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ランゲの復活

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 フェヘールはさらにエンペラースコルピオンの毒の使いかたを教えてくれる。


「他に使いたくないなら、自分に使う用の短剣に塗ってもいいけど。最期が魔獣に生きながら食べられることになりそうなら、さっさと終わらせるために」


「ああ……スタンピードだと、そういう準備もいるのか」


 自分に毒を使うという発想はなかった――聞いた後も、やっぱりないと思う。


 そして、フェヘールにもそういう考えを持ってもらいたくないと感じてしまった。


「僕はやめておくよ。諦めの悪さでは定評があるからね。最期まで戦って死ぬことにする。そして……」


「わたくしもどんな絶望的な状況であっても自分から死ぬという選択肢は選ばないから」


 危なくなったら助けにきてね、と続ける。


 任せておけ、と胸を叩くことができたらいいんだけど。


「どっちかというと僕のほうが死にそうなときにフェヘールに助けてもらった記憶ばかりなんだよね」


「この先、未来がどうだかわからないでしょ?」


「保証はできないけど、努力はするよ」


「そうね、それでいい」


 フェヘールは満足そうにニッコリ笑う。


 これからがんばります、で許してくれるのだから優しい――明日から本気だすみたいなものだからね、意味のない空約束になる可能性も結構あるのに。


 2人で侯爵にランゲの一件を報告した。


 領民を扇動して暴動を引き起こそうとしたと聞くと顔をしかめたが、特に口を挟まずに黙って最後まで話を聞いてくれた。


「ランゲに雇われたのか、唆かされたのか、実行役となった男はクリートが取り押さえて現場にいた騎士に引き渡したので、そちらの話も合わせて聞いてください」


「助かった。せっかく有利に防衛戦を進めているのに、内側から崩されたら形勢が逆転しかねないからな。捕らえた男については、すぐに尋問して報告書を提出するように伝えておく。クリートにも礼を言う」


「結局捕まえられなかったので、まったく役に立ってないんですけどね。完全に逃げに徹するとは思わなかった……」


「もっと人の少ないところならわたくしたちの口を封じようとしたかもしれないけど、北門は詰めている騎士や冒険者がいっぱいいるから」


「あそこは最前線だもんねぇ」


 ずっと僕たちの会話を黙って聞いていた水溺姫がふと呟く。


「魔法にしか興味ない変人なのに、なにがしたかったのかしら?」


 それは僕も知りたい。


 城壁内で暴動が起きて得をすることってあるのか?


 魔法にしか興味ない変人といっても、さすがにスタンピードで街を壊滅させたら新しくスゴい魔法が手に入るわけでもないだろうし。


 あるいは暴動が起きたときに試したい魔法でもあったのかな?




 その動機らしきものが見えてきたのは、夜になってからだった。


 魔獣に食われたはずのランゲがリッチになってアンデッドたちと攻めてきたのだ。


 ゾンビの群れに紛れて北門に接近し、昼間の逃亡劇のときと同じく爆裂魔法で北門を破壊した。


 まだ応急措置だけで、ちゃんとした修理中をしている途中だったから、さらに大きく壊れしてしまった。


 しかも、ランゲはリッチという高位の魔獣になったせいか指揮官みたいな立場らしく、数千のアンデッドを一気に破壊された門から突入させ。


 頼りにしていた頑丈な城門が一瞬にして破壊されるという事態に騎士たちも浮き足立ち、あっという間に城門の下にいた者たちは魔獣に食われてしまう。


 非常呼集の鐘にたたき起こされるようにして僕も目覚め、そこで事態を知った。


 北門は通常の出入口というわけではなく、メレデクヘーギ山脈との境界でもあるので、防御施設として設計されているから、すぐに街に入れるわけではなく、左右に城壁がある通路のようなところを数百メートルを進み、さらにもう1つの内門を越えないといけないようになっている。


 そのため、北門が突破された直後、すぐに内門を閉めることになっていて、その手順はちゃんと守られたのだが――リッチと化したランゲの魔法で簡単に破壊されてしまう。


 しかし、そのときには騎士たちも冷静になり、内門のところで防御陣をしていたので、街中に雪崩れ込まれるのは阻止できた。


「北門が突破されたぞ! 戦える者は北門へ急げ!」


「北門だ! 北門に集まれ!」


「まだ内門で戦っている!」


「押し返すぞ! 押し返すぞ!」


「北門を守れ! まずは魔獣を壊滅させる!」


 怒声のような激しいやりとりが耳を打つ。


 メレデクヘーギ侯爵と、その夫人である水溺姫ともに僕も北門のほうに走る。


 すでに内門の周辺には武装した騎士や冒険者が集まって大量のゾンビとやりあっていた。


 緊急事態だからか、フェヘールたち白樺救護団もすぐ近くにテントを立てて野戦病院を設置していた。


 おかげで味方の戦線離脱者はほんの数分で戦線復帰するから、防御側の人数は増える一方。


「燃やせ! 燃やせ!」


「魔法士、こっちも頼む!」


 ところが敵もアンデッドばかりだから簡単に死なない――活動停止とか、そんなふうにいうのが正しいのかな?


 スケルトンはバラバラにしないと動き続けるし、ゾンビは頭を潰すとか首を切り落す必要があるけど、なんといっても一番確実なのは燃やすこと。


 だから、魔法士は大人気だ。


 あっちからも、こっちからも、早く燃やせ燃やせと引っ張りだこだ。


 まあ、こういう人気はあまり嬉しくないかもしれないけど。


 侯爵は大剣でブン! とスケルトンだろうがゾンビだろうが、一撃で真っ二つ。


 水溺姫は火系統の魔法も達者なようで、人間火炎放射器として面で制圧していった。


 僕もハゴロモで突くのではなく、剣そのものを鈍器のようにスケルトンやゾンビに叩きつけて、斬るのではなく破壊するように戦う。


 そうやって夜明けまでしのぐとアンデッドたちはいなくなった。


 急いで門を修理としようと突貫工事をはじめようとすると、無数のオーガが突撃してくる。


 大工や石工と騎士や冒険者が入り乱れて大混乱。


「戦う者は外に出ろ。門に近寄せるな!」


 侯爵がよく通る声で命じると戦闘職たちがオーガたちを押し出すようにして、自分たちも城壁外で飛び出していこうとするが……なにしろオーガの数が多くて思うようにいかなかった。


 オーガ自身もどんどん仲間が押し寄せて、後ろに下がろうとしても、どうにもならなかっただろう。



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