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32:カリーナの真実

ここから先プロットを大幅に見直しをする為、暫くの間、更新が止まります。

暫しの間、お待ち下さい。

「ミーシャとお三方はどの様な関係なのですか?」


 言われて見れば侯爵家のミーシャと平民の私とリリィの関係は不思議に見えてもおかしくは無い。

 傍から見れば私とリリィは駆け出しの冒険者に過ぎない。

 それが侯爵家の娘と繋がりがあるのは不思議だと思われても仕方が無い。


「私はお姉ちゃんに昨日、紹介して貰ってお友達になったばかり」


 カティがアグネスの質問にさらっと答える。


「私とジャンヌはカリーナさんと一緒のパーティーでお世話になっているんだよー。学院の推薦をしてくれたのもカリーナさんだよー」


 リリィが私の代わりにざっくり説明するとアグネスの顔から滝の様な汗が流し、顔を青くしていた。

 ヴァネッサ様とディアンナさんも少し表情が引き攣っていた。


「アグネスさん、どうしたのですか?」


「い、いえ、何でもありません!カリーナ様と一緒のパーティーなのですか?」


 アグネスの口調が凄い丁寧になった。


「はい。アングレナにいた時はカリーナさんの家にお世話になっていましたから」


 何故か驚きの表情を浮かべる三人。

 何か変な事を言っただろうか?


「お姉ちゃん、もしかしてあの人の王都での噂を知らない?」


 噂……王様を蹴飛ばした話かな?


「王様を蹴り飛ばした話の事?」


「それもあるんだけど、あの人が王都でどの様に思われているかなんだけど」


 カリーナさんは確か医療技術の発展に貢献して授爵したのは知っている。


「医療分野に貢献したのは知ってますよ」


 私の言葉にカティは首を横に振った。


「それもあるんだけど、あの人はこの国の最高戦力なんだよ」


 カリーナさんがカラル王国の最高戦力?

 確かに強いけど、それ程までに強いと言う印象は受けた事は無い。


「嘗て西の隣国のアマルナと戦争をした時に国境の城塞を跡形も無く消し飛ばしたのがあの人の弓から放たれた一射。それは神の裁きとも呼べる程の絶大な威力だった。それまで膠着状態だったのが、彼女が戦線に加わり一瞬でカラルが勝利を手にした。そして神の裁きの如き一撃を放つ者と言う畏怖が込められ、『神弓』と呼ばれる様になったんだよ」


 カリーナさんの『神弓』の二つ名にその様な意味が込められていたとは全く知らなかった。


「お姉ちゃんもおかしいと思わなかった?王様を蹴飛ばしたら普通は不敬罪になる筈だよ」


 それはあの話を聞いて疑問に思っていた。

 国王に暴力を働くなんて不敬の極みとも言っても良い。


「この国はあの人を手放せなかったんだよ。それに国に執着する様な人でも無いし。実際に自分の国と地位を捨ててここに流れ着いた人だからね。それにあの一撃を自分達に向けられると思ったら何も出来なかったんだよ。まぁ、でもあの人が怒ったのは理解出来なくは無いんだけどね」


 カリーナさんが怒った理由とは何だろう?

 噂ではその部分には全く触れられていないから余計に気になった。

 ただの理不尽でカリーナさんがそんな事をするとは思えないのだ。


「一般市民からは医療技術の貢献と戦争を勝利へと導いた英雄と思われているけど、王都の貴族からすればあの人は恐怖の対象なんだよね」


 カリーナさんはこの話を態と私にしなかったのだと思った。

 きっと私が過去を思い返さない様にと。


「この国に幸いだったのは権力に対する欲が無かった事かな。周囲は同族であるエルフに与すると思っていたけど、何処の種族の派閥に属さなかった。あの人がエルフの派閥に入るのが一番、有り得ないんだけどね。実際に取り込もうとした人達が彼女を怒らせる結末にしかならなかったんだけど。そして、そんな王都の環境に嫌気が差して、早々に当主の座を息子に譲って隠居生活していたって、感じかな」


 カティの説明に衝撃を受ける私達。

 てっきりミーシャやヴァネッサ様達は知っている事だと思っていたけど、私同様に衝撃を受けていた。


「カティはカリーナ様をご存知なのですか?」


「一応。昔、少し喧嘩し……お、お姉ちゃん……?」


 やっぱりカリーナさんと喧嘩してたんだ。

 カティはうっかり口を滑らしてしまった事に気付き、私の方を見る。


「カティ、喧嘩したら怒ると言いましたよね?」


 私の低い声にカティは思わずフォークをトレイの上に落としてしまった。

 カティには昔から喧嘩をしてはいけないと口酸っぱく注意していた。

 昔から感情的になりやすい傾向があり、近所の子とよく喧嘩をしていて、その度に私が叱り、お仕置きをしていたのだ。


「ねぇ、カティは私を大切にしてくれた恩人と喧嘩をした経緯を詳しく聞きたいです」


 私は逃げ出さない様に左手でカティのこめかみを掴む。


「お、お姉ちゃん!い、痛い!、頭が潰れるよ!!だ、だってお姉ちゃんの事を知っていそうなのに知らないって言うから!!」


 カティは必死に弁明する。

 私の所為であれば余りきつく叱るのは可哀相だ。


「分かりました。今度、カリーナさんに会ったらちゃんと謝るんですよ」


 私はカティのこめかみを解放する。


「……あっちが悪いのに……」


「カティ?」


 漏らした言葉はしっかり聞こえている。


「はい!」


 素直でよろしい。


「昔を思い出したよ……本当に潰れるかと思った……」


 カティはこめかみを押さえながら呟いた。


「あ、すみません。つい昔の感じでつい……」


 人前でうっかりやってしまい恥ずかしくなってしまった。

 周りを見ると完全に引いてしまっている。


「そ、それにしてもカティとジャンヌは私達よりかなり年上なのですか?カティのお話はまるでその様子を見てきた様な感じに聞こえましたので」


 やはり年齢の事に気付いた様だ。


「痛た……うーん……そこに関しては複雑な事情があるから黙秘かな。ある意味、年齢が上なのは間違い無いから」


 微妙な感じでカティが濁してくれた。


「通りで同い年の割には大人っぽいと思ったよー」


 リリィには騙したみたいになって本当に申し訳ない。


「ごめんなさい、リリィ……」


「別に気にしてないよー。ジャンヌはジャンヌだからね」


「……ありがとう」


 リリィは笑いながらそう言ってくれるのは嬉しい。


「あ、出来れば年齢が上なのは黙っていてくれると嬉しいかな。それがバレて恐縮されたら嫌だから」


 カティはここだけの話と言わんばかりに釘を刺す。


「私は構いませんわよ。私も普通の学院生活には憧れがありますからお気持ちは分かりますから。科は違いますがもし良かったらお友達になって頂けませんか?」


「私は全然大丈夫だよ。ね、お姉ちゃん」


「私も大丈夫ですよ。科の違う方の友達はいなかったのでこちらこそ是非」


 最初は王女と知り合うのは面倒だ、と思っていたけど、話をしてみるとそんな悪い感じの人には見えないし、他の科がどんな事をしているかも気になるから良いかもしれない。

 でも改めて言わなくても友達の様な気がしないでも無いが、ちゃんと言葉にするのは大事だと思う。


「ヴァネッサと気軽に呼んで下さい。アグネス、早速友達が三人も増えましたよ」


「殿下、程々にお願いしますね……。少し変わった御方ですが、皆さん私からもよろしくお願いします」


 堂々とヴァネッサの事を変と言ってしまって良いのだろうか?

 当の本人は気にしてなさそうなので問題は無いのかな?

 少し身分を笠に着る所はあるけど根は良い子なのかもしれない。


 ふとカティのある事が気に掛かった。


「カティって、強いんですか?」


「ふぇ?」


 カティは突然の私の質問に変な声を出した。

 その口にはたくさんのお肉が詰まっていた。


「いきなりどうしたの?」


「さっきカリーナさんと喧嘩したと言っていたのと国の最高戦力に喧嘩を売れる力量があるのかと気になったので」


 カティは私の質問に物凄く答えたくなさそうな顔をしていた。


「カティ、もう大丈夫です。表情で答えが分かりました」


 間違いなくカティは強い。

 負けず嫌いのカティが昨日言っていた仕返しをすると言う言葉。

 それに近くで一緒にいると感じるカティに潜む魔力。

 それは今まであった人の中で一番大きい。

 巧妙に隠しているつもりなんだと思うけど、寝ている時は割と無防備で近くにいるとどうしても感じてしまう。

 きっとカリーナさんと互角かそれ以上だと思っている。

 そしてこの世界に来たばかりの私なんかより遥かに強い。


「お、お姉ちゃん……?」


 私はカティの頭を撫でる。


「……突然、どうしたの?」


 カティが黙っていたのは恐らく、それを知って自分を遠い存在と思われるのが嫌だったのではないかと思う。

 こう見えて寂しがりやなのだ。

 私からすればカティと分かれてから数年と言う感覚だが、カティは果てし無く長い時を私を探して世界を彷徨っていたのだ。

 その想いは私には思い知る事は難しい。


「これからは一緒だから……ね?」


 カティの目がこれでもかと言わんばかりに開いた。

 向こうも私の言わんとする事が分かったのだろう。


「……うん」


 言葉は少なくても通じる物が私達にはある。

 カティは嬉しそうににゆっくりと心へ飲み込んでいく様に頷いた。

 それは私と一緒にいる実感なのだろう。




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