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変質者現る

 



「んー、よいっしょー!」

 気合いを入れて地中に根を張る『メグリネ』を引っこ抜く。


 ▽『メグリネ』

 根の部分に薬効強化作用がある事で知られる植物

 また葉の部分は乾燥させる事で香草にもなる

 葉に広がる赤い模様が特徴



 ズボッと勢いよく引き抜いた『メグリネ』の根っこに着いた土をパッパと払ってから根の部分を「とりゃー」と切り落としてはい完成。


 ▽『メグリネの根』20/20


「ふぃー、疲れたぁ…」

 採取も終わり腰を上げようとしたらガントレットシスター、もといマリアさんが覆い被さる様に抱きついてきた。

「お疲れ様っすよ」

(背中にフニっとした物が!明言はしないけどフニっとした物が!)

「マリアさん…、あの、そういうのは恥ずかしいので……」

 布越しの感触をなるべく意識しないようにマリアを引き剥がす。

「ただのスキンシップっすよ。ほんと可愛いっすねぇ」


 からかう様に笑うマリアさんを他所に軽く深呼吸をして気持ちを落ち着ける、なんか余計に疲れた気が……。

 あ、あと従魔達はお疲れモードだったから今は全員送還しているよ。


 ググッと身体を伸ばして空を見てみるとうっすら星空が見えるくらいには日が傾いていた。



「この後はどうするっすか?」

「走って街まで帰ります。マリアさんはどうするんです?」

「そっすね、ならこのまま一緒に街まで送って行ってあげるっすよ。冬歌ちゃんみたいな可愛い子を1人夜道に行かせるなんて事できないっすから!」

「あ、はい。ありがとうございます?」

 力説するマリアに若干引きつつ感謝を述べる。


 まだ会って半日も経ってないのにマリアさんがやたらと可愛いを連呼するようになったんだけど何故?



「えっと、じゃあ急いで帰りましょうか、暗い中での戦闘は避けたいですし」

「了解っす」




 ーーーーーーーーーーー

 日が傾きほとんど夜と言って差し支えない程暗くなってきた頃


「えっと……、スピード落とします?」

「ッ…!まっ…だ…!大丈夫……、っす!」

 かなり余裕を残しつつ小走りする冬歌と全速力でダッシュするマリア、二人は走りながら既に三度程同じ問答を繰り返していた。



 遡る事十数分前


 二人が[リュキの森]を抜けた辺りでマリアが

「全速力で走ってもいいっすよ!足にはそれなりに自信あるっすから!」

 と言った。なので冬歌も

「そういう事なら遠慮なく」

 と返事をしてヌルゲー防止の為に使わないでいた『妖精女王の加護』をONにした。

 冬歌のステータスがグンと跳ね上がる。


「じゃあいきますね?」

「いつでもいいっすよ!」


 ふぅ…、と息を吐いてググッと足裏に力を込め


(位置について……、よーい、ドン!!)


 力強く地面を蹴り猛スピードで駆け出した。


「え?は!?ちょ!早すぎっすよ!?」

 少し遅れてマリアも走り出したが二人の差は開くばかりで一向に縮まる気配を見せない。


「あれ?」と思い振り返ってみるとマリアの姿が何処にも見えない、少し考えてからそこで立ち止まり待っているとゼェハァと息を切らしたマリアが走ってきた。



「大丈夫です?」

 orzの状態になりハァハァと肩で息をしているマリアを心配して近寄ると俯いてた顔がガバッと上がりそれにびっくりしてると肩をガッシリ掴まれて


「ハァ…ハァ……、フゥ……、冬歌ちゃん」

「は、はい?」

「早すぎっす!」

「え、あ、はい!」

「なのでもう少し手加減して欲しいっす!」

「は、はい!?わ、わかりました?!」


 なんか勢いのままもう少しスピードを落としてくれと要求された、うんまぁ置いてきぼりはアレだしね、自分がされたら泣く自信あるし!





 という訳で今はマリアさんのペース(全速力)に合わせて走ってる所。自分としてはもう少しゆっくりでもいいんだけどね?マリアさん的にも言い出しっぺの意地?みたいなのがあるっぽくて一向にスピードを緩める気配無し、どーしたものやら。





 そのまましばらく走ってると街道のド真ん中でバッタリと倒れてる男性がいた。

 その人の服はボロボロで横に折れた剣も落ちていていかにも倒されましたって感じが出てる。

 うんそこまではいいよ?そこまでは、モンスターにやられたーとかそういう感じがしっかり出てるし、

 ただ……


 チラッ……チラッ……


 確かにもう夜だし暗くて見づらいよ?でもそんなあからさまにこっちの様子伺ってちゃ意味無いと思うんですけど?!


 チラチラとコチラを伺う男性にジト目を向けてため息を吐く。


 あぁもぅ明らか面倒事です、回避安定ですねありがとうございました!



「アレ、どうします?」

「そっすねー、迂回でいいんじゃないっすかね」

「ですよねー」

 マリアさんも自分と同じ考えだったみたいで男性を避けて通ることにした。

 スルーされる事になった男性は「え!?まじで!?」って小さく声を漏らしてた。まぁそれもしっかり聞こえちゃってるわけなんですけども。

 やるならやるでもう少し隠す努力を……、と考えた辺りで背後からもぞもぞと男性が動き出す音が聞こえた。マリアさんも聞こえたみたいで二人揃ってはぁ…と息を吐いた。


「かかったなアホがっほぅあ!?」

 まず後ろから飛びかかって来た男性のみぞおちにマリアさんが振り向きざま拳を叩き込む、次にそれを受けて空中でくの字に浮いた男性の脇腹に私が回し蹴りをかます。

「ぐへぁ!?」

 結果として男性は再度地面に倒れふす事になった。

 まぁ自業自得ですよ?


 それと一応の戦闘状態になったので襲いかかって来た男性の頭上に青枠のHPバーが表示される。

 この世界では青枠のHPバーはプレイヤー、緑枠がNPC、赤枠がモンスターと分けられている、つまりこの男性はプレイヤーというわけだ。


 男性のHPは今の攻撃だけでレッドゾーンになっていた、むしろステータスめっちゃ上がってる自分の攻撃受けて体力残ってるのは逆にすごいと思う。

 まぁそれはそれとして


「なにか申し開きはあるっすか、変質者さん?」

「ぐふっ……、二人がかりなんて卑怯だぞ……」

「こんな夜道で女の子二人に後ろから襲いかかって来た変質者にだけは言われたくないっすね」

 やっぱり気づかれてなかった、うんまぁ気づいてたら抱きついて来たりは普通しないよね。

 という訳でマリアさんの肩をポンポンと叩く。


「ん?なんすか冬歌ちゃん」

「自分、女の子違います…よ?」

「はい、知ってるっすよ?」

「え?!」

「ほんとなんで冬歌ちゃん男なんすか?」

「いや、そんな事言われても……?」

「シュンとした冬歌ちゃんも可愛いっすねー」

「あうぅ……、って!あ、逃げてますよ!?」

「ほんとっす!?逃がさないっすよ!『フォトンランス』!」


 コソコソと逃げ出していた男がバレた事に気付き慌てて走り出した、そんな男に向けてマリアさんが『フォトンランス』(光の槍を撃ち出す魔法スキル)を放った。

 それは男に向け真っ直ぐに光の軌跡を描きながら飛んでいき、あと僅かだった男のHPを消し去った。


 ▽『冬歌』がLv15になりました


 あ、経験値入るんだ。


「結局なんだったんすかねー?」

「さぁ…?」



 無事?謎の変質者さんを撃退した私達が街に帰ろうと再び脚を動かそうとした瞬間


「おいテメェら!よくもうちの仲間を殺ってくれたな!覚悟は出来てんだろうな!!」


 新たな変質者達が湧いて出た。

 ほんとなんなのもう……。


 

 To Be Continued

ここまで読んでいただきありがとうございます


相変わらず文面が安定しません(´<_` )

次回バトルパートです!変身だってしちゃいます!


それではまた次回~(・ω・)ノシ

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