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第11話:新メンバー!

 その日、拠点に入った瞬間——


「……なんだこれ」


 翼は足を止めた。


 部屋の中央に、大きなスポーツバッグが置かれている。


 しかも見覚えがない。


「来たか、翼」


 榊が奥から出てくる。


 沙良が笑顔で言う。


「今日、新しいメンバー来るんだって」


「新メンバー?」


「うん。昨日部長が面談してた」


 聞いてない。


 翼は榊を見る。


「言ってないからな」


「言ってない」


「開き直るな」


 その時、ドアが勢いよく開いた。


「失礼します!!」


 やたら元気な声が部屋に響く。


 入ってきたのは、小柄な女子だった。


 肩までの髪を後ろで結び、動きやすそうな服装。


 目がきらきらしていて、立っているだけでエネルギーがある。


「本日よりこちらでお世話になります!」


 深々と頭を下げる。


「磯部 ひよりです!よろしくお願いします!」


 一同、少しだけ圧倒される。


「……元気だな」


 翼がぽつりと言うと、


「よく言われます!」


 即答だった。


 翔が立ち上がる。


「いいねぇ!俺は森 翔!このサークルのムードメーカー兼エース!」


「何のエース?」


 智が即座に突っ込む。


「雰囲気の」


「いらないな」


 ひよりは目を輝かせた。


「すごいです!先輩方、仲良しなんですね!」


「見えてるもの違わない?」


 沙良が笑う。


「私は天野 沙良。困ったことあったら何でも聞いてね」


「はい!」


「俺にも聞いていいぞ!」


「翔くんは黙ってて」


「扱いひどくない?」


 智は椅子に座ったまま軽く手を上げた。


「久我 智」


「クールでかっこいいですね!」


「……初めて言われた」


 最後に榊が短く言う。


「部長の榊だ。以上」

「よろしくお願いします、部長!」


「声量を少し下げろ」


「はいっ!」


 全員の視線が翼に向く。


「……橘 翼」


「翼先輩!」


「先輩ではない」


「でも先にいたので先輩です!」


「理屈が雑だな」


 ひよりはさっそく部屋の中を見回した。


「で、今日は何をするんですか!?」


「まず落ち着くことかな」


 沙良が言う。


 今日の活動は、公園周辺の清掃と地域掲示板の張り替えだった。


 ひよりは終始ハイテンションだった。


「ゴミありました!」


「報告がでかい」


「掲示板ここです!」


「知ってる」


「袋持ちます!」


「助かるけど近い近い」


 翔が笑う。


「すげぇな、新しい風って感じ」


「台風寄りだけど」


 翼が言う。


「翼先輩!」


「先輩やめろ」


「じゃあ翼さん!」


「距離感極端だな」


 ひよりは悪気なく笑った。


「翼さん、なんか最初怖そうって思ったんですけど、全然ですね!」


「それ褒めてる?」


「褒めてます!」


 作業が終わる頃には、全員少し疲れていた。


 ただ一人を除いて。


「次は何しますか!?」


 ひよりだけ元気だった。


「電池どうなってんの」


 智が呟く。


 拠点へ戻る道中。


 翔が翼の肩を叩く。


「賑やかになるな」


「まあな」


「嫌じゃなさそうじゃん」


「……別に」


 否定しきれなかった。


 騒がしいのは苦手だと思っていた。


 でも、こうして誰かが増えていくのは悪くない。


 拠点に戻ると、ひよりが勢いよく宣言した。


「私、このサークル好きになれそうです!」


 その言葉に、部屋の空気が少し柔らかくなる。


 榊も小さく息をついた。


 ボラサーの日常は、


 また少し賑やかになった。

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