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破壊工作?

086



 上位の魔獣は変に知能があるから腹が立つ――これが知能らしい知能がないのなら、ただの本能や反射での反応ならまだ我慢できるけど。


 キレかけていたとき、上空で爆発が起きた。


 ドン、ドン、ドン――直径10メートルくらいの白く煙る爆発が連続する。


 直撃はもちろん、すぐ近くにいたワイバーンも巻き込んで、次々に墜落していった。


「いまのうちに体制を整えなさい」


 水溺姫だった。


 食われたり、ブレスで倒れた騎士や冒険者の補充を集めてきて、矢を運んできて、バリスタがふたたび対空攻撃をはじめる。


 つられるように弓士や魔法士もそれにくわわった。


 それですぐさま戦局が好転したわけでもないけど、いままでみたいに一方的にやられなくなった――完全にワイバーンの攻撃を防げるようになったわけではなくて、特にブレスは厄介だから戦死者や戦傷者がいなくなったわけではないし、焼けたバリスタも何門も出たけど。


 ただ、ちゃんと攻撃が届いてワイバーンが墜ちるたびに歓声があがり、士気が充分に高いのが救いだ。


 太陽が沈むと飛行型の魔獣は撤退し、スケルトンやゾンビやグールといったアンデッド系の魔獣が主力となり、かなり戦いやすくなった。


 そうやって一晩をやりすごせるかと思ったとき、東門が燃えたという報告が伝えられる。


「どういことだ?」


 侯爵は即座に原因を質す。


 いまの主戦場は山脈に接する北門で、東門や西門はその北門で防げず、取りこぼした魔獣を始末するだけで、いくらなんでも門が破壊されるレベルの激戦にはなってないはず。


 ものすごく頑丈な造りの門なのだし。


 しかも、朝になってアンデッド系の魔獣がいなくなると、入れ替わりにオーガやトロールがどんどん攻めかかってきて、急激に戦局が悪化しているらしい。


 これは北門でも確認されたことで、明るくなるのと同時に山脈から降りてきた魔獣たちはこれまでのように正面から突っ込んできて北門にぶつかるのではなく、それを迂回するように東のほうに向かっているとのこと。


「焚き火などは厳重に管理していたので、おそらくは失火ではなく魔法攻撃ではないかと思われます。例えばゾンビやグールに紛れてリッチのような魔法が使える魔獣がいたのではないか、と。ただし、そのリッチを実際に誰かが確認したわけではありません」


「ふむ……つまりリッチから魔法攻撃された可能性が高いが、いまはそのリッチはいないのだな?」


「はい。攻撃直後から現在まで、その姿は確認できておりません」


「それで援軍が欲しいのだな?」


「なぜか今朝から魔獣が濃く、焼けた門の修復どころか、侵入されないように防ぐのがやっと。ただ、死傷者も出てますので、そう遠くないうちに東門は突破されるでしょう」


「すぐに編成して送る。いましばらく耐えてくれ」


「了解しました。失礼します」


 伝令としてやってきた騎士は一礼して去っていこうとする。


「侯爵、僕もついていっても?」


「できるだけ早く援軍を送るので、それまで頼む」


「やれるだけはやりますよ」


 本当は任せてくださいと大見得を切りたいところだけど、このメレデクヘーギ侯爵領では僕の知る常識は通用しないと何度も思い知らされたので、できるかどうかわからないことを軽々しく口にしない。


 ただ最大限の努力をすることだけは約束した。


 僕も伝令の騎士の背を追う。


 侯爵が送ってきた援軍が到着して一段落するまで東門の防衛にくわわった。


 1時間もしないうちに強力な援軍と、燃えた東門を修復するため腕のいい大工がやってくる。


 やれやれと侯爵のところに戻ると、今度は別の問題が持ち上がっていた。


「食料庫が焼け落ちた」


 侯爵の言葉を聞いて最初に考えたのは東門と同じリッチの仕業ではないかという疑いだった。


 もちろん、それは僕だけでなく侯爵にしても騎士や冒険者にしても疑っていたが、東門は燃えてしまったけど、その防衛ラインまで破られたわけではないので魔獣が城壁の内側に侵入したわけがない。


「どこかに進入路があるとか?」


 あるにはあるが、と侯爵は陥落時に使う抜け穴のようなようなもがあると明かしてくれた。


「しかし、それを魔獣が逆に辿って抜けてくるとは思えない。もし抜けてきたとしても侯爵家の中だから、警備の者に見つかり、すぐに殺されるだろう」


「それは、まあ、そうでしょうねぇ……」


 籠城して、もう陥落が確定というときに侯爵家から遠いところに抜け穴があっても、そこから脱出するというのは現実的ではない。


 当然、屋敷の中心付近のどこかにあるのだろう。


 逆に抜け穴から侵入しようとしたら屋敷の中心付近――いわば警備が一番厳しいところに出てしまう。


 リッチはもともと優秀だけど、おかしな方向にいってしまった魔法士が死を超越して魔獣化したものだから、遠目で見たら人とかわらない。


 だけど、屋敷の主要なところの警備を任されているのは精鋭の騎士たちなのだから、そうそう騙されることはないだろう。


「こちらが把握してない侵入経路があるのかもしれない」


「見回りでもやりますか? 僕も気配で探れるから、よかったら参加しますけど」


「そうだな……放置しておくわけにもいかないが、いまの状況では人を出すのが難しい。ただでさえ手が足らないのに」


「僕だけ見回りますか?」


「本来なら城壁内のことに詳しい者をつけたいところだが……」


「そういう人材こそ、いま必要でしょう?」


 騎士は侯爵家の直属だからいいとしても、冒険者や避難してきた街の人たちなど、雑多な人種が集まっているのだから、ちゃんと状況を把握できている人材はいくらいても充分とはいえないだろう。


 しかも、いまだ防衛ラインが破れてない以上、リッチだろうか、なんだろうが、そうそう場内に潜り込めるはずがない。


 また、もし侵入できたとしても城壁内で戦っている騎士や冒険者にはレベルの高い者も多いから、すぐに気づきそうなものだ。


 むしろ内側から――つまりメレデクヘーギ侯爵家に恨みがあるとか、スタンピードが長引いたほうが利益があるとか、なにかの理由で籠城側の魔法士がやった可能性だってある。


 アルフォルド王国にもっとも裕福といってもいいメレデクヘーギ侯爵家を蹴落としてやろうと工作する貴族家があってもおかしくないんだし。


 かつては大陸統一を目指していたバレンシア帝国のせいで内輪で揉めている余裕はなかったのに、そのバレンシア帝国が内政重視に政策転換すると、今度は内部抗争みたいなことがアルフォルド王国で起きているみたいなのだ。


 さらには東門にしても、食料庫にしたところで、本当に魔法攻撃かと問われれば疑問が残らないわけではない。


 むしろ両方とも火の不始末だとしても不思議ではなかったりする。


 事件ではなく、ただの事故。


 懐中電灯も蛍光灯ない世界だから、夜に視界を得ようとしたら火を焚くしかない。


 さらには、夜間はアンデッド系の魔獣が主力で侵攻してくるが、このアンデッド系の魔獣というものはたいてい火を嫌う。


 普通の矢で射るより、火矢を使うほうがずっと効率よく討伐できる。


 つまり東門にしても、食料庫にしても、失火しかねない原因があるのだ――そして、その場の責任者としては自分の過失ではなく、他に責任があったほうが都合がいい。


 絶対にリッチが潜んでいるなら侯爵も人手を割くことを厭わないだろうが、いまのところそうでない可能性のほうが高そうなのだ。










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