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28.クロウリーの手助け


授業を受け、放課後を迎えてから図書室の奥、蔵書室に集まった。

授業が終わって片付けをしていると、直ぐにジェイコブが現れ、マルティーナを支えて先に蔵書室に向かっていた。


私はマルティーナの婚約者ではない。

彼女の婚約者であるジェイコブが支えているのは何らおかしい事はない。


ジェイコブがマルティーナと仲睦まじく歩いている姿にまた目を丸くする生徒は多いものの、何かを言う事はなかった。

正気に戻ったのか、と。

何ともまあ、手のひらの返し方が凄い。


エリザベスとジェイコブがくっついている時はマルティーナに敵意を向けていたのに、逆になるとエリザベスに敵意は向けていない。

きな臭いな。なんらかの力が働いているのでは無いだろうか。


蔵書室には、マルティーナとジェイコブ、アルノルドが既に集っていた。

私が最後に着くと、扉を閉め、防音の魔法をかけた。


これからの話は、誰にも聞かれたくないからだ。


思っていた以上にサクサク話は進み、細かい調整や、協力を仰ぐ手紙を書いた。

エリザベスと離れてたジェイコブは人が変わった様に優秀であり、血の滲むような努力をしているのが手にとる様に分かる。


マルティーナが学園を休んでいる間に、ジェイコブから話しかけられ、仲良くなって。

彼の事を勘違いしていた事に気が付いた。

素直に詫びると、少し前までの自分はおかしかったのだと、ジェイコブは困った様に眉尻を下げた。


そして、今日。

アルノルドとマルティーナを交えて話をして、何となく全貌が見えてきた。


エリザベスは、まともではない。

人の心に付け入るのがとても上手く、気が付かない内に洗脳され、自分の感情でさえも、エリザベスの意のまま。


恐らく、エリザベス本人も無自覚だ。

だからこそ、タチが悪い。


ジェイコブを始め、エリザベスに対し、推測にはなるが、好意を抱いた人間はエリザベスの味方になっていた。

ろくに証拠もないエリザベスのマルティーナに虐められたと言う主張を鵜呑みにしていた。


マルティーナが学園を休んでいる間に、エリザベスに対して誰もが目を覚ました様に距離を置き始めた。


きっかけは、マルティーナが倒れたあの時。

マルティーナの放出した魔力はエリザベスを筆頭に辺りに撒き散らされた。

妖精の加護を受け、妖精の魔力を分けてもらっているマルティーナの。


これまた推測になるが、エリザベスには妖精と敵対する何かが取り憑いている。

もしくは、力を貸している。

だから妖精の力を持つマルティーナの魔力で弱体化したのではないか、と。


「巻き込んでしまってごめんなさい」


今にも消え入りそうなマルティーナは縮こまって上目遣いに私達を見つめた。

アルノルドが笑顔で頭を撫でた。


「気にするな、ティナ。ティナと、ジェイコブの幸せの為だ。それにクロウリー様も力になりたいって言ってくれてるんだ」

「マルティーナ嬢、君の負担は大きい。私達は手伝うだけだから」


肉付きの薄いマルティーナの小さな手を取り、私は笑んで見せた。

まだ困った顔をしていたが、ぎこちなくマルティーナは笑ってくれた。


「俺と、マルティーナの新しい関係の始まりにぴったりじゃないか」


ジェイコブは晴れやかに言い放つ。

これから、ジェイコブとマルティーナは大勢の前で、婚約破棄の大立ち回りを演じる。

数日後の学園主催の夜会で。


「そうね、婚約破棄から始めましょう」


マルティーナは、美しく微笑んだ。


そろそろ終わりが見えてきました。

最近は途中まで書いて、書き直して、とやっているので更新が滞っております。

悩みながら、期待に添えるような、でも予想できない展開だったと言ってもらえるような…、そんな話が書けるよう時間をかけております。

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