことが縁で、この大学の教授と知り合い、情報収集や処理、伝達を円滑に行うために必要なコミュニケーション力と、社会的なリスクマネージメント力を養うための講義を任されるようになった。
結子は人前に立つことが、苦にならない性格だったこともあって、地元のインターネット生配信番組に呼ばれて、「ICT」の話をしたことをきっかけに、シリーズネタを提供したらレギュラー出演することになった。
シリーズネタとして提供したのは、結子の日常業務のマナー&印象のセンスアップメイク講師としての講座と称したコーナーだったのだが、次第に番組進行にも関わるようになっていって、いつの間にか番組MCとして進行も請け負うようになった。
ネット配信番組は、1ヶ月に2回1時間半程度行う生配信だが、事前取材やコーナー動画制作の構成、取材企画で行う先方とのやり取りなど、結子の講義に活かせるネタ源としては尽きることはなかった。
ネット配信での露出が増えると、釣りとかゴルフとかサバイバルゲームとかお城巡りとか、以前から興味があったことも、
「やってみたい」と結子が言うと、番組コーナーとして作ってもらえるようになった。ショップやゴルフ練習場からの提供協力や提携依頼もあったので、趣味と実益の両立とまでは言えないけれど、結子にとってはスキルアップとインターネット生配信の経験値の積み上げになっていった。
その番組MCとしてのスキルを買われて、地元のイベントの司会や商工会、青年会などの講演会の進行役にも起用されるようにもなっていた。
この大学の教授と「CT」の子ども向け講座の縁で知り合ったのも、「ICT」のイベントMCを結子がしていたことで一緒になったのか、講師として一緒になったのか、今となってはあやふやなほどである。
その都度、その都度の経験を、子ども向けの講座や大学の講義でフィードバックすると、子どもたちや受講者だけでなく、保護者や大学関係者からも高評価を得ているので、結子の講義は自由受講の講義にも関わらず、毎回教室の出入り口で入退室を確認する職員が配備されるほど、満席に近い状態が続いているのだ。
結子からしても、大学の雰囲気は、学生、職員、教授、教員からの接し方も含めて全体的に、とてもいい印象を持っている。
ただ、この大学には過去に一度世間を騒がせる騒動を起こしたことがあった。
正確には、大きな騒動になるはずのことをもみ消されたという噂があるのだ。




