#1 男子高校生、転生する。
こんにちは、青蛸と申します。
高校生です。
カクヨムで短いホラー小説を書いてます。
本作は異世界モノを書いてみようと思いチャレンジしたものです。期待しないでください。
ぼんやりとしていた視界がようやく解け、眼球は鮮明に周りの光を捉える。
周囲から雑音―いや、人の声らしき音が聞こえてくる。
―知らない天井だ。……あれ、僕は一体……。
―そうだ。僕は……。
僕は、瀬川伊織。高校二年生の夏、いつも通りの朝を迎えた。僕は剣道部の練習のため、夏休み中だというのに朝の七時に起床した。
昨日、夜遅くまで何に役立つかもわからない豆知識の動画を見漁ってたからか、猛烈な眠気がしていた。
僕は回らない頭を掻きながら食パンを袋から取り出して、そのまま噛り付いた。ズボラな性格だね、とよく言われるが、授業はしっかり受けていて成績はなんちゃって上位。剣道部でも強豪ではないとはいえ、高一の春からレギュラー入りしていた。そう僕は俗にいう器用貧乏である。
僕はリビングで失神しているように寝ている父さんを起こさないように手拭いと道着、袴をリュックに詰め、玄関に向かう。母さんもまだ寝ているだろう。
そして、
「いってきます」
僕は、静かに家を出た。
駅前の横断歩道、夏休みの平日だからか人影は少ない。日光が容赦なく僕を刺してきて細い電柱の陰に避難する。
信号が青に変わり、僕はあくびをしながら横断歩道を渡ろうとした。
ガンッ
いきなり強く、重い衝撃が体の側面から受けてしまう。
キキィーーーッ!
衝撃を受けた直後、そんな音が聞こえた。おそらく僕にぶつかった車のブレーキ音だろう。
体がふわりと浮き、十から二十メートルほど吹っ飛ばされた。何もかもスローモーションに感じて「死」を直感する。
僕は重力によって地面に叩きつけられた。頭が猛烈に痛い。
立ち上ろうとしても体は言う事を聞かなかった。
―死にたくない。死にたくない。死にたくない。
意識だけは保とうとするも、眼球に力は入らない。
焦点が定まらず視界が混ざる。目の前にはトラックがあったのはかろうじて分かった。
そうして僕は意識を失った。
……はずだ。
もしかして、助かったのか、と思いもしたが、頭に痛みが全くないことに違和感を覚える。一瞬麻酔か?と思ったが全身の感覚はある。
手を握ったり手首を回したり、四肢をジタバタと動かしてみた。動くには動くが、思うように動かない。
それにそういえば何故か視野が狭い。
―後遺症か?まるで赤ん坊みたいに……。ん?
僕はそこでようやく狭い視野で自分の手を見た。指も手のひらも小さい。それは明らかに赤ん坊の手だった。
僕はここまで来て転生を確信しない鈍感ではない。夢と現実の区別くらいできる。
よくよく見ると天井には豪華なシャンデリアが吊るされている。明らかに日本ではない。
僕は驚くほど混乱していなかった。驚く域を超えて逆に冷静にこの状況を理解できた。
―転生……か。母さん父さん大丈夫かな。最後くらいちゃんと話したかった……。
転生したことを理解した時、ふと両親を思い出す。二人とも少し抜けているところは愛のある親だった。前世、色んなことに挑戦できたのも両親の愛のおかげなんだろう。
今は転生への驚きよりも親孝行できずに死んでしまった悲しみが強い。両親のことを思い返すと目元が熱くなる。
「う、う、うああああん」
僕が泣き出すと使用人らしき女性が駆け寄って来て、僕をあやす。何かを喋りかけているようだったが、何を言っているのかはさっぱりだった。




