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悪夢の体育祭  作者: 3442
番外編

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6/8

もしも、三九が産まれていなかったら? 後編

翌日の話。

 翌朝

「ご飯出来たから、降りてきなさい」と夫の書斎で寝ている子供達に声をかけた。

ん?《《子供達》》?

「はーい」と三人の間延びした返事といつもより高い声がした。

「お早う。お母さん」と三人の子供達が私に揃って声をかけた。

ん?《《三人の子供達》》?

 私は、「お早う」と振り返り挨拶をして、三人の姿に驚いた。

 三人のうち二人は、年からして、憲ちゃんと法ちゃんだ。じゃあ、もう一人は?夫?

「恒例の朝の挨拶をお父さんにしましょ」と二十歳くらいの腰まである長髪の女性が言った。

 仏壇に手を合わせ、「お父さん。お早う。私達四人を今日もお守りください」と二十歳くらいの女性が言った。

 続いて、中学生くらいのショートヘアーの女の子と小学校高学年くらいのポニーテールにした女の子が、同じく仏壇に手を合わせ、「お守りください」と言った。

「お母さんも手を合わせて。毎朝、四人でやってるでしょ」と二十歳くらいの女性が言った。

 仏壇にある写真と位牌を見て、驚いた。

 夫の写真が飾ってあり、位牌の死亡した日が、10年前になっていた。

 夫が座っていた席に二十歳くらいの女性、憲ちゃんが座っていた席に中学生くらいの女の子、法ちゃんが座っていた席に小学校高学年くらいの女の子が座った。

「いただきます」と二十歳くらいの女性が手を合わせて言った。

 続けて他の二人も「いただきます」と手を合わせて食べ始めた。

「年からして二人は解るけど、貴女、誰?」と私は、二十歳くらいの女性に指差して言った。

「何言っているの?みの姉だよ」と法ちゃんだろう女の子が言った。

「ねえーっ」と憲ちゃんだろう女の子と法ちゃんだろう女の子が二人顔を見合わせて言った。

「み、みのねえ?」と私は首を傾げた。

「娘の顔を忘れるなんてひどいよ」と二十歳くらいの女性が言った。

「うちは、夫と私と子供二人のはずよ」と私は言った。

「気づかなくて当然だよ。みの姉は、変わりすぎだもん」と法ちゃんだろう女の子が言った。

「え?やっぱり、あなたなの?」と私は言った。

「そうよ。私の旧名、典文よ。今は、美憲。私の隣に座っているのが、旧名、憲一。今は、法華(のりか)。お母さんの隣に座っているのが、旧名、法次。今は、美守(みもり)よ」と元夫だと名乗るが女性が言った。

「朝起きたら、お父さんが、お母さんじゃなくて、お姉ちゃんになっていたからビックリしたよね」と元憲ちゃんだという女の子が言った。

「うん。二女行ったときも思ったけど、あの薬、美人になる効果あるのかな?生徒達は、可愛かったし、教職員は、美人が多かったし、みの姉も美人だし。私も将来、美人になるかな?」と元法ちゃんだという女の子が言った。

「うん。絶対なるよ。近所から私達の事、美人三姉妹と言われてるから」と元憲ちゃんだという女の子が言った。

「こうも言われてるみたいよ。『あの母親からどうしたら、こんな美人姉妹が産まれるんだ?』って」と元法ちゃんだという女の子が言った。

「私達三人は、お母さんの血よりお父さんの血が強いみたいだしね」と元夫だという女性が言った。

「どういう意味?」と私は言った。

「だって、お祖母ちゃんも和子(かずこ)叔母さんも美人だから」と元夫だという女性が言った。

「あなた。昨日、約束したじゃない。性転換薬を浴びないって。まさか、最初から性転換薬を浴びるために性転換薬も取りに行かせたの?」と私は言った。

「約束したけど、性転換薬を取りに行かせたのは、二度と性転換薬を使わせないために処分するためよ。性転換薬を取りに二階にお母さんが上がって行った時に、のりちゃん達に私も性転換薬を浴びると伝えたの。のりちゃん達に『何で?』と聞かれたけど、これは、私なりの罪の償いだと伝えたわ。お母さんがしたことは、許されない行為だから、家族として、罪を償う必要があるからと伝えたの。だから私は、全員が解毒剤をつけた後、生徒、教職員に謝罪して、自ら性転換薬を吹き掛けたの。そして、二人も私に賛同して、自ら被ると言って、性転換薬を吹き掛けたの」と元夫だという女性が言った。

「昨日の夜、書斎で寝たのは、私達の変化をお母さんに気付かれないため」と元夫だという女性が言った。

「話し方を男の人風にするのが大変だったけどね」と元法ちゃんだという女の子が言った。

「完璧に女性になったから、男言葉使わなくてよくなったから、今は、女言葉で話してるけどね」と元憲ちゃんだという女の子が言った。

「そんな。私の夫と娘二人と四人で幸せに暮らすという夢が…」と私は言った。

「私達のお父さんの名前が、平太(へいた)。叔母さんの名前が和子で、お父さんのお父さんは、子供が三人ほしくて、戦争体験から、二度と戦争してはいけないという思いから、平和を守るを一文字ずつ子供達に入れたかったけど、二人しか生まれなかったからその意思を継いで、偶然、和美(かずみ)という名前のお母さんと結婚して、平和憲法も維持し続けなければならないという思いから、私達にそれぞれ憲、法、守を一字ずつ入れようとしたの。でも三人目のみもちゃんが産まれる前に、亡くなっちゃって、お父さんから、私とのりちゃんの名前の由来を聞いていたから、お父さんの意思を継いで、私が、みもちゃんの名前を美守にしたの」と元夫だという女性が言った。

「え?私の名前、和美なの?」と私は言った。

「そうよ。お父さんは、10年前に事故で亡くなって、お母さんが、女手一つで、私達を育ててるから、私は、大学に通いながら、少しでも家計を助けようと、アルバイトをしているの」と元夫だという女性が言った。

「解毒剤は、まだある?」と私は、三人に聞いた。

 三人は、顔を見合わせ、「全部使ってないよ。もし、あったとしても、私達には効かないよ」と元夫だという女性が言った。

「何で?」と私は言った。

「何で?って、昨日の朝の事、忘れたの?解毒剤は、一回しか効かないんでしょ。母子家庭でも仕方ないと考えていたけど、まさか、二回(ふたまわ)り若返って、43歳から19歳の大学生になって、娘になると思ってなかったから、朝起きた時、ビックリしちゃった」と元夫だという女性が言った。

 昨日の朝の出来事を思い出し、私は、「あっ!」と言った。

「じゃあ。性転換薬は?」と私は言った。

「なりふり構わないって感じね。性転換薬を自分にかけようって魂胆だろうけど」と元夫だという女性がクスリと笑って言った。

「母子家庭になるよりましよ」と私は言った。

「性転換薬も無いよ。全部私達がかけたから」と元憲ちゃんだという女の子が言った。

「母子家庭でも幸せにやって来たんだから、いいじゃない」と元夫だという女性が言った。

「今のままで充分幸せだよ」と元法ちゃんだという女の子が言った。

「私も」と元憲ちゃんだという女の子が言った。

「じゃあ。調合メモは?」と私は言った。

「メモリーは、あるけど。データを消して、水に浸けたから使い物にならないと思うよ」と元夫だという女性が言った。

「そんなーっ」と私は言った。


 こうして、私の夢見た家庭は、現実にはならず、母一人、娘三人の女系家族になってしまった。


 因みに、二女は、無事に男子高に戻り、県が抱えていた問題も解決しました。


この日からの家族写真イラスト

挿絵(By みてみん)

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